平良海馬投手の新球ジャイロスライダーをプロコーチ目線で予測する!

2024年1月22日公開

ジャイロスライダーという新球を取り入れた平良海馬投手

平良海馬投手

今季から平良海馬投手はジャイロスライダーという新球を配球に入れていくとコメントしていた。そしてこれにより奪三振率を上げていきたいとも語っていたわけだが、ではジャイロスライダーとはどういう変化球なのだろうか?

筆者はまだ平良投手が投じるジャイロスライダーを見たことはないのだが、平良投手の話によると縦スラのような変化になっていくようだ。つまりフォークボールやチェンジアップのように落ちるボール(厳密には下に曲がるボール)として使っていける球種ということになる。

そもそもジャイロボールというのは回転軸が進行方向と平行になる球種のことで、アメフトのボールと同じような回転で投げられていく。これを日本で最初に提唱したのは手塚一志コーチだったと思うのだが、その後『Major』というコミックで知名度が上がり、さらにはメジャー時代の松坂大輔投手が投げているとされたことでも話題になった。

しかし当時『Major』で描かれていたジャイロボールは科学的には間違いがあり、松坂投手のジャイロボールにしてもこれはジャイロボールではなく、カッターが抜けているだけだった。プロ野球選手でジャイロボールを意図して投げて武器にしていたのは、千葉ロッテマリーンズで活躍された渡辺俊介投手らアンダーハンドスローや、サイドハンドスローの投手たちのみとなる。

コミックやアニメではジャイロボールは豪速球として描かれているが、しかし実際のピッチングでジャイロ回転の豪速球を投げることはできない。特にオーバーハンドスローやスリークォーターから投げている場合は、ジャイロ回転そのものをボールに与えることさえ難しくなる。

ただしサイドハンドスローやアンダーハンドスローであれば、ジャイロ回転そのものをボールに与えることは難しくはない。練習さえすれば、おそらくは小学生でもジャイロボールを投げられるようになるだろう。

しかし上述した通り、ジャイロ回転のスピードボールを投げることはできない。物理的に不可能、とまでは言わないが、それでも現時点でジャイロ回転の豪速球を投げた人類はいない。では平良投手が投げるジャイロスライダーとは一体どういう球種なのだろうか?

実際にジャイロ回転で下に曲がる縦スラは物理的には存在しない

平良投手のそのジャイロスライダーをまだ見ずに予測すると、小さめに縦に割れていくカーブのような軌道になるのではないだろうか。そもそもジャイロ回転では縦に曲がる要素は加わらないため、実際には「ジャイロ気味の回転のスライダー」ということになるはずだ。

平良投手もその辺りは当然理解しているはずなのだが、それでもあえて「ジャイロスライダー」と言ったのは、相手打者に新しい球種を警戒させるためだと思われる。新しい球種を投げ始めると宣言することで、相手打者は当然その球種も打席で意識するようになり、今まで以上に的を絞りにくくなる。平良投手は恐らくはその効果も狙っているのだろう。

スライダーやカッターという球種が抜けると、ボールはジャイロ回転に非常に近くなる。平良投手はこの現象を逆手に取り、スライダーをあえて抜け気味に投げることによって縦割れのカーブに近い軌道にしているのではないだろうか。

これは予測でしかないのだが、ジャイロ回転気味の縦スラということになると、やはりボールを抜き気味でリリースしていくことになるため、軌道としてはパワーカーブに近い動きを見せるのではないかと筆者は専門家として考えている。

フォークボールはマスターできれば大きな武器となるが、肘への負荷が大きいことでも知られている。そのためフォークボールに頼ることなく、縦スラでフォークボールのような効果を得られれば、これは投手としては体への負荷も減るし、空振りも取れるし、まさに一石二鳥となる。

例えば全盛期の西口文也投手が投げていたスライダーはまさにその縦スラで、対戦相手たちは執拗に「ボールが突然消える」とコメントしていた。平良投手のジャイロスライダーに関しても上手く機能すれば、魔球と呼ばれ恐れられていた西口投手の縦スラのような効果を得ていくのではないだろうか。

平良海馬投手は今季、隅田知一郎投手と奪三振レースを繰り広げる!

現在ライオンズには、今季奪三振のタイトルを狙っていると公言している投手が二人いる。それは平良投手と隅田知一郎投手だ。投手としての個性がまったく異なるこの二人が同じタイトルを狙っているのは、今季の見どころの一つとも言えるだろう。

隅田投手の場合は和田毅投手のようにストレートの伸びと、変化球のキレによって三振数を増やそうとしている。一方平良投手の場合はバットをへし折る豪速球と新球で三振数を増やそうとしている。投手としての個性も投球プロセスも異なる二人であるわけだが、そんな二人が同じ奪三振のタイトルで競争していくのは、これは今季本当に見応えのあるポイントになると言って間違いないだろう。

さて、平良投手はかつての故伊良部秀輝投手を彷彿させる剛腕投手であるわけだが、平良投手は伊良部投手以上の理論派だとも言える。伊良部投手もかなりの理論派として知られていたわけだが、伊良部投手の時代にはなかった機器が現代には多数存在しており、平良投手はそれらのデバイスを上手く活用しながら投球フォームを整えている。

先発転向2年目となる今季の平良投手だが、今季は今まで以上にメジャーのスカウトマンたちの注目の的となっていくだろう。そして新球ジャイロスライダーが上手くハマることになれば、投球の幅も広がることになり、投球術そのものにも磨きがかかっていくはずだ。

そしてその域に達した時、平良投手は豪速球を投げる技巧派投手と呼ばれるようになるだろう。例えばダルビッシュ有投手のように。平良投手にはメジャー移籍を目指すからには、ライオンズでダルビッシュ投手や松坂投手のような圧倒的な成績を残してもらいたい。そうすればチームも自ずと優勝に近づいていくだろうし、チームもファンも平良投手を快くメジャーに送り出せるようになるはずだ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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