2024年6月30日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 9 | 0 |
Eagles | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | × | 2 | 7 | 0 |
継投/ ボー・タカハシ〜 H菅井信也〜 ●本田圭佑〜 佐藤隼輔
敗戦投手/本田圭佑 0勝3敗0S 4.50
盗塁/ 児玉亮涼(5)、 長谷川信哉(2)、 外崎修汰(2)
今季初の4連勝がかかっていたこの試合だったが、辛くも2-1で敗れてしまった。しかし今日の敗戦は悲観すべき敗戦ではなかったと思う。まず先発したボー・タカハシ投手は5イニングスを投げて1失点に抑えたし、打線も1得点だけだったとは言え9安打を放った。
だがやはりミスが減らない。本田圭佑投手や高松選手にミスが出て、余計な1点を相手に与え、逆に取れたはずの1点を取ることができなかった。誰もが言うように、野球はミスをした方が負けるスポーツだ。今日の試合では改めてそれを痛感させられた。
今後少しでも早く5位バファローズに追いつきたいわけだが、現時点では5位までの差が9.5ゲームもある。これはつまりバファローズが10連敗して、ライオンズが10連勝しなければひっくり返らない差だ。本当に途方もない数字であるわけだが、しかしバファローズも主力投手たちが抜けたことで、今季はかなり苦しい戦いを続けている。
そのためライオンズがミスを減らすことによってもっとしっかりとした野球をできるようになれば、オールスターまでには9.5ゲーム差もかなり縮まっているのではないだろうか。だが最近の試合のようにバントミス、走塁ミス、バッテリーミスなど、失策が付かないミスを繰り返しているようではここから巻き返すことは難しい。
だからこそ渡辺久信監督代行ももっと厳しい起用法を見せて良いのではないだろうか。例えばバントで失敗した選手がいた場合、次にバントする機会が訪れたら早い回でもピンチバンターを送るなどし、出場機会を削いでいくのだ。そうすることによって選手の危機感をさらに煽ることができるし、その危機感に対応できる選手とできない選手を見極めることもできる。
日本の野球の場合プロでもアマチュアでも特守を行う際、しっかりと守れた選手からどんどん上がっていき、ミスをしている選手が最後までノックを受けるというやり方がほとんどだ。しかしアメリカの場合は違う。ノックをする際はミスをした選手からどんどん下げられていき、ずっとミスをせず守り続けた選手が最後まで残ることができる。まるで勝ち抜きトーナメントのような方式でノックが行われるのだ。
このやり方により最後まで残れなかった選手たちは、「次こそは最後まで残ってやる!」と燃え上がるのだ。これこそが正しい競争心の煽り方だと思う。ライオンズには強い競争心を持った選手、アグレッシヴな選手が少ないため、このようなやり方をしていかなければ闘争心を発揮できる選手を育てるのは難しいはずだ。
例えば今日は代走高松渡選手がショートゴロで飛び出しアウトになってしまったわけだが、このようなミスをした場合、次の試合で代走が必要な場面では、高松選手よりも走力が劣る選手を代走で起用するのだ。そしてこの起用法によりもし高松選手の心に火がつかないようであれば、高松選手はそれまでの選手という見極めをすることができる。
だが普通に考えれば自分よりも走力が劣る選手が自分よりも先に代走要因として起用された場合、かなりの危機感を煽られるだろうし、それによりさらなる創意工夫をするようにもなるはずだ。そして再度信頼してもらえるように努力した結果、さらに上のレベルの選手になっていくことができる。
今、渡辺監督代行は2008〜2013年のような起用法をしていてはいけないと思う。なぜなら以前のチームはメンタルが強化されている選手ばかりだったが、今のライオンズにはメンタルが強化されている選手が見当たらないのだから。だからこそミスした選手にすぐに再チャンスを与えるのではなく、ミスした選手からはどんどん出場機会を奪い、自ら奮起してその出場機会を取り戻す努力をさせていかなければならない。
今のライオンズの選手たちは、ミスをしてもまたすぐにチャンスを与えてもらえる、とすっかり勘違いしてしまっている。だがそんな貪欲さを持たない選手たちの集まりで勝てるチームを作ることは不可能だ。だからこそ渡辺監督代行にはもっと全面的に厳しさを発揮してもらいたいと筆者は期待している。
さて、若林楽人選手とのトレードで加入した松原選手だが、ここまでは4試合で一番打者を務め、19打数2安打の打率.105に留まっている。今日の試合ではライオンズでの初打点こそ挙げたものの、まだここまで、インパクトのある働きを見せることはできていない。
渡辺監督代行はバッティングの内容はそれほど悪くはないと評価しているようだが、しかし筆者が見ている限りでは相手バッテリーに上手く打たされている打席が多いように思える。そして今季ここまでの松原選手は、ファーストストライクをまったく打つことができていない。もちろん打席数はまだ非常に少ないわけだが、今季ファーストストライクだと思われるボールを打ったのは二度だけで、全体的にはあまり積極的に打てているようには見えない。
現状としてはヘスス・アギラー選手に近い。ファーストストライクを見逃し、より打つのが難しくなるセカンドストライク以降を振って打たされてしまっている印象だ。恐らく渡辺監督代行としてはセンターから反対方向への打球が比較的多いため、それを見てきっかけを掴めれば打ち始めると考えているのだろう。
しかしバッティングというのは積極性を持たずして良くなることはない。例えば筆者は以前、ご病気をされる前の鈴木康友コーチに打撃論を教わったことがあるのだが、鈴木コーチはその時筆者に、「ここに来い、ここに来いと考えながらチェックスウィングをしながら投球を待ち、そこに来たら、よし来た!と心の中で叫びながら打つといいんだよ」というお話をしてくださった。
この鈴木コーチの打撃論は能動的バッティングだと言えるわけだが、しかし今のライオンズの若手選手の中に能動的にボールを待つことができる選手はほとんどいない。逆にどの選手も受動的にボールを待っており、それによって相手バッテリーの術中にはまってしまうことも少なくない。
チェックスウィングというのは打者がストライクゾーンやコースを確認するために、投手がボールを投げる前に軽くハーフスウィングをすることを言うのだが、鈴木コーチはそのチェックスウィングの重要性を、当時まだコーチ修行中だった筆者に教えてくださった。ちなみにその時の鈴木コーチはライオンズの内野守備走塁コーチで、鈴木コーチは筆者にノックの打ち方まで教えてくださった。そのおかげで筆者は実戦同様のスピンがかかったキャッチャーフライをノックで打てるようになったし、かなり高い確率でノックで打ったボールを二塁ベースに当てられるほどの技術を身につけることもできたし、ノックの打球をスタンドインさせられるようにもなった。
今思うと当時の渡辺政権下には本当に有能かつ個性的なコーチ陣が揃っていた。ちなみに筆者が最も尊敬するコーチが熊澤とおるコーチ、そして鈴木康友コーチといった、当時の渡辺監督を支えたコーチ陣だ。熊澤コーチはバリー・ボンズから打撃理論を指南された名コーチであり、鈴木コーチも高い指導力と言語化能力を持った本当に素晴らしいコーチだ。果たして今のライオンズには彼らのような、他よりも秀でた指導スキルを持ったコーチはどれほどいるのだろうか。
さて、その昔筆者がお世話になったコーチにはその他デーブ大久保コーチや石井貴コーチ、さらには坂元忍トレーニングコーチがいらっしゃる。デーブ大久保コーチに関してはその後、筆者は同じ誌面にて中村剛也選手がホームランを量産している理由を科学的に解説させてもらったこともある。デーブコーチや石井コーチからはそれほどたくさんお話を伺う機会は得られなかったのだが、そうした中でも本当に個性を感じさせてくれるコーチたちだった。
石井コーチに関しては口数は非常に少ない方だったが、本当にすごいオーラを発している方で、最初は近づくことさえも憚られるほどだった。しかし筆者自身プロコーチを目指していたこともあり、例え話しかけて叱られたとしても良いという気持ちで話しかけてみると、実際には本当に紳士的な方で、筆者のような弱輩者にも礼儀正しく接してくださった。
だが石井コーチが投手陣を指導されている姿を少し離れた場所から見学させてもらった際には、ブルペンには試合以上に張り詰めた空気や緊張感が漂っていた。そして筆者は思ったのである、これこそがライオンズが弱体化しない理由であると。スポーツ心理学においては、練習では試合以上に難しいことを繰り返し練習しできるようにしておき、試合のプレーが練習以上に簡単に感じられるようにすることで試合でのプレーの質を高めることができる、と説かれている。
石井コーチがライオンズの投手陣を指導されていた時はまさにそのような感じで、石井コーチが見守るブルペンでは、投手陣が試合以上に引き締まった表情で投げているように見えた。だからこそ当時のライオンズの投手陣は勝負所でしっかりと勝つことができていたのだろう。
そして今のライオンズのコーチ陣に関しては、筆者はそれほど縁があるわけではない。指導風景なども主には映像で拝見することがほとんどであるわけだが、時々聞こえてくる指導内容に耳を澄ましても、鈴木コーチ、熊澤コーチ、デーブコーチ、石井コーチのようなインパクトのある指導をされているようには聞こえてこないのだ。
また、キャンプでの選手たちを見ていても普通の緊張感しか筆者には見て取ることができなかった。「1球でもミスをしたら即下に落とされる」、というレベルの緊張感を見せていた選手は、今季のライオンズにおいては筆者は一人も見つけることができなかった。どちらかと言うと「野球にミスは付き物。そのミスをいかに減らせるかが大事」、と呑気に構えて見えるような選手ばかりだった。
もちろん実際選手たちがそう言うことはないのだろうが、しかし昨季5位に沈んでいる悲壮感のようなものが今季のキャンプからはまったく感じることができなかった。これこそが今季の弱すぎる西武ライオンズを作ってしまったのではないだろうか。
そしてその責任は選手たちだけにあるのではなく、その悲壮感や危機感を選手に植え付けられなかった首脳陣の責任も大きい。そう考えると今オフは仮にAクラス入りできたとしても、コーチ陣のほとんどを刷新する必要があるように思える。それこそ今年の株主総会でも意見されていたように、もっと外部の血を入れて、「選手に好かれたい」とは考えないコーチを増やすべきだ。
ライオンズはもはやコンプライアンスなどと呑気なことを言っていられる状況ではない。どんな小さなミスに対しても厳しく接しているホークスの小久保監督のような強い指導者が必要だ。だがもはや内部人事だけではそのようなコーチを選択肢に入れることはできない状況であるため、やはり各部門で最低でも一人ずつは外部招聘で、選手と友だちのようにはならないコーチを連れてくるべきだろう。