2024年5月18日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 | 0 |
Hawks | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | × | 3 | 5 | 0 |
継投/ 渡邉勇太朗〜 H増田達至〜 ●松本航
敗戦投手/松本航 1勝2敗0S 2.30
本塁打/若林楽人(2)
盗塁/児玉亮涼(1)
やはり松本航投手を責めるわけにはいかないだろう。確かに1点リードしていた8回裏の場面で登板し、逆転ツーランホームランを打たれてしまったわけだが、しかし慣れないリリーフで頑張っているのだ。明らかにまだリリーフ登板に慣れていない現状では、今日のような展開に対し何か言うべきではないと思う。
ただし一つ言うべきことがあるとすれば、解説者の方々は皆口々に「松本投手はリリーフに回ったことで球威を上げていける」と話されていた。だがこの言葉に筆者は嫌な予感を覚えた。なぜなら今季、松本投手はようやく打たせて取るピッチングによってスタイルを確立し始めていたからだ。
今季先発として好投した際の松本投手のピッチングは、マダックス(100球以下で完封すること)にさえ近づいていた。豊田清投手コーチもそれがあったからこそリリーフに回したのだと思うのだが、今日のホークス打線のクリーンナップに対するピッチングは明らかに力が入っていた。つまり先発していた際に上手く行っていたスタイルを、リリーフになって変えてしまったということだ。そのためしっかり投げられれば打ち取れるコースにボールが行かず、逆に打者の得意ゾーンに入って行ってしまったことで痛恨の一打を浴びてしまった。
まず柳田選手に打たれたのは初球の、真ん中の高さよりはやや低い真ん中のコースだった。柳田選手クラスになると、仮にど真ん中ではなかったとしてもコースが真ん中に来るだけで簡単に打ち返してくる。そのためこの場面に関してはストレートであるならば、せめてストライクゾーンを九分割した際の右下、もしくは左下の枠に入れていかなければならなかった。
そして近藤選手にホームランを打たれたのもやはり初球で、真ん中高めの僅かに外寄りのストレートだった。これに関しては以前のコラムでも書いた通り、左打者に対するこのコースはホームランコースなのだ。絶対に投げてはいけないコースであり、できればその付近にさえも投げたくはないというコースだった。
それにしても柳田選手に対しても近藤選手に対しても、初球のストレートを簡単に打たれてしまっている。これだけの一流打者に対し、ホームランだけは絶対に避けたい場面であるにも関わらず、簡単にストレートでストライクを取りに行く配球は果たして首脳陣は一体どう考えているのだろうか。
毎日のように書いていて本当に申し訳ないのだが、古賀捕手の配球には疑問符が付くものばかりだ。せめてこの左打者二人に対し、カットボールで内角を抉るところから始めるくらいの配球はできなかったのだろうか。
そしてここで思い出したいのが解説陣の言葉だ。おそらく古賀捕手もリリーフに回って出力を上げられていることから、松本投手のストレートに威力を感じていたのだろう。そのためストレートで押していこうとする配球を見せたのではないだろうか。しかし柳田選手と近藤選手は、ストレートが走っているからストレートで真っ向勝負して簡単に勝てる相手ではない。
つまり今日の試合に関しても筆者は、打たれたのは松本投手のボールが悪かったからではなく、松本投手のボールを生かせなかった古賀捕手の配球にあったと考えている。やはりここを何とかしなければ、このままではせっかくの強力投手陣も崩壊しかねない。そして投手陣が古賀捕手の配球をどう考えているのかも気になるところだ。
現役時代には巧みな配球を見せてくれていた野田浩輔コーチであれば、今日の松本投手に対する古賀捕手の配球には絶対に疑問を持ったはずなのだが、果たして野田コーチは今、古賀捕手に対し一体どのような指導をされているのだろうか。
さて、兎にも角にも今日の敗戦で自力優勝の可能性が消滅してしまった。自力優勝の消滅とは、仮にライオンズが今後すべての試合に勝ったとしても、ホークスがライオンズ以外のチームとの試合ですべて勝てば、ライオンズはホークスを上回ることはできないということを意味する。
ただ、この自力優勝の可能性に関しては消滅したり復活したりを繰り返す。しかしマジックナンバーに関しては、首位チームのマジックナンバーが0になると、もう他のチームがどんなに頑張っても首位チームを上回れる可能性が0%になることを意味する。そういう意味ではまだホークスのマジックナンバーが点灯しているわけではないため、ライオンズが優勝する可能性はまだ0%には至っていない。
例えば1996年のジャイアンツは7月の時点で首位カープとの差は11.5ゲームに開いていた。しかし7月9日のカープ戦で、ジャイアンツは9者連続ヒットという離れ技を見せることで息を吹き返して行く。するとそこからじわじわと首位との差を縮めていき、100試合目で初めてこのシーズンで首位に立つとそこから首位争いを続けていき、その時首位争いをしていたドラゴンズとの10月6日の決戦で勝利しジャイアンツは11.5ゲーム差をひっくり返してのリーグ優勝を果たした。
今現在ライオンズと首位ホークスの差は14.5ゲームとなっている。だがまだ5月の時点であるため、ここから少しずつ主力の年齢層が高いホークスの戦いに疲れが見え始めて、逆にライオンズの若手選手たちが少しずつ覚醒し始めれば、オールスター前までにその差を7〜8ゲーム差程度まで縮めることは十分に可能だ。
筆者が最も尊敬する野球人は三原脩監督だ。その三原監督はかつてこのような言葉を残している。
「野球は筋書きのないドラマである」
ライオンズはここまで39試合を1勝2敗ペースで戦っているわけだが、これがもし次の40試合を2勝1敗ペースで戦えれば、貯金を1つ作ることができる。今のライオンズの状況とはまだその程度なのだ。筆者は今季のライオンズがこのまま終戦するとはまったく考えていない。もちろんそうならないために打たなければならない手はいくつもあるとは思うのだが、少なくとも筆者はライオンズがこのまま1勝2敗ペースのままシーズンを終えるとはまったく考えていない。
必ずどこかでドラマは起こることになっており、勝利の女神は今、ライオンズがそのチャンスを手にするのを今か今かと待っているのである。