2024年5月28日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 |
Dragons | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 3 | 5 | 0 |
継投/ ●今井達也〜 中村祐太〜 田村伊知郎〜 豆田泰志
敗戦投手/今井達也 3勝2敗0S 2.14
失策/今井達也(1)
渡辺久信監督代行の初陣となった今日のドラゴンズ戦、ライオンズはやはり打てずに勝つことができなかった。そして一軍復帰したフランチー・コルデロ選手にも期待が寄せられていたわけだが、今日に関しては3打数0安打で、守備でも一つ拙いプレーを見せてしまった。
だがコルデロ選手はこれで良いと思う。しばらくは主軸というよりは、六番七番あたりで一軍のボールに慣れさせて、たまに日本人離れしたホームランを見せてくれれば守備には目を瞑ることができる。渡辺監督代行自身も、コルデロ選手に関してはエラーする前提でコメントしているため、しばらくはこのような起用が続くと思われる。
そしてヘスス・アギラー選手も間もなく一軍に戻って来られるというような情報もあるため、この両外国人選手がしばらく一軍を離れて頭をスッキリさせた状態で、また二人一緒にプレーできる状況になれば、お互いへの相乗効果も生まれて状態も上向いていくことも期待できる。
さて、話を先発今井達也投手に移すと、やはり今井投手は気合が空回りしてしまっているように見える。今日の試合も失点にこそ繋がらなかったものの、初回の先頭打者に簡単に四球を与えてしまった。
「稼頭央さんの分まで戦っていく」とコメントしていた今井投手ではあるが、この熱意が力みに繋がってしまったのだろう。今日は自らのエラーも出してしまい、5回を投げて被安打3、失点3(自責1)という内容だった。
残念ながらQSはクリアすることができなかったわけだが、これは交流戦であるため仕方がない。もし今井投手が無双状態のピッチングをしている日であれば交代はなかったとは思うが、今日のマウンドに関してはかなりバタバタしているように見えたため、渡辺監督代行も早めに代打策に打って出た。
最近は開幕時の勢いがなくなって来ている今井投手ではあるが、やはりライオンズが浮上するためには今井投手が投げる試合で確実に勝っていかなければならない。だからこそ3回にコルデロ選手のミスが出た際も、エースとして後続をきっちり抑えなければならなかった。だが今井投手に波があることは最初から分かっていたことであるため、このあたりに関しては復調を待つより他はない。
そして今日は10年振りに中村剛也選手が一塁の守備に入ったわけだが、あまり違和感もなくそつなくこなしている印象だった。松井稼頭央監督は中村選手と栗山巧選手に関してはDHにこだわって起用し続けていたが、やはり二人ともまだある程度は守っていくべきだろう。
中村選手はファーストもサードもこなせるし、栗山選手のレフトの守備も、コルデロ選手よりはずっと安定している。松井監督もこの大ベテラン二人を過保護にしすぎなければ、もっと柔軟性のあるオーダーを組めたはずなのだが、松井監督は最後までそれをすることはなかった。
その中村選手は今日は3三振を喫しながらも、しっかり二塁打を1本放っている。ライオンズとしては無死二塁というこのチャンスを何としても生かさなければならなかったわけだが、後続の蛭間拓哉選手、佐藤龍世選手、コルデロ選手はいずれも凡退してしまった。
そして日本人選手に限って見ると、チャンスになるとどこか当てに行くバッティングをしてしまっているようにも見える。パ・リーグの打てている打者と比べるとスウィングも弱いように見え、やはりこれが打てない原因となっているのではないだろうか。
渡辺監督代行が2008年に作り上げたNo Limit打線は、まさにリミッター解除されたフルスィングをする選手が多く在籍していた。そのため投手が投げて来る豪速球に力負けしている打者も少なかったわけだが、今のライオンズの打者たちの多くが力負けして凡退している。
恐らくは渡辺久信監督代行もそれには気付いていると思われ、打撃コーチには練習時からしっかり振らせるようにとの指令を出したのではないだろうか。つまり今ライオンズが打てていないのは作戦云々よりも、各打者の技術不足によるところが大きいように見え、その技術不足を招いたのは紛れもなく松井監督の指導法に原因があった。
ちなみに筆者が言うフルスウィングとは「フルパワースウィング」のことではなく、「フルレンジスウィング」のことだ。例えば80%の力で振っても、振ることができる幅(レンジ)をフルに使っていけば打球はしっかりと飛んでいくようになる。腹八分目で振りながらもこれまでホームランを量産して来た中村剛也選手が好例だ。
だがライオンズのほとんどの打者はバットを最後まで振り抜けていないのだ。もちろんすべてのボールで、というわけではないが、少なくともほとんどのボールで振り抜くことができていない。そのため少しでもスウィートスポットやタイミングを外してしまうと、まったくヒットになりそうもない打球になってしまう。
これが例えばメジャー移籍前の全盛期の中島裕之選手の場合、多少タイミングを外されても、多少先っぽでも、多少詰まっても打球を外野まで飛ばしていくことができた。それはまさにフルレンジスウィングでバットをしっかりと振り抜いていたからだ。
渡辺久信GMとしても、そんなかつての中島選手の振り方を今のライオンズの若手に指導してもらうべく、昨オフは中島選手に対しコーチ兼任選手としてオファーを出していたのだろう。しかし中島選手が現役一本に拘ったため、そのようなオファーを出して来た中日に移籍する運びとなった。
監督が代わって変わることと言えば、メンタルや戦い方程度にとどまる。監督が代わったからといって、選手のレベルが突然変異的に上がるわけではない。しかし監督の選手起用法が変われば、それにフィットしてまるで水を得た魚のように突然活躍し出す選手もいる。
渡辺久信監督代行に代わったことで最も期待されるのは、まさに渡辺監督代行の言葉通り、選手たちがファイティングポーズを見せることだ。ファイティングポーズという言葉は、2008〜2013年にチームを率いていた頃も渡辺監督が多用していた言葉であるわけだが、今の若獅子たちはこのファイティングポーズをずっと見せられずにいる。
例えばかつての中島裕之選手のように、無益な死球をぶつけられたら投手を威嚇するくらいの選手が今のライオンズには必要なのだ。だがそのような選手は今のライオンズにはいない。そしてかつての片岡易之選手のように、死球をぶつけられたらガッツポーズをしながら一塁に走っていくような選手も必要なわけだが、やはりそのような選手も今のライオンズにはいない。
だが渡辺久信監督代行が率先してファイティングポーズを見せていくことで、選手たちも戦い方を理解していくことができる。松井監督の場合は敵も味方も責めないし、怒ることさえない。あるとすれば時々試合後のインタビューでイラッとした表情を見せる程度だった。
今のチームに技術面以外で足りていないものがあるとすれば、それはやはり戦う姿勢だ。チャンスで三振をしたらトボトボとベンチに戻っていくのではなく、悔しさのあまりバットを地面に叩きつけるくらいの闘志を見せなければならない。もちろん道具に当たることは良いことではないが、しかしそれくらいの強い気持ちを持てないようでは、ライオンズは今年も沈んだままでシーズンを終えることになるだろう。
そういう意味でも自ら率先して戦う姿を見せていける闘将渡辺久信監督であれば、今のチームを変えられる可能性がある。そして前政権時に見せた適材適所の選手起用を監督代行としても上手くはめ込んでいければ、Aクラスへの浮上はまったく夢物語ではなくなる。
そしてそのためにも選手起用はある程度固定していきたいわけだが、アギラー選手が戻って来るまでの間は、しばらくは今日のオーダーをある程度固定していくのではないだろうか。特に二番岸潤一郎選手に関しては、かつて二番起用をし続けることで一流選手に育て上げた栗山巧選手のようなイメージでしばらくは固定されることになるのではないだろうか。
ただし、三番外崎修汰選手の起用に関しては筆者はやや疑問を持っている。今季はたまたま成績が落ちていて復調を待てる状況であるのならまだしも、今季を含めると5年連続で低打率が続いているのだ。それならば今季得点圏打率.538(13打数7安打)という驚異的な数字をマークしている、まだ26歳の平沼翔太選手を31歳の外崎選手よりも起用すべきではないだろうか。
平沼選手は今日の試合でも代打で登場してしっかり1本ヒットを放っている。トノゲンの守備は確かに硬いわけだが、しかしセカンドもそつなくこなせる平沼選手を三番セカンドで起用するのも、決してなしではないと思う。ちなみに外崎選手の得点圏打率は.243(37打数9安打)で、打数こそ違えど平沼選手の半分にも満たない数字となっている。攻撃力を重視しなければならない今のライオンズにとっては、三番セカンドは外崎選手よりも平沼選手の方がメリットが大きいとは言えないだろうか。