2024年8月 3日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Eagles | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 |
Lions | 0 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | × | 7 | 11 | 0 |
継投/ ○武内夏暉〜 佐藤隼輔〜 ボー・タカハシ
勝利投手敗戦投手/武内夏暉 7勝2敗0S 1.55
武内夏暉投手の安定感は他のライオンズの投手たちとはレベルが違う。数字だけを見るとエース級の働きだと言って過言はないだろう。今日の勝利でライオンズはようやく連敗を5で止めたわけだが、連敗前の最後の勝利も、連敗を止めた勝利も武内投手の登板ゲームだった。
武内投手は規定投球回数まであと2イニングスというところまで来ているため、来週の登板で7〜8イニングスを投げられれば規定投球回数に到達する可能性もあり、そうなると防御率部門で一気にリーグトップに躍り出ることになる。ちなみに今日の試合を終えて防御率は1.55となったわけだが、これはパ・リーグトップ相当の数字となっている。
つまり武内投手は新人王はおろか、最優秀防御率を狙えるだけの位置にいるということであり、もし武内投手がこのタイトルを獲得した場合、ライオンズでは2017年の菊池投手以来の快挙ということになる。ちなみに菊池投手の前は、2004年の松坂大輔投手まで遡る必要がある。
昨日の試合では今井達也投手が絶対に油断すべきではないポイントで油断し、新人選手に逆転のツーランホームランを浴びてしまった。だが今日の武内投手は一度も先頭打者を出すことなく、ピンチを作ってしまった時も決して冷静さと丁寧さを失わず、炭谷銀仁朗捕手のミットを目掛けて淡々と投げ続けた。
ルーキーらしからぬ、と言えばそれまでなのだが、しかし本当に新人離れしたピッチングを武内投手は続けている。160km/hのボールなど投げられなくても、フォームの安定感とピッチングのバランスの良さがあれば勝てるということを、武内投手はまさに西武投手陣に示してくれている。このあたりのピッチングの巧みさは、今季押すばかりのピッチングで1勝も挙げられずにいる髙橋光成投手も見習うべきだろう。
よくピンチになるとギアを入れ替える、という表現をするわけだが、しかしギアを入れ替えた時に暴走してしまっては意味がない。例えばピンチになってギアを入れ替えて球速がそれまでよりも5km/hアップしたとしても、そこで力任せのピッチングになってしまったり、投げたボールを上手く制御できなかったりしては意味がないのだ。だが武内投手の場合はピンチになってギアを入れ替えても、制球が甘くなることがほとんどない。
4回5回に走者を二人背負った場面でも、ピンチになった後は失投が一つもなかった。チェンジアップが1球やや抜け気味に高めに行ってしまったが、その場面では打者はチェンジアップを待っていないような見逃し方をしていたため、これは炭谷捕手の配球に助けられたと言うべきだろう。だがそれ以外に関しては本当に巧くボールを制御していた。
今季に関してはこのままカードの2戦目、3戦目で投げていくことが考えられるため、調子が悪い日以外は崩れることはそうそうないだろう。だが来季、カードの1戦目を任せられるようになった場合は好投手との対戦が続くようになるため、ピッチングはさらに難しくなっていくはずだ。つまり武内投手の真価を見極めるためには、カードの1戦目でローテーションを回った時にどうか、という点を観察していく必要がある。
しかし今日のようなピッチングをしていれば、カードの1戦目どころか、表ローテの一番手としてエース対決が続いたとしても武内投手は二桁勝つことができるだろう。今日の武内投手のピッチングは、そのようなことを確信できるほど抜群の安定感を見せていた。
さて、打つ方では先日支配下登録選手になったばかりのアンソニー・ガルシア選手が奮闘している。ここまで5試合で打率は.294となっており、得点圏打率も4打数2安打で.500となっている。ファームでプレーしていた時以上の成績を一軍で残しているのだ。
ホームランこそまだ飛び出ていないものの、ガルシア選手の圧倒的なパワーであれば柵越えしていくのも時間の問題だろう。ホームランなしでも長打率は現在.529となっており、これはリーグトップのホークス近藤選手の.543とほとんど同じ水準だ。もしホームランが出るようになってくれば、ガルシア選手の長打率は.600に迫る数字になっていくだろう。
ちなみにガルシア選手はスイッチヒッターであるわけだが、ここまでは左投手が相手の時もずっと左打席に立っている。右投手相手だと打率は.364なのだが、左投手が相手だと.167まで下がり、現時点では左投手をかなり苦手としているように見える。今後ずっと左打席を続けるのか、一軍に慣れてきたらスイッチヒッターに戻るのかは分からないが、本人のコメントによれば、ガルシア選手自身は左打ちでの長打力に自信を持っているようだ。
そのため少なくとも一軍の投手たちに慣れ、ホームランが出始めるまでは左打席のみに立っていくのかもしれない。このあたりが実際どうなっていくのかは本人の今後のコメントを待つしかないわけだが、しかし今のところは左打者として本当に素晴らしい活躍を見せてくれている。ちなみにベルーナドームでの打率は.429であり、本拠地に強いというのも魅力的だ。
このガルシア選手の活躍に触発され、何とかヘスス・アギラー選手やフランチー・コルデロ選手にも頑張ってもらいたいわけだが、そのためにはまずは彼らは一軍に戻って来なければならない。だがその一軍もベンチ入りできる外国人選手は投手2名、野手2名となるため、アルバート・アブレイユ投手とジェフリー・ヤン投手が一軍に定着している今、残りの野手枠は1つだけということになる。
今後ガルシア選手がクリーンナップを打つことになり、さらに合わせてアギラー選手かコルデロ選手の一人でも一軍で機能することになれば、得点力が飛躍的にアップするであろうことは誰の目にも明らかだ。そしてここまで、クリーンナップタイプではないのにクリーンナップを打っていた打者を本来のポジションに据えてあげれば、ようやく打線も機能するようになるだろう。
今季ここまでのライオンズ打線が機能して来なかった最も大きな要因の一つは、各打者が実力以上のことをしようとしていたためだ。例えば極端な話、ホームランバッターではないのにクリーンナップを任されたことで大振りすることが増え、結果当たれば飛ぶが、あまり当たらないというタイプの打者たちだ。彼らが本来の役割である繋ぎ役としての立場を思い出すことができれば、打線は間違いなく機能し始めるはずだ。
そして繋ぎ役を繋ぎ役に戻してあげるためにも、ここまでのガルシア選手の活躍には大きな期待を抱かずにはいられない。もちろん出場はまだ5試合のみで、今ここで実力を見定めることはできない。ガルシア選手の実力を見極めるためにはまずは5球団との対戦を終え、それが2巡目になり、相手バッテリーがある程度の「ガルシア対策」を見せてきた時にもまだ打てているかどうかで、ガルシア選手の真価は計られることになるだろう。
さて、今日は移籍後初めてと言って良いくらい松原聖弥選手が本格的な活躍を見せてくれた。これまでももちろんたまにヒットを打つことはあったわけだが、しかし今日のようにヒーローインタビューに呼ばれるような活躍はできずにいた。
松原選手にはとにかく、ジャイアンツに移籍した若林楽人選手以上の活躍を見せてもらわなければならない。だからこそ今日の2安打3打点で終わることなく、明日も来週も安定した活躍を見せ続けてもらいたい。そして原辰徳前巨人監督の言葉通り、松原選手が天才から秀才に脱皮できた時、この選手は本当にリードオフマンとして相応しい仕事を見せ始めるのではないだろうか。
野球選手には確かに天才的な本能も必要だ。しかし結果を出すためにそれ以上に重要になってくるのが、しっかりと考えてから打席に立つことができる秀才的な準備だ。来た球に反応してバットを出しているだけでは、プロの一軍ではなかなか通用することはない。孤高の天才と呼ばれたイチロー選手でさえも、打席に入るまでの思考の準備には誰よりも手間暇をかけていた。
だからこそイチロー選手はあれだけヒットを打てていたわけだが、松原選手も本能に頼って打つだけではなく、もっと状況や相手投手の配球の傾向を頭に入れ、それを活かしながら打席に立てれば、今日のような活躍を頻繁に見せていくことができるだろう。そしてそうなった時初めて我々ファンは、「若林選手を出してまで獲った甲斐があった」と感じられるようになる。
今日は七〜九番に座った野村大樹選手、松原選手、炭谷捕手という移籍組が躍動した日となったわけだが、この活躍を今日だけで終わらせるのではなく、来週以降も安定的に、せめて週1〜2回はそれぞれ活躍する日を作っていってもらいたい。そしてシーズンが終わった時、「ライオンズに来てくれて本当にありがとう」と思われるような選手になっていてもらいたい。