2024年8月11日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 7 | 8 | 0 |
Fighters | 1 | 0 | 0 | 2 | 3 | 2 | 0 | 0 | × | 8 | 15 | 2 |
継投/ ●武内夏暉〜 水上由伸〜 ジェフリー・ヤン〜 上田大河〜 ボー・タカハシ
敗戦投手/武内夏暉 7勝3敗0S 1.93
本塁打/源田壮亮(2)
盗塁/西川愛也(3)
武内夏暉投手の最大の強みと言えば修正能力の高さだ。試合中であっても制球力が乱れて来ると、それを投げながら修正することができる。これを武内投手は簡単にやっているように見えるが、しかし実際にはやってみると非常に難しい。
崩れている部分を試合中に投げながら修正しようとすると、多くの場面でさらにバランスを崩してしまい状況を悪化させてしまう。しかし武内投手にはそれがないのだ。修正しながら投げていてもバランスを崩すことがない。ベテラン投手でもなかなかできないこのハイレベルな芸当を、武内投手はルーキーでありながらもこれまで見せ続けてくれた。
だが今日のピッチングに関しては武内投手のコメントによれば、上手く修正できなかったらしい。しかし今日の乱調を気にする必要は一切ない。これがもし何度も繰り返されている崩れ方であれば厳しい目で見られるのがプロの一軍になるわけだが、しかし今までずっと良い形で投げて来て、今日たまたま崩れた程度で何かを気にする必要などまったくない。
とにかく武内投手には今日の敗戦を引きずることなくしっかりとリフレッシュし、次の登板ではまた今まで通りの安定感のあるピッチングを見せてもらいたい。ただし武内投手の中にはそろそろ疲れも蓄積されて来ているはずだ。もしこの疲れが影響しての今日のピッチングであった場合は要注意だ。蓄積疲労はそう簡単には抜けないため、トレーナー陣も武内投手のコンディショニングは優先的に見ていかなければならない。
スポーツでは体力を使い切ってしまうことを「オーバーアウト」と言うのだが、オーバーアウトしてしまうと体力の回復速度は著しく低下していく。ベテラン選手の場合はなおさらオーバーアウトは避けなければならないわけだが、武内投手のような若い選手であってもオーバーアウトすることにより疲れがなかなか抜けなくなり、蓄積疲労を抱えたまま投げ続けることによって調子を落としたり、怪我に繋がってしまうことがある。
残念ながらライオンズの若手投手陣は肩肘を故障している選手が非常に多い。これはチームのサポート体制に問題があるわけではなく、入団前からのフォームの問題であるケースがほとんどだ。筆者は2〜3球見れば肩肘を壊すリスクがどれくらいあるフォームなのかがだいたい分かるのだが、トミー・ジョン手術を受けている投手たちで筆者が「怪我をしにくそうな良い投げ方だ」と思った投手は皆無だ。
武内投手のフォームも「まったく肩肘を痛めなさそうなフォーム」というわけではない。将来的には蓄積疲労が抜けなくなった時に肘に負荷が来そうだなというフォームなのだが、もちろん今のところは問題ないはずだ。心配なのは蓄積疲労が抜けなくなった時に1°単位で肘が下がった状態で投げ続けた時だ。
好調時と比べて1°でも肘が下がれば球質は大幅に低下するし、肩肘への負荷もどんどん高まっていく。若い選手の場合は疲れもあっという間に抜けていくのが普通だが、しかしまだプロとしての体力が十分ではないルーキー武内投手の場合、ファンが見るマウンド上での姿以上に蓄積疲労があるはずなのだ。
そのため少し前にも書いたことではあるが、今後武内投手は過酷な夏のベルーナドームではなく、エアコンが効いたドーム球場で投げさせてあげるというのも、新人王を獲得するためには必要な対策になって来ると思う。
さて、昨日のコラムで筆者は武内投手は西口投手タイプだと書いたわけだが、どうやらそれは間違っていなかったようだ。確かに今日の試合は8-7で敗れてしまったわけだが、しかし武内投手が5回6失点と自己ワーストKOとなっても打線はそこで諦めず、8-3という点差から7回8回に2点ずつ取って8-7まで追い上げた。
あと1点で武内投手の黒星が消えたことを考えると(事実上は8回に取った1点目で消えている)、やはりライオンズナインは「武内には黒星ではなく白星を付けてあげたい」と躍起になっているのだろう。チームをそのような状態に持っていけるのがエースという存在だ。そういう意味では来季以降、武内投手はプロ2年目にしてエースの座を掴んでいくのではないだろうか。
ちなみに西口投手の大卒プロ1年目は2勝、2年目は16勝、3年目は15勝で、3年目にして西口投手は最多勝、最高勝率、最多奪三振のタイトルを獲得した。そして3年目までの勝ち星は33勝だった。なお武内投手が憧れる和田毅投手の3年目までの勝ち星は36勝だ。
武内投手はここまでですでに7勝を挙げているため、和田投手の記録まであと29勝、西口投手の記録まではあと26勝ということになる。仮に今季は7勝のまま終わったとしても、2年目3年目で13勝ずつ挙げれば西口投手の記録に並び、14〜15勝ずつ挙げられれば和田投手の数字に並ぶこともできる。
ただ、今季はまだ少なくとも2〜3勝以上は上積みすると思われるため、武内投手がプロ3年目までの数字で西口投手・和田投手の数字に並んでいく可能性は非常に高いと言える。だがそのためにも怪我には気をつけなければならないため、コンディショニングに関しては十分なケアが必要だ。
武内投手はまさにゴールデンルーキーだ。これまでライオンズに入って来たドラフト1位投手たちと比較をしても群を抜いている。松坂クラスとまでは言わないものの、西口クラスであることは間違いない。
そしてコンディショニングという面で言えば、武内投手のフォームを見ていると股関節の使い方がかなり硬い。恐らくはアスリートレベルで見た際、股関節の柔軟性はまだ十分ではないはずだ。股関節が硬い選手というのはかなり高い確率で肩を痛めるため、今後武内投手は初動負荷トレーニングなどで股関節の可動域を広げながら股関節を強化していくという取り組みも必要になって来るだろう。
これはつまり武内投手にはまだまだ伸び代が十分にあるということを意味し、近い将来この武内投手が開幕投手を務める日もすぐにやって来るはずだ。そして安定感抜群の投手がエースとしてローテーションを回ることで、ライオンズも安定して勝てるようになっていくだろう。筆者はそんな将来が待ち遠しい。
そして打線の方でやや気になるのはアンソニー・ガルシア選手だ。デビューまもなくは二塁打を連発していたのだが、ここ最近は当たりがパタリと止まっており、最後に打ったヒットは8月4日の1打席目での二塁打が最後になっている。それ以降は18打数でヒットが出ていない。
ヒットが出ていない間は四球を選んだり敬遠をされたりして多少は出塁しているわけだが、やはりデビュー直後に二塁打を連発したことにより、相手バッテリーの警戒が一気に高まったのだろう。ただし、今日に関してはミスショットが目立っていた。
特に1打席目は初球は外角高めのストレートを見逃して1ストライク。この見逃しは間違いではなかったと思うのだが、2球目のストレートは1球目よりも甘い真ん中寄りの内角高めのストレートだった。ガルシア選手はこれをセンターフライにしてしまったわけだが、やはりパワーがある選手はこれをライトスタンドに叩き込むようじゃないと厳しい。
2打席目に関しては4球目まではずっと変化球を続けられて、5球目の148km/hのストレートが球速表示以上に速く感じられたことでバットが空を切ってしまった。だが3打席目に関してはスライダーがほぼ真ん中に入り、これは伊藤投手としては投げた瞬間ホームランを打たれると思ったほどの失投だったはずだ。しかしガルシア選手はこのスライダーに対し僅かに振り遅れてしまい、ショートフライに倒れてしまう。このあたりのミスショットが多いことから、やはりまだ一軍レベルではないのだろうという評価になる。
4打席目に関しては相手投手が逃げのピッチングで外角低め一辺倒で、敬遠とまでは言わないが、走者三塁二塁と一塁が空いていたため、ほぼ敬遠気味の四球となった。ただこの外角低めのボールを無理に打ちに行くことなくしっかりと見逃したというのは、ヒットは出ていないものの冷静さは失っていないということだろう。
試合後はまたデストラーデ氏とのミーティングがあったと思われるわけだが、デストラーデ氏のアドバイスにより少しずつでも一軍の配球に慣れていき、早く来日1号ホームランが飛び出してくれれば良いなと筆者は期待している。
このまま二軍暮らしが続けば、ヘスス・アギラー選手とフランチー・コルデロ選手が来季も残留する可能性はどんどん0に近づいていくだろう。だが育成出身のガルシア選手の場合は、仮にここから数字が思うように上がらなかったとしても、年俸の額を考えれば残留はほぼ間違いない。だがその年俸をオフに一気に上げてもらうためにも、ガルシア選手には残り試合でせめて5〜6本のホームランを打ってもらいたいなと筆者は大きな期待を寄せている。