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2023年11月26日公開

いつしか栗山巧選手を越えて行くであろう若獅子・蛭間拓哉選手

最後の最後で息切れしてしまった蛭間拓哉選手のルーキーイヤー

最後の最後で息切れしてしまった蛭間拓哉選手のルーキーイヤー

ルーキーイヤーを56試合で終えた蛭間拓哉選手が初めて契約更改に挑んだ。その結果は本人の予想を上回る600万円アップで、推定年俸は1,600万円から2,200万円まで上がった。この年俸はもちろん成績によって上がったり下がったりしていくわけだが、ぜひ蛭間選手には上がりっぱなしのプロ野球人生を歩んでもらいたいと思う。

そんな蛭間選手だが、シーズン終盤に疲れが出てしまったのだろうか、最後の最後で背中の違和感を訴えて登録抹消となってしまった。これは怪我ではなく張りの類だったようだが、ライオンズの上位浮上も絶望的になっていたことから、首脳陣は無理させることなく登録抹消とさせた。

元ライオンズ監督の広岡達朗氏が聞いたら怒ってしまいそうだが、しかし選手寿命を長くするという意味では違和感を覚え、トレーナーからも筋肉の状態がいつもとは違うという報告が上がれば、やはり場合によっては休ませるべきだとも思う。

ライオンズの黄金時代は、例えば辻発彦選手がふくらはぎを肉離れしても、テーピングをグルグル巻きにして試合に出続けたというような逸話もある。これは当時のライオンズのレギュラー陣が、ちょっとでも試合を休めばすぐにレギュラーの座を奪われるという危機感を持ってプレーしていたことを意味する。

契約更改後の記者会見では、蛭間選手自身来季は怪我なく一年間試合に出続けることを目標として挙げた。やはり蛭間選手自身、最後の最後で息切れしてしまったことが相当悔しかったのだろう。今オフは怪我をしない体作りをして、来季に挑むとコメントしている。

体だけではなく、メンタルも強化していきたい蛭間拓哉選手

そして今オフ、蛭間選手は師と仰ぐ栗山巧選手と共に自主トレに取り組むようだ。これはとても良いことだと思う。体育会系のノリでガンガン筋トレをしたり、ガンガン打ち込むばかりの自主トレをしている選手に付いて行くよりも、ずっと蛭間選手のプラスになるはずだ。

蛭間選手もコメントしている通り、栗山巧選手は体の準備はもちろんのこと、頭の準備もしっかり整えて毎試合に挑んでいる。ちなみに野球やゴルフは「メンタル競技」と呼ばれ、サッカーやバスケなどは「コンタクト競技」と呼ばれており、メンタル競技はメンタルトレーニングも大切にして、頭を使ってプレーをすることで長期間活躍できるようになる。

逆にメンタル競技でメンタルトレーニングを疎かにしてしまうと、好不調の波が大きくなるケースが大半となる。例えばライオンズで言うと今井達也投手はメンタルトレーニングに対して否定的だ。そのためあれだけのポテンシャルを持っていながら、未だに好不調の波の大きさに苦しんでいる。

もし今井投手がメンタルトレーニングも重視するようになれば、彼は間違いなく沢村賞レベルの投手になっていけるはずだ。だがプロ7年目を終えた今井投手は今年ようやく初めて10勝をマークするに至ったわけだが、彼のポテンシャルであれば今頃18勝していても不思議ではない投手だ。

話を蛭間選手に戻すと、やはりしっかりとメンタルを整えて試合に挑んでいる栗山選手を師事することは、蛭間選手自身の選手寿命を伸ばすことになると思う。それこそ栗山選手同様、40歳を越えても現役を続け、2,000本安打を達成することだってまったく夢ではないだろう。

プレーをするので精一杯だったルーキーイヤーの蛭間拓哉選手

誰もがそうだと思うが、一年目というのは右も左も分からない状態でプレーし続けなければならないため、よほどタフなメンタルか、よほど高い能力を持っている選手以外はプレーするので精一杯となってしまう。

きっと蛭間選手もそうだったと思う。蛭間選手はアマチュア時代は決して怪物と称された選手ではなく、プロに入って今から伸び盛りとなる選手だ。そのためプロ特有の移動や、連日の試合というのは2軍であっても決して楽ではなかったと思う。

体もまだまだプロの水に慣れているわけではなく、どんなトレーニングを選ぶにしても、これからさらに一年間戦い続けられる強い体を作らなければならない。そのお手本としても最も適しているが、やはり栗山巧選手だと思う。

栗山選手はシーズンフル出場を4回も達成しているし、フル出場じゃない年であっても、ほぼフル出場に近いシーズンが非常に多い。選手生命を左右するような大きな怪我をすることなく試合に出続けたことで、栗山選手は2021年に2,000本安打を達成している。

近年ライオンズの3・4番を打っていた打者たちはちょくちょく怪我をし、長期間一軍を離れることが多々あった。だが主軸選手はやはり試合を休んではいけないと思う。どんなチーム状況であっても試合に出続け、少しでも多くチームを勝利に導くのが主軸の務めだ。

蛭間拓哉選手にはちょくちょく怪我をしないような、まさに栗山巧選手のようなプレイヤーになってもらいたい。そして欲を言えば、栗山選手に長打力を加えたようなスラッガーに成長していって欲しい。

弟子はいつしか必ず師を超えて行く。蛭間選手もいつの日か、きっと栗山巧選手を超えて行く選手になって行くはずだと筆者は確信している。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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