2024年5月19日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 0 |
Hawks | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2× | 2 | 6 | 0 |
継投/ 武内夏暉〜 ●アルバート・アブレイユ
敗戦投手/アルバート・アブレイユ 1勝3敗8S 2.20
盗塁/蛭間拓哉(2)
今日の試合は武内夏暉投手にとっても、アルバート・アブレイユ投手にとっても、チームにとってもまさに無念だった。特に武内投手に関しては9回のマウンドにも登り、完封勝利も目前に迫っていたのにその勝ち星がするりと逃げて行ってしまった。
どうやら9回のマウンドに登る前の投球練習中に左太腿をつったような感触があったらしく、それが投球を始めた途端完全につってしまったという状況だったらしい。この9回のマウンドは武内投手が志願して続投していただけに、本当に無念としか言いようのない降板だったと思う。
武内投手はここまでホークスに対しかなりの強さを見せている。今季武内投手がホークス戦に投げたのは今日が2試合目であるわけだが、前回5月3日には8回無失点で勝ち投手になり、今日は負け投手になりながらも8回まではやはり無失点を続け、ホークス戦で16イニングス連続無失点という素晴らしいピッチングを見せてくれている。なお対ホークスの武内投手の防御率は0.56となっている。
かつてライオンズでプレーをしていた菊池雄星投手はホークスを含め、上位球団相手にまったく勝ち星を挙げることができなかった。最多勝を獲った際も下位球団を相手に勝ち星を積み重ねたという勝ち方で、上位チームにもしっかりと勝って最多勝を獲得していた涌井秀章投手らと比べると、菊池投手のパフォーマンスはかなり物足りないものだった。
だが武内投手は今季圧倒的な強さを見せているホークスを相手に16イニングス連続無失点という素晴らしいピッチングを見せてくれている。そして今日も上述した通り、あと一歩で完封勝利というところまで行っていた。それだけにちょうど100球での緊急降板を強いられても勝たせてあげたかったわけだが、この状況で緊急登板したアブレイユ投手が打者4人に対し2安打1死球と乱調で、まさかの逆転サヨナラ負けを喫してしまう。
ただ、緊急登板と言ってもアブレイユ投手は登板する準備はしていたはずだ。8回を終えた時点で1-0というセーブが付く状況だったし、武内投手が続投を志願したとしても豊田コーチからは準備をしておくようにと通達も受けていたはずだ。そのため緊急登板とは言え、準備不足だったということは考えられない。
これは憶測でしかないのだが、アブレイユ投手も首位を相手にし、さらには武内投手の勝ち星を守ろうとして力んでしまったのかもしれない。平常心のアブレイユ投手であれば、いくら首位ホークスを相手にしたとしてもこうも簡単には打たれないはずだ。そしてチームとしてはまたもや柳田選手と近藤選手に痛い目に遭わされる形となってしまった。
こうして立て続けにやられていることを考えると、西武球団は近藤選手に対してソフトバンク球団と同レベルの条件を提示し、マネーゲームになったとしてもFAで獲得しておくべきだったのかもしれない。
さて、武内投手に関しては左太腿をつっただけだと思われるため、次回の登板には支障はないはずだ。だが松井稼頭央監督は選手に対し過保護すぎるところがある。そう考えるともしかしたら次回の登板を一度飛ばすことも考えられるわけだが、しかし筆者はそうすべきではないと思う。
その理由は単純で、武内投手は今井達也投手に次ぐ素晴らしいピッチングを続けているからだ。それだけのパフォーマンスを発揮している投手を、脚がつったくらいで次回の登板を飛ばすべきではない。
ライオンズではかつて、涌井秀章投手が試合中によく脚をつることがあった。それに対し当時の渡辺久信監督もコンディショニングに関し苦言を呈していたわけだが、しかしベルーナドームは高温超多湿という特徴を持っている。他のドーム球場ではエアコンが効いていて非常に快適に投げられるわけだが、ベルーナドームは外気の気温が上がるとまるでサウナのようになってしまう。
そして野球場で最も高温になるのがマウンドであり、気流はマウンドに向かって降りてきて、マウンドでその気流がぶつかり合ってまた上昇していく。これはすべての屋外球場で共通することで、特に真夏の甲子園球場でのデーゲームではそれが顕著となる。
ベルーナドームはドーム球場でありながらも外周が密閉されておらず、屋外球場に傘をさしているだけの状態であるため、雨天中止がないだけで実態は屋外球場と変わりない。いや、それどころか掘り下げ式球場であるベルーナドームは外の湿度がすべてグラウンドに溜まって行ってしまうため、通常の屋外球場よりもプレー環境は劣悪だと言える。そして実は、これを理由にFAでライオンズ入りするのを嫌がる選手も少なくないのだ。筆者が以前仕事で話したことのあるFA移籍経験者もそのような話をしていた。
このような状態であるため、しっかりと水分補給をしていたとしても、特に梅雨以降はベルーナドームで良いコンディションを維持するのが非常に難しくなる。だからこそ武内投手も登板間隔を空けさせるのではなく、来週も投げさせることによってベルーナドームに対応できるコンディショニング能力を養わせるべきなのだ。
これが例えば近い将来でのメジャー移籍を宣言している髙橋光成投手や平良海馬投手の場合であれば、チームとしても将来的にはライオンズの力にはなってくれない二人を優先的に投げさせる必要はないと思う。つまり多少コンディションが悪ければ、それが怪我ではなかったとしてもサクッと登録を抹消して良い。
だが武内投手のように今後将来的にライオンズのエース格になっていくであろう投手の場合は、怪我ではないのならこの程度の状況で登録抹消すべきではないのだ。
ちなみに先日筆者は、友人であるアメリカ球界のスカウトマンとSkypeで話をした。彼は日本球界の選手にも非常に詳しいのだが、その彼に聞いたところ、髙橋光成投手と平良海馬投手の評価はアメリカ球界のスカウトマンの間ではかなり低いようだ。一方今日本球界でメジャーから最も興味を持たれているのが今井達也投手であるらしく、なんとも皮肉な状況となっているようだ。