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2024年3月17日公開

【ゲームレビュー】2024年03月17日 福岡ソフトバンクvs埼玉西武/オープン戦

埼玉西武ライオンズvs福岡ソフトバンクホークス/オープン戦

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 1 0 0 0 0 2 0 0 0 3 9 1
Hawks 2 0 1 0 4 0 0 2 × 9 12 0

ルーキー時代からの癖が抜け切れていない松本航投手

ペイペイドームで行われたこの日のホークス戦、先発マウンドに登ったのは松本航投手だったわけだが、結果的には5イニングスを被安打10、四球2、失点7という不甲斐ない内容となってしまった。開幕3戦目を想定してのこの日のマウンドだったと思うのだが、大きな不安を残すピッチングとなってしまった。

この日の松本投手のボールを見ていると、ストレートの伸びや変化球キレがベストではなく、制球もボール1個分ずつ甘いものが多かった。打者に軽打で合わされた打球が外野手の前まで飛んでしまう不運、そして盗塁をケアした遊撃手の反対側に打球が転がる不運もあったわけだが、しかしストレートに伸びのある日の松本投手のボールであれば、そもそも打者が合わせることさえ難しくなる。

この日の松本投手のストレートの回転数(RPM)は2200回転台前半が多かったと思うのだが、この回転数はもう少し増やしていきたいところだ。松本投手の場合ストレートがだいたい150km/h前後となるわけだが、投手が投げるボールというのは、球速が速くなればなるほど空気抵抗が大きくなる。
豆田泰志投手の150km/hのストレートのRPMは2300台後半が多い。

物理的には、投手が投げるボールは110km/h程度までと、170km/h以上になると空気抵抗はボールの質量に対しそれほど大きくはならなくなる。だが150km/h前後というのは空気抵抗が非常に大きいため、回転数を増やしていかなければ初速と終速の差が大きくなり、打者からするとストレートが失速してくるように見え、非常に打ちやすくなってしまうのだ。松本投手が打ち込まれる時は、だいたいこのような物理的理由が原因となっていることが多い。

これが例えば140km/h弱のストレートで回転数が2200RPM台だった場合、空気抵抗が150km/hのボールよりも小さくなる分ストレートが伸びやすくなり、同じ回転数だった場合、実は140km/hのストレートの方が打ちにくくなるのだ。そしてこのRPMは、力めば力むほど減っていく。つまり松本投手の球質が上がり切らない日というのは、僅かに上半身が力んでしまっている時ということになるのだ。

松本投手のこの癖はルーキー時代から変わらないため、2年後に30代に突入して球威が低下し始めた時のため、今からでも球速よりも球質にこだわったピッチングにシフトしていくべきだと思う。それがシーズンへの好結果にも繋がると思うし、投手としての選手寿命を伸ばす結果にもなるはずだ。

タイミングの取り方に改善が必要そうに見える若林楽人選手

若林選手のファインプレー

さて、この日一番打者としてスタメンに名を連ねたのは若林楽人選手だった。しかし結果は4打数4三振という惨憺たるもので、残念ながらリードオフマンとしての務めを果たすことはまったくできなかった。

若林選手のバッティングフォームの特徴として、「静」から「動」でバットを振っている動きを挙げることができる。実はこれは打率を上げるためには大きなマイナスになり得る動きなのだ。バッティングでタイミングを上手く取るコツは「動」から「動」で振ることと、テイクバックの始動を深くしていわゆる「間」を持つことだ。

若林選手の場合、始動前はほとんど静止した状態で投手の動きを待っている。だがこの時左の踵でリズムを刻みながら待つようにすると、上手く投手のタイミングに入っていきやすくなるのだ。この動作のことを野球ではタッピング、もしくはステップオンと呼ぶのだが、首位打者を獲っている選手や打率が高い選手を観察すると、ほとんどの選手がこの動作を入れて打っている。それくらいタイミングが取りやすくなる動作となるわけだが、若林選手もこの動作をバッティングフォームにインストールすれば、もう少し上手くタイミングを取れるようになるのではないだろうか。

若林選手の守備範囲の広さに関しては圧倒的であり、投手陣も若林選手が外野にいることで安心感を得ることができる。そしてその安心感は余裕を持ったピッチングをしていくためには非常に効果的であるため、首脳陣としてももう少しバッティングの安定感が出てくれば、守備力と盗塁する能力を合わせた総合力はかなり高くなるため、若林選手をスタメン起用したい気持ちも強いはずだ。

しかしこの日の試合のように4打席連続三振という姿を見せられてしまうと、スタメンではもちろん、1打席勝負となる代打でも起用しにくくなるため、首脳陣としてもそのような選手に一軍枠を空けることは難しい。だが若林選手は4打席立ってこその選手であるため、この日の4打席連続三振を良いきっかけにし、ここからの挽回に期待していきたい。

2失点したがそれほど心配はいらなさそうな豆田泰志投手

そしてこの日8回裏のマウンドに登ったのは守護神候補の一人としても名前が挙がる豆田泰志投手だった。結果的には簡単に二死を奪った後に連続四球と自らのワイルドピッチでピンチを広げ、その直後にライト前ヒットを打たれて2失点してしまった。

結果だけを見ると開幕にやや不安を残すピッチング内容とはなったが、しかしピッチングがバラけて2失点してしまったというよりは、二死を取ったあとに余裕が生まれて、何かを試しているようなピッチングをしていたようにも見えた。もしかしたらカーブの使い方なのだろうか、公式戦前のまだ失敗が許されるオープン戦で、しかも二死と取って余裕を持てたタイミングで何かを試していたのだろう。二死後はいつもの豆田投手とはやや違うリズムで投げているように見えた。

ただし2点を奪われた後でもピッチングにはそれほど動揺するところは見られなかったため、そのような状況になったらそれを試したい、というようなことはもしかしたらあらかじめ捕手やコーチと確認していたのかもしれない。ただもちろんこれは憶測でしかないわけだが、少なくとも筆者にはそのような雰囲気を出しているように見えていた。

もし筆者の憶測が僅かでも的を射ていたならば、豆田投手の今日の2失点はほとんど気にする必要はないだろう。ストレートの球質はいつも通りだったし、マウンドでの落ち着き具合も変わらなかった。だがもし筆者の見立てが間違っており、本来できるはずだった何かが上手くいかなかったという結果であれば、その場合は開幕までに修正が求められることになるだろう。

それでもここまでの数試合で不安定なピッチングを繰り返しているわけではないため、豆田投手に関してはそれほどの心配は要らないと思う。そして合わせて二番手としてマウンドに登った佐藤隼輔投手に関しても、昨季の指先のコンディション不良も心配されていたわけだが、どうやら今は問題なく投げられているようで、もういつ開幕しても大丈夫そうだ。

以上のようなことから、この試合でやや心配だなと思ったのは松本投手の安定感と、若林選手のボールの見極めの悪さだった。松本投手に関してはオープン戦でもう1試合追試を受けることになるだろうし、若林選手に関してもこのままヒットを打てない試合を続けてしまうと外野の一角どころか、開幕一軍さえも危ぶまれることになるだろう。そのためこのふたりに関しては、次戦の出場ではより注目して観察していきたいと筆者は考えている。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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