10年かけてライオンズを生まれ変わらせた渡辺久信GMの人柄と手腕

2024年1月 1日公開

膿をすべて出し切ったことで生まれ変わった新生埼玉西武ライオンズ

渡辺久信GM

ライオンズはいよいよ血の入れ替えが完了したように思える。12球団で最もコンプライアンスに厳しいとされながらも不祥事が続いていた西武球団ではあったが、山川選手が去ってくれたことで、最も大きな膿を出し切ったと言えるのではないだろうか。

2023年に関しては、全体的な投手力としては2年連続でチーム防御率が2点台だったこともあり、非常に安定していたと思う。だがその一方で突き抜けるような絶対的存在は出てこず、二桁勝利で留まる投手ばかりだった。

今年ライオンズが日本一になるためには、やはり先発陣から突き抜けた存在に出てきてもらわなければならない。それに対する期待が最も大きくなるが開幕投手となるわけだが、松井稼頭央監督はキャンプ中に開幕投手を指名すると明言した。そして2024年の新生ライオンズはその開幕投手と共に回っていくことになる。

さて、入れ替えられた過去の血に関してはここで改めて書く必要はないだろう。不祥事を起こした者は軒並みチームを去り、そしてしっかりと野球選手としてやり直しライオンズに戻ってきた佐藤龍世選手のような存在もある。

膿がすべて出きり、2024年のライオンズはようやく一致団結して戦えるようになるだろう。そして松井稼頭央監督としては、いよいよ今年が一年目だと考えても良いと思う。監督就任以来、今ようやく戦力が整ってしっかりと戦える態勢になってきた。

あとは平石洋介ヘッドコーチという参謀と共にチームを勝利に導くための戦略・戦術を敷いていき、日本一を目指していくだけだ。外野のレギュラーが0人、四番打者もほとんど全休、守護神の不調、絶対的エースの不在に悩まされた昨季とはまったく違った様相を現在のライオンズは見せている。

2021年は1979年以来の最下位に沈んだライオンズだが、それからすでに3年が経過し、2024年はその頃とはまったく違った顔を持つチームとなっている。そしてその新たなチームを作り上げたのが渡辺久信GMだ。

選手、ファン、フロントを三位一体とさせて渡辺久信GM

渡辺久信GMは本当に人望が厚い。義理人情にも厚く、誰からも慕われている。選手たちは全幅の信頼を置いているし、元選手たちも渡辺GMを男にするために編成部門や指導現場で日々奮闘している。さらに言えばマスコミからの評価もすこぶる高い。

これまでマスコミが書いてきた記事の中で、渡辺久信GMを少しでも悪く書いたものを筆者は目にしたことがない。そしてそれは監督時代からそうだったように思える。もちろん采配に関する賛否は常に付き纏うわけだが、しかし渡辺久信という人柄を少しでも悪く書いた記事を筆者は見たことがない。

それはそれは渡辺久信GMの人柄がそうさせているのだろうし、そしてその人柄を買って監督勇退と同時にフロント入りさせた後藤高志オーナーの人を見る目の確かさによるものだ。

チームというのは1年や2年で作り上げられるものではない。多くの選手が毎年FAやトレードで出たり入ったりするメジャーリーグならまだしも、FAもトレードも活発とは言えないNPBの場合、チームの血を入れ替え、新たにチームを作り直すためには10年、15年という月日が必要になる。

かつての星野仙一監督が断行したような血の入れ替えなど、メジャーリーグのスピード感からすると大したことはなかった。大したことがないと書くと大変失礼だが、しかしメジャーリーグではそれだけ短期間で大規模な血の入れ替えが行われるということだ。

渡辺久信GMは2位という成績の責任を取り2013年シーズンを限りに監督を勇退し、それとほぼ同時にシニアディレクターに就任することでフロント入りした。そして2017年にシニアディレクター兼編成部長となり、2019年に満を持してGMに就任した。つまり渡辺久信GMがフロント入りしてちょうど10年が経過したことになる。

10年という期間を英語ではDecade(ディケイド)と言い、年代の単位としてこの言葉がよく使われる。日本でも十年一昔 という表現をするが、それと同じような意味だと言える。

そして渡辺久信GMは10年間かけてチームの血を地道に入れ替え、現場のチーム編成だけではなく、フロントの空気も改善していった。西武球団のフロントと言えば、渡辺久信GMの前任者たちは選手の気持ちを逆撫でするような言葉を繰り返し、それによりライオンズは次々と主力選手をFAで流出したという過去がある。これに関しては多数のマスコミも批判している。

だが渡辺久信GMは10年間かけてフロントと選手の間に燻っていた蟠りを解消していき、今まさに選手、ファン、フロントが三位一体となって戦える態勢が整った。

この先10年、ライオンズがホークスを上回っていくのは火を見るよりも明らか

さて、性暴行事件を起こした主力選手がチームへの不義理を貫きFA移籍していっても、渡辺久信GMはその選手に対し一切批判的な言葉は残さなかった。確かに最後は不義理を貫き通すその選手に対し半ば呆れ顔も見せていたわけだが、それでも表面的にはエールを送り続けた。

普通であれば主力選手としてチームを空中分解させた責任を取るためにも、もうしばらくはライオンズでプレーして恩返ししようとするのが当たり前だとも思えるが、その選手は恩返しや罪滅ぼしどころか、チームのみならずライオンズファンに対しても不義理を貫いたままホークスへと移籍していった。

渡辺久信GMの本心としては腑が煮え繰り返る思いもあったはずだ。その選手は、渡辺久信GMがフロント入りした最初のドラフト会議で2位指名した選手であり、GMとしても思い入れがあったと思う。だがその選手は渡辺久信GMに対し、恩を仇で返す形でチームを去っていった。

それでも渡辺久信GMは、かつての前田球団本部長、鈴木球団本部長、伊原春樹監督のように選手の気持ちを逆撫ですることは一切口にしなかった。そにより渡辺GMは大幅に株を上げ、逆に出ていったその選手の株はどん底まで落ちた。

性暴行の加害者を獲得してまで勝ちたいホークス。そしてチームを一丸とする人情味溢れる施策に徹する渡辺久信GM率いるライオンズ。この先の新たな10年、どちらが常勝球団を作り上げるかは火を見るよりも明らかではないだろうか。

FA移籍が活発ではないNPBの場合、優勝を金で買うことは不可能だ。もちろんメジャーリーグでも異次元補強をしながらも、結局は獲得した選手たちの怪我に泣かされワールドチャンピオンになれなかったチームが多い。反面渡辺久信GMはチームの血をじっくりを時間をかけて入れ替え、内外ともにライオンズを新たなチームへと生まれ変わらせた。

渡辺久信GMが目指す故根本陸夫への道

渡辺久信GMが目指す故根本陸夫は、1978年のクラウンライター時代にライオンズに加入した。そして同年の10月に西武ライオンズという球団が誕生し、その後はGM兼任監督のような立場で辣腕を振るい、僅か5年間でプロ野球のお荷物にもなりかけていたライオンズを日本一の球団へを生まれ変わらせた。

だが根本監督時代というのは今とはまるで時代が違う。コンプライアンスなどという言葉は存在せず、金に物を言わせて選手を集めることができたし、今では禁じられているアマチュア選手に対する裏金や裏工作も普通に行われていた。そのような時代背景もあり、根本監督は僅か5年間でライオンズを黄金時代に導くことができた。

だが現代では裏金はもちろん禁じられている。ライオンズも20年ほど前に裏金問題に揺れてドラフト指名権を失ったことさえあった。そして有望な選手をアマチュア時代から球団下で囲い込むことももはやできず、かつての根本監督のやり方は現代では一切通用しない。

そんな中渡辺久信GMは、現代では考えられないくらいの10年という早さでチームを内外から生まれ変わらせた。そしてその結果をファンが目にできるのが、まさに今年2024年ということになる。

元山飛優選手の入団会見に立ち会う渡辺久信GM

今では勤勉な努力家、そして仕事人となったかつての新人類渡辺久信GM

ちなみに辻発彦監督が就任された際には、まだ渡辺久信GMにはGM権限はなかった。つまり渡辺久信GMが、GMとして最初に招聘した監督が松井稼頭央監督なのだ。

渡辺久信監督勇退後、当時の球団本部長たちはまったく監督候補者たちとのパイプを持っておらず、伊原春樹監督を再登板させる選択肢しかなかった。だがその伊原監督が心ない言葉を繰り返したことで、ライオンズは即、エース涌井秀章投手をFA流出させてしまう。

そして伊原監督はあっという間にチームを空中分解させて、シーズン開幕早々に更迭された。そしてその後を継いだのが田邊徳雄監督だったわけだが、田邊監督は好々爺としては本当に優れた指導者であるわけだが、監督タイプではなかった。その結果2シーズン半で辻発彦監督にバトンタッチしている。

その辻監督はファンからも選手からも愛されたが、黄金時代のような守り勝てるチームを作ることができず、なおかつチームを引き締めることもできなかった。そのためライオンズは非常に緩い雰囲気を持つチームに成り果ててしまった。

渡辺久信GMもその空気は察知していたはずだ。だからこそチームに程よい緊張感を与えられる松井稼頭央監督を、GMとして初めて選ぶ監督として指名した。その結果、チーム内で監督を茶化すような選手は見られなくなった。ファン感謝デーの日のみならまだ知れず、ペナントレース中のベンチで選手が監督を茶化すなどあってはならないことだ。だがそれを率先して行っていた選手も今はもうライオンズにはいない。

本来であればやはり、松井稼頭央監督の初年度に今オフのような補強を仕上げたかったはずだ。だが1年遅れたとしても、昨季は松井稼頭央監督を1軍監督として育成する期間だった考えれば、この事実も受け入れやすくなる。

今、戦うための駒はすべて揃った。そしてまだ穴のあるポジションでは今まででは考えられないほど競争が熾烈になった。開幕投手と守護神も今では全候補者が横一線であり、非常に良いチーム内競争がようやくライオンズに芽生えてきた。そしてそれらを作り出したのが、渡辺久信GMの手腕なのだ。

スポーツチームのGMというのは、音楽や映画のプロデューサーと同じような立場だ。成否の責任をすべて負い、チームが勝てなければそれはすべてGMの責任となる。渡辺久信GMももちろんそれを承知の上でチーム作りを行なっている。

渡辺久信GMはフロント入りした頃、独学でスポーツ経営、スポーツマネジメント、スポーツマーケティングを学んだと筆者は人伝に聞いたことがある。かつてはトレンディーエースとして一世を風靡した新人類も、今では勤勉な努力家、そして仕事人となり、自らの現役終盤で犯した失敗を取り戻すには十分な活躍を見せてくれている。

だからこそ筆者はこの元旦に宣言したい。2024年のライオンズは間違いなく今までになく強いチームになるはずだと。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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