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2024年6月19日公開

仮に渡辺久信GMが辞任した場合、西武球団の次のGMは一体誰になるのか?!

かつての球団本部長たちは球団役員だったため簡単にはクビを切れなかった

埼玉西武ライオンズ

日本にはGM職を務める野球人は渡辺久信GMを含めても数えるほどしかない。ちなみに日本球界で初めてGM職に就いたのは広岡達朗氏だった。アメリカスポーツ界ではGMというステイタスが当たり前のようにチーム、そしてファンに受け入れられているわけだが、日本球界の場合はまだまだGM職がかつての球団本部長同等の扱いになっているケースが多い。

西武球団も渡辺GMが就任する以前は鈴木葉留彦球団本部長、前田康介球団本部長が編成の長を務めていた。だが鈴木・前田両球団本部長は選手たちの心を逆撫でするようなことばかりを契約更改の席で言い続け、多くの選手が西武球団から心が離れてしまい、当然のように皆FA移籍していってしまった。

メジャーリーグの場合はチームが不振に陥るとまずGMが解雇されるケースも少なくない。GMの仕事は勝てるチーム編成を行うことであり、勝てなければGMはシーズン中であっても解雇されることがある。ここがまずメジャーのGMと日本のGMの最大の違いだと言えるだろう。

GMの契約形式は選手と同様で、1年契約、2年契約という形で球団と契約書を交わす。だが日本の場合、球団本部長が球団の取締役を務めているケースも多く、解雇しようにも解雇できない現実があった。西武球団の場合もそうで、前田・鈴木両球団本部長は西武ライオンズ株式会社の取締役員だったため、役員会の承認を得なければオーナーの一存だけで球団本部長を解雇することはできなかった。

なお渡辺久信GMは株式会社西武ライオンズの役員には名を連ねていないため、契約形式は選手同様になっているのだと思う。もしくはかつてはオーナー付きシニアディレクターという肩書きだったため、もしかしたら株式会社西武ライオンズの正社員という形になっているのかもしれない。このあたりに関しては正式にアナウンスされているわけではないため、はっきり言えることと言えば前田・鈴木両球団本部長とは違い、渡辺GMは西武球団の役員ではないということだけだ。

そのためもし後藤高志オーナーが「渡辺GMではダメだ」と判断した場合、恐らくはオーナーの一存で渡辺GMを解任できる状況なのだと思う。ただし後藤オーナーは人を育てる企業人であるため、メジャー球団のオーナーのように「不振=即解任」ということにはならないだろう。

勝てなければ簡単にGMが解雇されるメジャーと、そうではない日本球界の違い

ちなみにメジャー球団のGMたちのほとんどはスポーツビジネスマネジメントに関する学位を持っている。スポーツビジネスマネジメントはアメリカでは専門職として扱われており、いわゆるMBAと似たスキルになる。例えば日本でも一橋大学などでMBAを取得していると、将来は企業の役員や代表取締役に上り詰められる可能性がグッと高まる。それと同じでスポーツビジネスマネジメントの学位を持っていると、アメリカではプロスポーツチームのGMになれる可能性が高まるのだ。

しかし残念ながら日本はスポーツビジネスマネジメント分野に関してはかなり遅れており、専門書の数も多くはない。筆者も以前数冊読み込んだことがあるのだが、とにかく数字に強くなければスポーツビジネスマネジメントを理解することは難しい。例えばGM職とは直接的には関係がないとは言え、放映権やマーチャンダイジングに関しても理解していなければならない。

だが日本でこの分野を学べる場はほとんどない。もちろん0ではないが、選択肢はかなり少ない。そのため渡辺GMは監督を退任されてSDに就任した際には、独学である程度スポーツビジネスマネジメントを学んだと話されていた。上述の通り専門書が少ないため、恐らくは筆者が読んだ数冊と同じ本を手にされていたと思う。

何が言いたいかというと、アメリカは大学でスポーツビジネスマネジメントを専攻できるのに対し、日本にはそれを学ぶ場がなく、スポーツビジネスマネジメントを理解している人材がほとんどいないということだ。そのためチームが勝てなかったとしても、簡単にGMを解任することができないという事情がある。

アメリカのスポーツ界ではGMを解任してもいくらでも後任候補がおり、GMが解任されたというニュースが出れば、多くの人間がレジュメ(職務経歴書のようなもの)をチームに送り、面接してもらえるよう求める。しかし日本の場合は後任候補がほとんどいないことから、GMにしても球団本部長にしても簡単に解雇することができないのだ。

つまり今季ライオンズは歴史的弱さを見せてしまっているわけだが、オーナーが求める最も可能性が高いことはGMの解任ではなく、GMにこの現状を打破するための改善策を求めるということになるはずだ。これが日本球界のやり方であり、渡辺GMにしても辞任しない限りは簡単に解任されることはないと思う。

もっとセカンドチャンスを与えるべきだとも思える日本球界の現状

仮に渡辺久信GMが職を辞した場合、一体誰が後任を務めるのだろうか。最も可能性が高いのは潮崎哲也氏ではないだろうか。現在は編成部門のヘッド格を務めている潮崎氏は、様々なところに視察に訪れて選手を見ることが趣味レベルで好きな方で、まさに編成部での仕事が天職だと言えるような人物だ。

かつて潮崎哲也氏は一軍監督候補にも挙げられていたわけだが、しかし潮崎氏はユニフォームを着るよりも背広組として編成部でチームに貢献したいという気持ちが強く、それにより監督就任が実現しなかったとさえ言われている。そのため立場的にも能力的にも、仮にGMが変わるとしたら次は潮崎哲也氏が務めることになるのではないだろうか。

さて、アメリカの場合は例えばヘスス・アギラー選手のように足首を怪我して、今現在まだ5〜6割という回復具合ということになると、オーナーから「怪我をする選手を連れてきたお前が悪い」とGMが責任を取らされる。だが日本の場合はそうではなく、「GMはベストだと思われる人選をしたが、しかし本人が日本の野球に対応できずに怪我をした」「外国人選手は開幕してみなければ誰にも実力は測れない」と言われることがほとんどであり、アギラー選手やフランチー・コルデロ選手が機能しなかったとしても、それは選手自身の責任となることが多い。

これが日本球界の流儀であるため、これを変えることは非常に難しいし、変えられたとしても途方もない時間がかかるだろう。そのため現実的にはアギラー選手とコルデロ選手がここまで機能していないのはGMのせいではなく、日本の野球に対応できなかった両選手の責任として、最悪の場合シーズン途中で解雇されてしまうこともありうる。これが日本球界のやり方なのだから、これを変えられない限りはここでとやかく言うことはできない。

ちなみに日本は球界でも一般社会でも、一度失敗した人物を登用することに慎重になることが多い。だがアメリカの場合は違う。例えば補強に失敗して解任されたGMというのは、他球団のオーナーからすると「同じ失敗はしないだろうから、その失敗をしない分他のGM候補よりも良いかもしれない」と評価され、実は解任されたGMというのは即次の所属先が決まることも多いのだ。

だが日本の場合はまずレッテルが貼られてしまう。例えば松井稼頭央前監督にしても、「同じ失敗は繰り返さないだろう」と思われるのではなく、「松井監督はチームを勝たせることができない監督」というふうに考えられてしまうのだ。これもアメリカスポーツ界と日本球界の大きな違いだと言える。

筆者個人としては日本ももっとやり直すチャンスを与えられる社会になってもらいたいと思っている。例えばライオンズで言えばデーブ大久保コーチ、平尾博嗣コーチ、清原和博氏、石毛宏典氏、伊東勤氏ら、何らかの失敗をしてしまった人たちにもう少しチャンスをあげても良いのではないだろうか。そしてもう少し黄金時代を知る人物が監督・コーチの中に入ってきても良いと思う。

例えば松井監督と平石コーチのほぼ同世代の好人物をツートップにするのではなく、松井監督の補佐役として石毛ヘッドコーチというガミガミ言える人物を据えれば、もっとチームのバランスを保てていたのではないだろうか。飴と鞭、良い警官と悪い警官ではないが、やはりこのあたりももっとメリハリを付けた人事が必要だったのかもしれない。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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