HOME > コラム (213記事) > 絶対的守護神増田達至投手に見え始めた明らかな球威の衰え

2022年10月31日公開

絶対的守護神増田達至投手に見え始めた明らかな球威の衰え

7年間も最終回を守り続けた絶対的守護神増田達至投手

最終回を守り続けた絶対的守護神増田達至投手

2016年以降、ライオンズの守護神は長年増田達至投手が勤めてきた。途中怪我や不振もあり調子を落とした時期もあったが、そのような時期が長続きすることはなく、守護神として7年間ライオンズの最終回を守り続けている。だがこの増田投手のポジションも、そろそろ変えるべきだと筆者は考えている。

増田投手の魅力はなんと言っても質の良いストレートだ。その回転の質は本当に素晴らしく、調子が良い時はホップするのではないかと思えるほどだ。だがそのストレートの威力に今季あたりから明らかな翳りが見え始めているのだ。実際の数値としては公開されていないため何とも言えないのだが、数字を見るとその兆候を見て取ることができる。

今季の増田投手のWHIPは0.92で、防御率は2.45だった。セーブ数としては31個マークしており守護神の名に相応しい活躍を見せてくれたのだが、気になるのはこれだけWHIPの数字が良好なのに、防御率が2.45となっている点だ。
※ WHIPとは1イニングあたりに出す平均走者数のこと

昨季の増田投手の防御率は4.99だったのだが、WHIPも1.27とさほど良くなかったため、この防御率は不思議ではなかった。しかし今季のWHIPは0.92とスーパーエース級であるにもかかわらずリリーフに失敗する場面も多く見られ、防御率も2.45と増田投手としては物足りない数字だった。

合わせて平良海馬投手と水上由伸投手の数字も見ておくと、平良投手の今季の防御率は1.56でWHIPは0.94、水上投手は防御率1.77でWHIPは0.91だった。このふたりの数字と比較をすると、増田投手の数字の物足りなさが際立ってくる。いや、もちろん31セーブで防御率2.45なのだから、一般的に考えれば素晴らしい数字だと思う。だが増田投手にしてはやはり物足りなさを感じてしまうのだ。

明らかな球威の衰えが見え始めた増田達至投手

今季の増田投手はWHIPに関して言えば平良投手や水上投手と同レベルの数値だった。ではなぜ三人の中で増田投手だけが防御率が2点台中盤となってしまったのか。その理由は先にも挙げたように球威の衰えが原因になっていると思う。制球力や投球術に関しては今なお向上を続けている増田投手だが、奪三振率に関しては3年連続で数字を落としてしまっている。

2019年は9.56、2020年は7.71、2021年は6.75、そして今季は5.96というのが増田投手の奪三振率だ。この5.96という数字は今季で引退された内海哲也投手の6.00を下回っている。増田投手は、水上投手のように比較的打たせて取ることを得意としているというよりは、三振を取って行くことができる投手だ。その投手の奪三振率が引退年の内海投手の数字を下回っているのだから、これはやはり球威の衰えと見て間違いないだろう。

増田投手のこれまでの貢献を考えれば、よほど成績が低下しない限りは来季もこのまま守護神を前提として起用されていくのだと思う。それが増田投手に対する敬意だと思うのだが、しかし監督が代わったというタイミングもあり、筆者は増田投手の守護神にこだわる必要はないと考えている。

増田投手も成績が下降してから守護神の座を剥奪される形でセットアッパーに降格させられるよりも、球威に明らかな衰えが見え始めているこの時点で少し楽に投げられるセットアッパーにポジション替えしてあげた方が、増田投手の選手寿命を伸ばすせると思うのだ。

守護神として成績を上げられなくなれば、増田投手クラスであっても力みが生じるようになり、そこから再び肩を痛めるということにも繋がってしまう。そうなる前に楽なポジションで投げさせてあげるというのは、今豊田清コーチも悩んでいるポイントだと思う。

そして今季投げたイニング数は三人ともほとんど変わらないのに、被本塁打は増田投手が7、平良投手が2、水上投手が1となっている。3点差以内の緊迫した場面で投げる守護神としては、この被本塁打の数はやはり気になるところだ。必ず僅差での登板となる守護神がホームランを打たれてしまえば、そこで一気に試合をひっくり返されるケースが多くなるからだ。

守護神が試合をひっくり返されるということは、勝てるはずだったゲームを落としてしまうことを意味し、これは優勝を目指すチームとしては致命傷にもなりかねない。だからこそ筆者は増田投手は来季は7回あたりで、プレッシャーのやや少ない回に投げてもらうのが球威的にも年齢的にもベストだと考えているのだ。

平良海馬投手は今もまだ先発願望を持っているのだろうか?!

では守護神は誰が務めるのかということになれば、それはやはり三振を取れる平良海馬投手が適任だろう。守護神はやはり三振を取れることに越したことはない。水上投手の場合はある程度三振も取れるのだが、どちらかと言えば打たせて取ることを得意としており、ピンチで登板して併殺打で切り抜けてもらうという起用法をするためにも、水上投手は7〜8回に待機してもらうのが現時点ではベストだろう。

さて、ここで気になるのが平良投手が今でも先発願望を持っているのかという点だ。最近は平良投手の口から先発へのこだわりは聞かれなくなったが、だからと言って内に秘めていないとは限らない。ただし平良投手自身、ライオンズの先発ローテーションの6人がほぼ固まっていることは認識しているわけで、そこであえて危険を犯して先発転向を志願する可能性は低いように思える。

バックナンバー:平良海馬投手はリリーフに専念すべき?それとも先発に挑戦すべき?

平良投手は以前、西口文也投手コーチから先発のチャンスをもらっているのだが、結局はそれを活かすことはできず、その後はリリーフに専念したという経緯がある。いつかは先発として勝負したいという気持ちは持っているかもしれないが、平良投手が近い将来また先発転向を志願することは、先発陣の安定感と、増田投手の球威の衰えを踏まえれば可能性としては低いだろう。

それならばいつ増田投手がセットアッパーに転向しても良いように、平良投手は守護神を務める準備をしておいた方がチームにとっても、平良投手自身にとってもプラスになると思う。

250セーブという数字がまだ遠く感じられる増田達至投手の現在地

現在ライオンズの1軍でチーフ格として投手コーチを務めるのは豊田清コーチだ。豊田コーチはご存知の通り、かつてはライオンズの絶対的守護神として君臨していた名投手だ。

最終回のマウンドに登り投球練習を終えると、バックスクリーンに向き直り、胸に手を当てて集中力を高める姿を見せた。そしてファンもスタンドで立ち上がり、その豊田投手の姿に合わせて胸に手を当てて勝利を願うことが日々の恒例となっていた。

絶対的守護神として数々の修羅場や力の衰えをも経験してきた豊田清コーチであれば、来季以降の増田投手の最善の起用法もすでに頭の中で描いていると思う。その構想を筆者が読み取ることなどおこがましくてとてもできることではないが、しかし何らかのシミュレーションをしていることは確かだと思う。

それが成績を落としてからのことなのか、それとも成績を落とす前の事前策なのかは、来年のオープン戦の終盤になれば見えてくるだろう。

だが確実に言えることは、来季は開幕早々に35歳になる増田投手が、ここからさらなるキャリアイヤーを作ることは難しいということだ。仮に増田投手がこれまで大した成績を残していない選手であれば、遅咲きのキャリアイヤーを作ることも可能だが、しかし増田投手はこれまでまさに輝かしい成績を残し続けている。そんなレベルにある投手が来季さらに数字を上げることは現実的には考えにくい。

豊田投手コーチもそれについては考えているだろうし、そして平良海馬投手もそれを考えなければならない。先輩である増田投手に敬意を示しながらも、いつでも増田投手のポジションを奪いに行ける状態にしておくことが、今平良投手に求められていることではないだろうか。

将来的な記録を踏まえても平良海馬投手の守護神転向は今かもしれない

大学から社会人を経てプロ入りした増田投手とは異なり、平良投手は高卒で来季はまだ23歳だ。そう考えると、現在175セーブの増田投手は名球会までの250セーブに到達できる可能性はもはや年齢的にすごく高いとは言えない。250セーブをマークするためには来季から25セーブ以上を3年間続ける必要がある。

しかし3年後、37歳でこれまでの肩に脆さを見せていた増田投手が守護神で居続けられる可能性は低いと考えるのが現実的だ。だが来季23歳の平良投手が来季以降守護神を務めることになれば、よほどの事態がない限りは、平良投手が今の増田投手の年齢になった時に250セーブに到達している可能性は非常に高い。増田投手と平良投手の起用法に関しては、そのようなことも加味しながら考えていく必要もあると思う。

さらに言えば今季の状態であれば、相手打線からすれば増田投手よりも平良投手が出てくる方が嫌なイメージを持ったはずだ。我々ファンからしても、今季に関して言えば増田投手よりも平良投手の方が安定感があると感じていた。だとすればやはりここは平良投手を最終回に持っていくことが、ライオンズが勝てる可能性を高めることになるのではないだろうか。

もちろん筆者自身、増田投手を蔑ろにしたいと考えているわけではない。増田投手の選手寿命を伸ばすためにも過酷な守護神の座で起用し続けるのではなく、セットアッパーに転向した方が良いと思うのだ。

そして一方まだまだ成長段階にある若き平良海馬投手には、プレッシャーや過酷な状況を跳ね除けるだけのエネルギーが有り余っている。松井ライオンズが今後何年も安定して戦っていくためにも、守護神をより安定感があり、まだまだ選手寿命が長く残っている平良投手に早めにスイッチしておくことは決して損ではないはずだ。

だが増田投手と平良投手を競わせるということについては筆者は反対だ。これは増田投手に対する敬意に欠けると筆者には感じられるため、セットアッパーに転向してもらうのであれば、豊田清コーチが直接増田投手を前もって説得し、納得してもらうことが重要だ。そう、かつて東尾修監督が先発だった豊田清投手を守護神に転向させたあの時のように。

バックナンバー:西口文也コーチから豊田清コーチへ、渡辺GMの見事なまでの継投策

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
⚾️ 筆者カズのTwitter(現X)
⚾️ 筆者カズの野球系YouTube
⚾️ 筆者カズの野球系Instagram
SNSのフォローやいいねもよろしくお願いします🙏

関連記事