現時点での髙橋光成投手の数字は帆足和幸投手の数字を大きく下回っている

2024年1月 2日公開

涌井秀章投手のメジャー移籍が実現しなかった理由

将来的なポスティング移籍を目指す平良海馬投手

今のところ、ライオンズ最後の絶対的エースという存在になっている涌井秀章投手は、2013年オフにFA権を行使し地元千葉ロッテマリーンズに移籍した。そしてそのマリーンズで4年間投げた後の2017年オフ、今度は海外FA権を行使してメジャー移籍を目指した。

その時点での涌井投手の通算成績は123勝112敗というもので、最多勝はすでに三度獲得していた(2020年に四度目)。通算の勝ち越しは11と目減りさせていたが、それでも最多勝三度の123勝右腕だったこともあり、メジャー球団のどこかは獲得に手を挙げるのではないかと思われていた。

しかし結果としては涌井投手を獲得するメジャー球団は現れず、FA宣言時の公約通りマリーンズに残留した。この時の涌井投手はすでに31歳となっており、年齢的にはすでに全盛期を過ぎてしまっていた。そのためメジャー側も涌井投手の成長に対する高い期待値を持つことができず、それがマリーンズ残留という結果に繋がったと思われる。

涌井投手ほどの素晴らしい実績を持ってしても、メジャー移籍というものがいかに難しいものであるかがよく分かった瞬間だった。そして現在ライオンズでは、髙橋光成投手平良海馬投手がポスティングによって将来的なメジャー移籍を目指していると報じられている。

現時点の二人の通算成績は、髙橋投手が65勝57敗、貯金はわずかに8で防御率は3.41。平良投手は18勝15敗、31S、94H、防御率は1.98となっている。二人とも数字としては非常に良いと言えるかもしれないが、メジャー移籍を目指すということになると、ライオンズで残す数字としてはかなり物足りない。

ただし涌井投手になくて、髙橋・平良投手が持つものがある。それは若さだ。高橋投手は今季28歳、平良投手は25歳とまだ若くて成長の余地を十分に残している。これがアドバンテージになり、金額を抑えられれば獲得を目指すメジャー球団は出てくるだろう。

また、涌井投手がメジャー移籍に失敗した原因としてはもう一点、タイミングがかなり影響してしまった。涌井投手はすでに球界を代表するエースとなっていたわけだが、しかしメジャー移籍を目指した際のシーズン成績が5勝11敗と奮わなかった。もしこの一年前(11勝7敗)にメジャー移籍を目指していたとしたら、獲得球団はきっと現れていただろう。

そしてアジアのプロ野球から選手を獲得する際、近年はメジャー側も海外FA権を行使した選手よりも、ポスティングに出された選手の方が若くて力を持っていることを知っている。

同時に日本の球団側も、海外FA権を行使されて何の見返りもなく主力選手を失うよりは、ポスティングに出して移籍金を得た方がビジネス面でのメリットが大きいことを理解している。

そのためここ10年程度は特に、メジャー側はポスティングを希望している日本人選手を徹底的にマークするようになった。逆に涌井投手の場合は、メジャー各球団はほとんどマークしていなかったと言っても過言ではないだろう。

現在の髙橋光成投手の数字は帆足和幸投手を下回る

さて、渡辺久信GMは常々髙橋光成投手に対し、チームが優勝してみんなが納得する成績を残せたらポスティングを認めると話している。FA権に関しては選手の権利だが、ポスティングに関しては球団の権利となる。そのためFA宣言に関し球団がとやかく言うことはできないし、選手がポスティングに関しとやかく言うこともできない。

そして渡辺GMの言葉が意味するところだが、これはもちろん、みんなに応援されながら巣立って欲しいという親心もあるだろうが、それと同時にGMとしてのビジネスライクな判断も含まれている。

どういうことかと言うと、二桁勝利を挙げた程度のピッチャーの場合、ポスティングにかけても大した移籍金は得られないと言うことだ。西武球団としてはより多くの移籍金を得られるように努めていきたい。だが現時点での髙橋投手程度の成績では、移籍金はせいぜい髙橋投手の年俸を賄える程度にしかならないだろう。72億円をオリックス球団にもたらした山本由伸投手とは比較対象にさえならない。

髙橋投手にしても平良投手にしても、西武球団はこれまでこの二人に対して大きな投資を行なってきた。その投資分をしっかりと回収するためにも、二人がライオンズを去るのであれば、それなりの移籍金をもたらす成績を残さなければならない。そうじゃなければ西武球団には何の得にもならないからだ。

ビジネスはWin-Winの関係を築くことで初めて成り立っていく。プロ野球ももちろんビジネスであり、選手がただ身勝手に「ポスティングに出して欲しい」と言うだけではビジネスは成り立たない。もし二人が本当にポスティング移籍を目指すのであれば、どうすれば西武球団に多額の移籍金をもたらせるのかというところまで考えるべきだろう。

高橋投手は現時点では二桁勝利は4回記録し、キャリアハイは12勝となっている。そしてこの数字を誰と比べればいいかというと、かつてライオンズで活躍した帆足和幸投手の数字がちょうど良い。

帆足投手もライオンズ時代に4回二桁勝利を記録し、キャリアハイは13勝となっている。そしてホークス時代も含めた通算は90勝65敗で貯金は25となっている。高橋投手の通算貯金数8と比べても、帆足投手の貢献度が髙橋投手よりも大きいことがよく分かる。

ただし高橋投手の場合は表ローテの一番手で投げることが多く、相手チームのエースと対戦する機会がそれなりに多かった。ここは帆足投手との違いにはなってくるだろう。だとしてもメジャー移籍をまったく望んでいなかった帆足投手に対し、メジャー移籍希望を公言する髙橋投手は、やはり帆足投手とは比較できないほどの成績を残し、エース対決で勝てる投手になる必要がある。

日本一を目指すためにも主力選手はファンを白けさせてはいけない

ライオンズにはかつて岸孝之投手という素晴らしい選手がいたわけだが、岸投手はライオンズ時代に7回二桁勝利を挙げているにもかかわらず、エースと呼ばれることはなかった。もちろん涌井投手が抜けたのちはエースを務めざるを得ない状況になったが、しかし涌井投手同様のエースとしての働きを見せることはできなかった。

もちろん岸投手にメジャー指向はなかったわけだが、しかしエースと呼ばれなかった岸投手であっても、髙橋投手を大きく凌ぐ実績を残しているのだ。しかも岸投手はライオンズ時代には最高勝率、イーグルスでは最優秀防御率でタイトルを獲得している。このあたりでも現時点では無冠の髙橋投手とは異なるところだ。

平良投手の場合は2022年に最多ホールドを獲得しているが、メジャー側からするとセーブ王と比較するとインパクトに欠ける。メジャー側からすると「ホールド数は素晴らしいが、ライオンズには平良よりも優れた守護神がいた」という考え方になるためだ。

平良投手も今季は先発転向して11勝7敗という素晴らしい成績を残した。だが投げたのは150イニングスのみで、190イニングス以上を投げられる山本由伸投手の背中はかなり遠い。これに関しては高橋投手も同様で、高橋投手も26試合で175イニングスがキャリアハイとなっており、山本投手の26試合で193イニングスからは18イニングス、つまり2試合分少ないのだ。

もちろん山本投手のように3年連続投手四冠という偉業を達成することは、髙橋投手と平良投手にはできないだろう。もちろん不可能という意味ではなく、これまでの実績を踏まえるといきなり山本投手レベルの活躍をすることは難しいという意味だ。だがそうだとしても、最低でもどれか一部門でも山本投手の数字を上回るものを見せなければ、渡辺GMも快くポスティングで送り出すことはしないだろう。

そしてここで付け加えておくと、山本由伸投手がいなくなったからタイトルを取れた、という結果ではダメだ。どれか一つでもタイトルを取ることは当たり前で、その上でバファローズ時代の山本投手の数字を上回るものを見せなければ、ポスティングによって多額の移籍金を西武球団にもたらすことはできない。

髙橋投手と平良投手がもし本当にポスティングでメジャー移籍を目指したいのであれば、チームを日本一に導くことは当たり前として、それに加えて何か一つでも山本由伸投手を上回るものを見せなければならない。メジャー球団やアメリカのファンも、今は山本由伸投手が日本人投手のエースクラスだと認識している。その日本人投手の価値を下げないためにも、髙橋投手と平良投手は本当にエース級の成績を残せるようになるまでは、ポスティング希望を口にしないことが最善ではないだろうか。

こんなにも早々とポスティング移籍を口にされてしまうと、ファンとしても「どうせこの二人はいなくなってしまう」と、やや白けムードが漂わないとも言い切れない。ライオンズが日本一になるためには、選手・ファン・フロントの三位一体でライバル球団に立ち向かっていかなければならない。メジャーという夢に向かって突き進むことは素晴らしいことだ。しかし主力選手たちには、ファンが白けるようなことは早々に口にして欲しくはないというのが、筆者の正直な意見でもある。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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