2024年3月16日公開
埼玉西武ライオンズvs福岡ソフトバンクホークス/オープン戦
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 6 | 0 |
Hawks | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | × | 2 | 3 | 1 |
予想通りと言うべきか、この日ペイペイドームで行われたホークスとのオープン戦、ホークスの四番山川選手が登場した瞬間に場内にはライオンズファンからの激しいブーイングが響き渡った。だが筆者の印象ではブーイングをしているのはライオンズファンだけではなく、ホークスファンも加わっていたように見えた。つまり山川選手はライオンズファンからもホークスファンからももはや歓迎されていないということになる。
そしてライオンズの投手陣が山川選手からストライクを奪うたびに大歓声があがり、その結果山川選手は3打数0安打2三振という結果に終わった。ライオンズの投手としてはとにかく因縁の山川選手に打たれることだけは避けたい。そういう意味では今日先発マウンドに登った隅田知一郎投手は本当に素晴らしいピッチングを披露したと思う。
山川選手を3打数2三振に抑えただけではなく、6イニングスを投げて被安打3、奪三振10、失点はソロホームランによる1点だけに抑えた。今日先発したと言うことは、隅田投手は開幕第2戦目を任せられるということなのだろう。開幕投手に関してはOB戦の舞台で、ようやく今井達也投手だと発表された。そして隅田投手はその後、つまり表ローテの二番手を任されるということになるのだと思う。
そして開幕2戦目に投げる投手のピッチングとしては、今日の隅田投手の内容は1失点したとはいえ満点だったと言えるのではないだろうか。試合は残念ながら2-1で敗れてしまったが、隅田投手は4回に少しピンチを背負ったくらいで、あとはまったく危なげないピッチングを披露してくれた。これは間違いなく前回、そして今回の侍ジャパンのユニフォームが自信に結びついているのだと思う。
開幕までまだ2週間ある状態の中でこれだけのピッチングを見せられるということは、隅田投手が今季タイトル争いに加わってくる可能性は非常に高いということだ。隅田投手自身は奪三振のタイトルを目指しているわけだが、この試合では6イニングスで10奪三振、つまり奪三振率は脅威の15.00という数字になった。
もちろんオープン戦は打者の目慣れ不足という意味で投手の方が有利になる。そのためシーズンが開幕してもこの水準の奪三振率を維持することはかなり難しくなるわけだが、しかし10.00弱の奪三振率を維持し、なおかつ170回以上を投げることができれば、奪三振のタイトルに間違いなく手が届くようになるだろう。
奪三振のタイトルは平良海馬投手も狙っているわけだが、今季はこの二人でハイレベルな競争を繰り広げてもらいたい。それこそ昨季までの山本由伸投手の水準を上回る活躍を期待したい。
さて、打線はと言うとこの試合はやや繋がりに欠いた。印象的には三番フランチー・コルデロ選手・四番ヘスス・アギラー選手という並びの時よりも、四番アギラー選手・五番コルデロ選手の並びの時の方が打線の繋がりが良いように思える。
ただし今はまだ安心して三番を任せられる選手が出て来ていないため、やはり三番コルデロ選手というパターンも慣らしておく必要があるのだろう。だが今季も併用という形になっていくのであれば、昨日の試合のように中村剛也選手と栗山巧選手を三番DHで固定してしまっても良いのではないだろうか。
本来であれば三番打者には二桁を超える盗塁も期待したいところではあるが、流石にこのベテランコンビに盗塁を期待することは難しい。だが走力という意味ではふたりはまだまだ衰えておらず、二塁打三塁打を期待することも可能だ。三番に盗塁を期待しないという前提をつければ、このベテランコンビに三番を任せても十分に機能すると思う。
ただし、やはり理想的にはクリーンナップは将来性のある選手に任せたいところだ。そう考えると栗山選手の愛弟子である蛭間拓哉選手に期待を寄せたいところではあるが、打撃でアピールし切れなかったこともあり、3月3日を最後に一軍(A班)の試合には出場していない。
それならばオープン戦で絶好調を維持している元山飛優選手を暫定的に三番打者としてテストしてみても良いのではないだろうか。元山選手であれば盗塁をする走力もあるし(ただし俊足と呼べるほどではない)、ある程度のパンチ力もある。ホームランを量産するタイプではないが、しかしかつての高木大成選手のような三番打者としての仕事を期待することができるのではないだろうか。
そして四番アギラー選手の前を打つことになれば、相手バッテリーは三番打者に対してはあまりボール球を使えなくなる。その理由はホームランのあるアギラー選手とコルデロ選手の前に走者を出したくないからだ。となると仮に元山選手が三番に入ることになれば、相手投手は元山選手に対しストライクゾーンで勝負することが多くなる。すると元山選手も的を絞りやすくなり、厳しいボールに手を出さざるを得ない状況も減っていき、その結果ヒットが増えやすくなる。
渡部健人選手、佐藤龍世選手の打率がまだ芳しくない今、新加入した元山選手を三番として起用する思い切りも、時には必要なのではないだろうか。ただしブランドン選手は今とても元気があるため、開幕を前にしてブランドン選手が支配下選手に戻ることができれば、俊足で長打力もあるブランドン選手を三番に据えてもオーダーとしては非常に面白くなると思う。
栗山・中村両ベテラン選手は相変わらず元気であるわけだが、4年契約を終えて今背水に立たされている金子侑司選手も今季は元気そうだ。ここまでオープン戦の打率は.429というハイアヴェレージとなっており、少ないチャンスながらもバッティングでは好調を維持している。
金子選手の一番の売りは盗塁王を獲得している走力だったわけだが、しかしその走力に関してはかなり衰えが見えており、オープン戦では2回走って2回とも刺されている。盗塁を決められなくなったこの姿を見ると、どうやらいくら打撃が良くても金子選手をリードオフマンに据えることは難しそうだ。
それでも西川愛也選手や長谷川信哉選手の打率があまり上がって来ていない今、このまま好調を維持できれば金子選手が開幕スタメンに名を連ねる可能性は高いだろう。
西川選手に関してはリードオフマンを奪取しにいくと宣言していたわけだが、オープン戦はここまで19打数3安打で打率は.158、出塁率も.200という低空飛行を続けている。長谷川選手に関しても同水準で、オープン戦は打率.000で、プレシーズンマッチを含めてもあまり良い結果を残せてはいない。今季はこのふたりが外野陣を引っ張ってくれると首脳陣も期待していただけに、ここまではやや残念な状況になっている。
だが反面金子侑司選手は元気だし、いざとなれば山村崇嘉選手を外野として起用するオプションも今季は増えた。さらには若林楽人選手も打率こそまだ上がって来てはいないが、膝の状態は良さそうであるため、守備範囲の圧倒的な広さを考えると、多少打率が低かったとしても外野手として起用する価値は高いと思う。
しかも盟友であるブランドン選手が死に物狂いで頑張っている今、その姿を見て若林選手が触発されないわけがない。若林選手とブランドン選手は近年は一軍レベルでの実戦経験はかなり不足しているため、ここからあと二週間弱で一軍レベルのボールに目慣れしていけば、開幕スタメンに若林選手とブランドン選手両方の名前が入っていてもまったく不思議ではない。ちなみにルーキーイヤーのふたりは、共に開幕戦から途中出場を果たしている。
この若林選手とブランドン選手のコンビが一軍にしっかりと戻ってくることができれば、内野も外野も一気に層が厚くなっていくし、外野のレギュラー不在問題も解決されることになる。そういう意味でも若林選手とブランドン選手の打撃には、筆者は今後も注目していきたいと考えている。