2024年8月25日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Eagles | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | × | 3 | 5 | 0 |
継投/ ○今井達也〜 H平良海馬〜 Sアルバート・アブレイユ
勝利投手/今井達也 6勝8敗0S 2.61
セーブ/アルバート・アブレイユ 1勝5敗21S 2.03
本塁打/佐藤龍世(3)
盗塁/外崎修汰(8)
これはさすがにいけない。イーグルスは昨日の試合でも佐藤龍世選手に対し死球を当てているわけだが、今日の試合も、何と佐藤龍世選手がホームランを打った次の打席でまた死球を当ててきた。もちろん投手としてはわざと当てているわけではないことは確かであり、渡辺久信監督代行もそれはよく知っている。だがこのような死球はホームランに対する報復と見做されてしまうのだ。
これがもしメジャーリーグであったなら、今日の佐藤龍世選手への死球により大乱闘に発展していただろう。だが日本の場合、外国人選手が絡んでいない死球で大乱闘になることはほとんどない。やはり日本人は欧米人と比べると穏便であると言うべきなのだろうか。
今日のベルーナドームでは大乱闘にはならなかったとは言え、佐藤龍世選手に死球が当てられた瞬間に渡辺監督代行が激昂してベンチを飛び出し、イーグルスの石原捕手に「二日連続だぞ!」と怒鳴りながら詰め寄った。石原捕手は非常に体が大きな選手であるわけだが、しかし体の大きさで言えば渡辺監督代行の方が上だ。その迫力に、石原捕手もやや怯んでいるようにも見えた。
なぜ渡辺監督代行が相手投手ではなく、石原捕手に詰め寄ったかと言えば、昨日も今日もマスクを被っていたのは石原捕手だったからだ。つまり佐藤龍世選手に対し死球になりそうなボールを投げるよう指示を出したのは石原捕手であり、同じ捕手がマスクを被っている以上、今日は絶対に佐藤龍世選手に対して死球を当てることは許されなかったのだ。ましてやホームランを打った次の打席などは特に。
昨日は鈴木投手にぶつけられ、今日も酒居投手にぶつけられたわけだが、どちらもサインを出したのは石原捕手であるため、渡辺監督代行は真っ先に石原捕手へと詰め寄っていった。それを見て慌てて渡辺監督代行と石原捕手の間に割って入ったのがイーグルスの今江監督だったわけだが、残念ながら迫力不足の今江監督には、迫力満点の渡辺監督代行を止めることはできなかった。
闘志を剥き出しにして向かって来る渡辺監督代行を止めたのは、かつてライオンズでプレーし渡辺監督代行のことをよく知る渡辺直人コーチと後藤武敏コーチだった。火がついた渡辺監督代行は二人掛かりでなければ止めることはできなかったようだ。
監督のこのような姿は選手の心に火を付ける。渡辺監督代行は、2008年の監督就任1年目の4月にも死球禍に対し怒りを剥き出しにした姿を見せている。その時の相手はホークスで、怒りを爆発させた相手は何と王貞治監督だった。王監督は何とか渡辺監督を宥めようとしたのだが、しかしその言葉は逆に火に油を注ぐことになってしまい、まだ監督1ヵ月目だった渡辺監督は世界の王貞治監督を、「練習なら二軍でやらせてくださいよ!」と怒鳴りつけた。
その時渡辺監督を止めようと必死になっていたのはデーブ大久保コーチだったわけだが、その一連のやりとりを間近で見ていたデーブコーチは、「世界の王にあれだけ言っちゃったんだから、もう俺らの野球人生これで終わりだ」というようなことを思ったと言う。
だがその時選手たちは、渡辺監督の本気で選手を守ろうとしてくれるそのような姿を見て、「この監督のために優勝したい」と気持ちを一つにしていき、圧倒的な打力でリーグ優勝を果たし、日本シリーズでもジャイアンツを破り日本一になった。
今日2日連続死球を当てられた佐藤龍世選手にしても渡辺監督代行に対し、「守ってくれてるじゃないですけど、嬉しかったです」とコメントしている。やはり監督がこのように、選手を守るために本気で戦っているという姿を見せてくれると、選手たちはそれを意気に感じて戦えるようになる。これは松井稼頭央監督が慕われていたという意味とはまったく別物だ。
ちなみにホームランの直後の死球という点では、一昨日のバファローズ戦でもアンソニー・ガルシア選手がホームランを打った次の打席で死球を当てられている。ややあからさまな配球を2カード続けて見せられていたこともあり、渡辺監督代行としても三度目を防ぐという意味でもここで相手にプレッシャーをかけようとしたのだろう。
さすがに今日の試合でこれだけ怒りを爆発させた渡辺監督代行の姿を見せられると、イーグルスバッテリーとしては明日の試合ではかなり内角を使いにくくなる。これも渡辺監督代行の狙いではなかっただろうか。渡辺監督代行は周囲から見られている以上の策士、勝負師であるため、明日以降の内角攻めを減らすためにあえて怒りを抑えることをしなかったとも考えられる。
ちなみにこれは星野仙一監督が効果的に使っていた手だ。手と言うと失礼に当たるが、星野監督は闘将が代名詞であるほど熱い監督で、乱闘になれば誰よりも真っ先に当事者に向かって行くタイプだった。そして星野監督に向かって来られると、相手チームにしても次のカードの対戦相手にしても、非常に内角を攻めにくくなるのだ。なぜならまた下手に死球を当てて星野監督の逆鱗に触れたくないからだ。
イーグルスバッテリーも当然そのように感じているはずだ。もちろんそれで内角球が0になるわけではないが、しかし死球になりそうな厳しい内角球に関しては、さすがに明日は来ることはないだろう。そしてその分打線としては相手投手を攻略しやすくなるため、ライオンズは明日の試合ではいつも以上に点を多く取れる可能性が高い。
しかも明日の先発は武内夏暉投手で、武内投手はライオンズの先発陣の中でも最も援護してもらえている投手だ。その武内投手が投げる試合という意味でも、内角に投げにくくなったという意味でも、明日はライオンズの快勝を予測することができる。それこそアルバート・アブレイユ投手にセーブが付かないような勝利になるのではないだろうか。