2022年9月28日公開
絶対に負けられないイーグルスとの一戦をライオンズは仙台に乗り込んで戦ったわけだが、その先発マウンドを任されたのは復帰登板となった今井達也投手だった。今季は大車輪の活躍が期待されたものの、怪我に泣かされてここまで僅か8試合のみの登板で4勝しか挙げられていない。
「1点も与えるつもりはない」、それが試合前に今井投手が語っていたことだった。そしてその言葉の通り力でねじ伏せるような圧倒的なピッチングで、8回を被安打4の無失点で123球を投げ抜き、5勝目を0封で挙げた(最終回は平良海馬投手)。この相手打線を圧倒するピッチングこそが、筆者は絶対的エースの資質だと感じた。
現時点でのエースはもちろん髙橋光成投手であるわけだが、しかしギアを上げた時の今井達也投手のポテンシャルは髙橋投手を凌いでいるように感じる。
もうここまで来たら細かいことはどうでもいい。とにかく目の前の試合に勝つことに尽きるわけだが、そのために必要な圧倒的なパフォーマンスを今夜今井投手は披露してくれた。これだけ相手を圧倒するピッチングができるのであれば、一年間をフルで投げれば15勝以上を挙げることができるだろう。
筆者はかねてよりライオンズのエースになるは今井投手だと書き続けてきた。打者に対して気迫を全面に出し向かっていく姿はまさに投手性格であり、その姿は松坂大輔投手や涌井秀章投手らがかつて見せた気迫とも重なる絶対的エースになるためには不可欠な要素だ。そのようなポテンシャルを筆者はかねてより今井投手には感じていた。
もちろん今季は怪我により二度も戦列を離れてしまったのは、それはそれで実力不足なわけだが、しかしそれを乗り越えてきた今、来季の今井達也投手はいよいよライオンズの絶対的エースとして君臨し始めるのではないだろうか。
そしてライオンズに絶対的エースの存在が再来すれば、来季以降はBクラスに落ちる心配など無用になり、毎年のように優勝争いに絡めるチームへとなっていくだろう。そして短期決戦でも再び勝てるようになるはずだ。絶対的エースの存在にはそれほどのパワーがある。
一方でイーグルスの先発マウンドに登ったのは岸孝之投手だった。今年は38歳となるシーズンでもうとっくに全盛期を越してしまった投手ではあるが、通算149勝を上げている好投手だ。そしてもちろん彼はかつてのライオンズのエースであり、今井達也投手以前に11番を背負っていた。
今夜は岸孝之投手のピッチングも素晴らしかった。まるでライオンズ時代の岸投手を見ているようだった。だが伏兵とも言える平沼翔太選手に一発を浴びてしまい、この1失点により敗戦投手となってしまう。
筆者は常々、絶対的エースとはエース対決で勝てる投手だと言い続けている。今井達也投手はまさに、必勝を義務付けられホームの先発マウンドに登り好投した岸孝之投手に、絶対的エースの姿で投げ勝った。この1勝はただの1勝ではなく、CS 1st.ステージで戦う相手にとっては脅威と映ったはずだ。
シーズン最後の最後に復帰してきた今井投手がこれだけ圧倒的なピッチングを見せたことにより、CSで戦う相手打線の戦意も戦う前から多少なりとも萎えてしまうはずだ。そしてそのような印象を与えられる投手こそが絶対的エースになることができる。
髙橋光成投手の場合は好投をしたとしても、まだ相手打線に「何とかなりそうな気がする」という印象を与えてしまうことがある。だが今夜の今井達也投手のピッチングは、ちょっとやそっとで何とかなるような内容ではない。スコアリングポジションに走者を進めた時でさえも、今井投手からは失点しそうな気配は微塵も感じられなかった。
そしてそれはイーグルス打線も同じだったはずだ。チャンスを作っても、そこから点を取れる気はしなかったはずだ。これこそが絶対的エースの力だ。戦う前から相手の戦意を喪失させられる投手、今井達也投手はそのレベルに着実に近づいている。
髙橋光成投手は性格が優しく、投手性格とは言えない面もある。一方今井投手はクールな目つきで相手打者を威圧し、内角攻めも厭わないといった性格の持ち主だ。
今夜の1勝により3位ライオンズと4位イーグルスの差は1.5ゲームに広がった。そしてライオンズの残り試合が2試合で、イーグルスが3試合。つまりライオンズの3位確定までのマジックナンバーは1となっている。残り2試合で1回でも勝てれば、イーグルスが残り3試合で全勝したとしてもライオンズとは勝率で並ぶ形となり、ライオンズを上回ることはできない。
そして勝率が五分だった場合は当該球団同士の対戦成績が良い方が上位となる。つまり143試合を終えてライオンズとイーグルスの勝率が同率だった場合、ライオンズの3位が確定することになり、そこまでのマジックナンバーが現在1となっている。
しかし仮にライオンズが残り2試合に敗れた場合、イーグルスが3連勝してしまうと順位はひっくり返ってしまう。そのためライオンズは残すホークス戦、ファイターズ戦のいずれかでは勝たなければならない。
もうこの際2勝しようとはせず、どちらか1試合にすべてを賭けるくらいの戦い方で良いのではないだろうか。例えば仮にホークス戦で敗色濃厚となった場合は、そこからの逆転を信じて無理に好投手を注ぎ込むのではなく、最後のファイターズ戦にエース級やリリーフエースたちを惜しみなく注ぎ込むという戦い方で良いと思う。
もちろんホークス戦で勝てることが最善であるわけだが、ホークスも優勝マジックを3としており、是が非でもこれを減らしに来るはずだ。そうなってくると大きく5つも負け越しているホークス相手よりも、現時点では3つ勝ち越しているファイターズ相手の方が組みやすいはずだ。
だからこそホークス戦に執着するのではなく、ホークスに勝てればラッキーだけど、ファイターズ戦を100%取りに行く、という考え方でいた方が良いと思う。そしてそのような考え方を持つことにより、ホークス戦もよりリラックスして戦えるはずだ。
そして気負わずに戦えれば難敵ホークスに勝つチャンスも広がっていき、土曜日に3位が確定する可能性も高くなる。つまりライオンズファンとしては実際にはあと1つ勝てば良い、ではなくて、2試合とも勝って欲しいというのが正直なところであるわけだ。
2試合とも勝って勢いをつけて、10月8日から始まるCSで大阪、もしくは福岡に乗り込んでもらいたい!