2021年1月20日公開
源田壮亮選手は守備やバントなどの小技ばかりが注目されがちだが、筆者はバッティングにも大きな期待を寄せている。ただ、バッティングに関してはまだ、守備ほどのレベルアップは見せられずにいるのが2020年までのシーズンだった。
源田選手は左打者特有の、一塁方向に体を流しながら反対方向に打つというバッティングを見せることが多い。だがこのバッティングを続けているうちは、打率.300を超えることはできないだろう。また、軸に対してヘッドがやや下がった状態でバットを振りにいくことも少なくないため、タイミングが合ったとしてもゴロアウトになってしまうケースが多かった。
源田選手自身今後はゴロアウトを減らしていきたいという意向を持っているようだ。2021年の自主トレも主砲中村剛也選手と共に取り組んでおり、打球の角度を上げるためのコツを教わっていると言う。
源田選手がバッターとしてももう一段上のレベルに行き、辻発彦監督のように守備だけではなく、首位打者も獲得できるバッターになっていくためには、左打者特有の流し打ちは改善していくべきだと思う。僅かでも一塁に走りながら打つのではなく、栗山巧選手のようにしっかりと打ち終わってから走るというバッティングをしていかなければ、打率.300を超えるのは難しいだろう。
源田選手の2020年の長打率は.330だった。ちなみに栗山巧選手の2020年の長打率は.427だったわけだが、源田選手には栗山選手レベルの長打率をまずは目指してもらいたい。と言ってもホームランを20本打って欲しいという意味ではなく、二塁打と三塁打をもっと増やせるようにしていくべきだと思う。
そのためにも打球の角度をもう少し上げていくというのは理に適った改善方法だと言える。源田選手のコメントの通り、源田選手の凡打はゴロアウトが比較的多い。ゴロで強い打球を打って内野手の間を抜けて行ったとしても、その打球が外野手の間を抜けていく可能性はほとんどない。
二塁打や三塁打を増やすためには、内野手の頭を越えていく打球を増やしていく必要がある。そのためには、低めのボールをヘッドを下げて打つ癖を修正していきたいところだ。栗山選手のように軸の半分(上半身)を反対打席側に傾けることにより、膝の高さの遠いボールでもヘッドを下げずに打てるようになる。
低めのボールでもヘッドを下げずに打てるようになれば、ピッチャーのパワーボールにも力負けしなくなり、打球の速度も速くなっていく。そしてヘッドが下がっていなければボテボテのゴロを打ってしまう確率も下げていくことができ、それに反比例する形で打球の角度を上げやすくなる。
同じ左打者として、栗山巧選手のフォームは源田選手にとって本当に参考になるはずだ。土台の力強さ、回転軸のスタビリティなどなど、どれを取っても一級品だ。そしてそれを可能にしているのが右股関節の使い方の巧みさだ。
栗山選手と源田選手の打つポイントを比較するとわかりやすいのだが、.400を超える長打率を残す栗山選手よりも、.300台前半の長打率である源田選手のポイントの方が投手寄りに置かれていることが多い。これをもっと自分の体の近くで、ステイバックしたまま打っていくことができれば打率.300、そして.400以上の長打率を残せるバッターへと進化していけるはずだ。
送りバントの数が2年連続リーグ1位の源田選手であるわけだが、それ以外の場面ではあまり自己犠牲を考えない方が良いと思う。ランナーがいる時の源田選手のバッティングを見ていると、何としてでも走者を次の塁に進める、ということが最優先になっているように感じることが多い。もちろんこれが間違った考え方というわけではないし、それが必要な場面もある。しかし打者としてもう一段上のレベルに行くためには、この考え方ばかりではいけない。
常時、自分が犠牲になってでも走者を次の塁に進めることを最優先にしてしまうと、悪く言うと当てるだけのバッティングになりやすい。例えばノーアウトで走者が二塁にいた場合、セカンドゴロを打てれば走者は三塁に進めることができる。そして運が良ければ打球がライトに抜けて三塁・一塁という状況を作ることもできる。
だが源田選手が栗山選手のような左打者になるためにはこれではいけない。走者がいる状況で送りバントのサインが出ていないのであれば、自分がヒットを打って走者をホームに返していく、という考え方を持っておく必要がある。もちろんここで併殺打は避けたいわけだが、しかし源田選手の走力を持ってして併殺打になってしまったのなら、それは打球が飛ぶ場所が悪過ぎたと割り切ることも必要だ。
2番の源田選手が、1番打者が倒れたあと、二塁打や三塁打を打ってひとりでチャンスメイクできるようになれば、ライオンズの得点力は大幅に上がっていく。2020年のライオンズの得点力が低下してしまった要因の一つとして、源田選手の二塁打が前年よりも9本減ってしまったことを無視することはできない。
もちろん昨季は通常よりも23試合少ないシーズンだったわけだが、2019年は全ヒットの21%が二塁打以上の長打だったのが、2020年はその数字が16%に低下してしまった。ちなみに2020年の栗山選手のこの数字は36%だった。つまり変則的なシーズンが影響した、という言い訳はできないということだ。
栗山選手の場合は二桁本塁打で長打率を上げていくこともできるが、源田選手の場合は二桁三塁打でこの数字を上げていってもらいたい。打球の角度を上げることのより二塁打・三塁打が増えていけば、源田選手の走力で相手バッテリーにプレッシャーを与えながら、得点圏のチャンスを作っていくことができる。
相手バッテリーからすると、たまにしかホームランを打たない源田選手にホームランを打たれるよりも、走力の高い源田選手に二塁打・三塁打を打たれる方がよほど嫌なはずだ。源田選手の走力があればシングルヒットでも二塁から生還できる可能性が高いし、源田選手が塁上にいる限りは、バッテリーも集中力をバッターだけに向けることができなくなる。
近年のライオンズは打線の破壊力ばかりが注目を集めていたが、筆者個人としては1番金子侑司選手、2番源田壮亮選手のコンビにより、塁上を引っ掻き回しながらバッテリーの集中力をバッターに向けさせない状況を作り、チーム全体の得点力が上がるようになっていくのがベストだと考えている。
二連覇を果たした2018〜2019年も、ライオンズ打線はまだ「打線」にはなっていなかった。まだどちらかと言えば個々が打つことにより相手を粉砕する攻撃スタイルだった。だが今季以降は1・2番コンビが主役となり、クリーンナップ以降の長打力の高さが霞むほどの野球も見せてもらいたい。
ちなみに今季からカープのヘッドコーチに就任された河田雄祐コーチは、広島野球に「Hit!Foot!Get!」時代の東尾野球を注入していこうとしている。これはチームの得点力に安定性をもたらすためには理に適った戦略だと言える。そしてまたライオンズ打線にも、金子・源田両選手による「Hit!Foot!get!」野球が必要なのではないだろうか。
走力のある1・2番コンビで塁上を引っ掻き回しながら3番のクラッチヒッター森友哉捕手につなぎ、そして破壊力抜群の山川穂高選手、中村剛也選手らに繋いでいくことができれば、今までは優勝しながらも繋がりに欠いていた打線が繋がるようになり、少ないチャンスで得点を増やせる、大人の打線へと進化していくことができるはずだ。
そのためにも2番源田キャプテンの打撃の進化が待たれるところであると、筆者は考えている。