2023年11月26日公開
ショートは源田壮亮主将、セカンドは外崎修汰新選手会長、正捕手争いは熾烈になってきており、ファーストやサードも渡部健人選手や外国人選手で組んでいけると思う。だが外野に関してはポジションがひとつも埋まっていないのが現状だ。
2021年、ルーキーイヤーの若林楽人選手は鮮烈なデビューを飾った。プロ初ホームランがすぐに飛び出したことだけではなく、開幕から僅か2ヵ月程度の間に20盗塁を決めてみせた。もしシーズンをフルで出場していたら、ルーキーイヤーから60盗塁している可能性さえあった。
だが若林選手は2021年5月30日の阪神戦、打球処理をする際に左膝前十字靭帯を損傷してしまう。ライオンズファンにとって前十字靭帯の怪我として思い出されるのは炭谷銀仁朗捕手だ。炭谷捕手は2010年に左膝の半月板を損傷し、同時に前十字靭帯を断裂している。
半月板まで損傷し、靭帯も断裂していた炭谷捕手と比べると、まだ前十字靭帯損傷で収まっていた若林選手の方がやや軽症のようにも思えた。だが実際には炭谷捕手は怪我をした翌年に122試合に出たのに対し、若林選手の怪我をした翌年は28試合、今季2023年も36試合の出場に留まっている。
去年はまだまだ全力でプレーをする怖さが左膝にあったようで、今季も左膝を固定していた金具の違和感で、若林選手は2年間思うようなプレーができなかった。若林選手自身「この怪我をなめていた」とコメントしていたが、筆者自身も、まさかこの怪我がここまで長引くとは想像していなかった。
若林選手は2023年10月25日に左膝の金具を除去する手術を行った。そこから3週間程度は左膝に関しては安静が必要だったようだが、この金具を除去したことにより、来季は左膝の違和感なくプレーに集中していけるのだろう。
冒頭で書いた通り、ライオンズの外野は全ポジションが白紙となっている。つまり外野のレギュラーは一人もいないということで、これは12球団の中でも異例の状況だと言える。
そしてライオンズは長年一番打者を固定することもできていない。来季、若林選手が完全復活してくれれば、この一番打者問題とセンターラインが一気に固まることになる。理想的には右投げの俊足強肩の若林選手がセンターに就き、左投げの蛭間拓哉選手がライトに就くという、最低でのこの形だけは固定していきたい。
残るレフトに関しては黄金時代のように、調子や相性によって2〜3人で回しながら、少しずつ固定していけば良いと思う。鈴木将平選手や西川愛也選手らはその急先鋒だと言える。
だがその中でも圧倒的な走力を持つ若林選手がしっかりとレギュラーを掴めるようになれば、ライオンズの布陣は一気に安定感を増して行く。やはり野球というスポーツで安定して勝って行くためには、エース、守護神、リードオフマン、四番打者、正捕手、センターライン、このあたりはしっかりと固めていかなければなかなか安定感は出てこない。
現状のライオンズはと言うと、まずエースは2年以内にMLBに移籍する可能性が高く、守護神は世代交代の時期に来ている。正捕手に関しては競争が熾烈になってきているため心配はないとして、リードオフマンと四番打者は現在は不在だ。今季は中村剛也選手が四番を打つ試合も多かったわけだが、中村選手がよく言うように、やはり来季41歳になる中村選手が四番を打っているようではライオンズは強くなれない。
来季の四番打者に関しては、今の流れで行けば外国人選手になる可能性が高いと思われる。残念ながらライオンズの日本人選手の中ではまだ、安心して四番を任せられる選手はいない。
だがリードオフマンに関しては、怪我の不安さえなくなれば若林選手が最有力候補だと言える。金子侑司選手も快足で鳴らす選手ではあるが、しかしこれまで多くのチャンスを得ながらも打つ方で貢献できなかったため、34歳となる来季、突然リードオフマンとして固定されるようになる可能性は低いだろう。
若林選手は細身だが、意外とパンチ力もある。かつてライオンズで大活躍した片岡易之選手のような印象だ。内野安打も稼げるし、長打も打てるというのは魅力的だ。
そして相手バッテリーからすると、若林選手に出塁されるのは本当に嫌なはずだ。先頭打者としてヒットや四球で出塁したら、盗塁でそれが一気に二塁打と同じ形になってしまう。そこから例えば次の打者が内野ゴロでも打てば一瞬で一死三塁になり、簡単に点が入る状況になってしまう。
だからこそ若林選手は完全復活して、リードオフマンとして固定されなければならない。今季は特に得点力不足に苦しんだライオンズだが、若林選手がリードオフマンとして固定され、塁上を引っ掻き回すことができれば、仮に四番打者が不調だったとしてもライオンズは安定的に得点していくことができるだろう。
そしてなおかつ若林選手の同期であり盟友でもあるブランドン選手が怪我をしなくなり、しっかり戦えるようになれば、ブランドン選手も将来的には四番打者候補の一人だ。
若林・ブランドンコンビが、いつしか栗山・中村コンビのようになっていければ、ライオンズは本当に強くなると思う。何もライバルはチーム外だけにいるとは限らない。チーム内にライバルがいることで切磋琢磨しやすく、より高いモチベーションを維持できることもある。まさに栗山・中村コンビが41歳になる来季も現役を続けているかのように。
そういう意味でも若林選手はもちろんのこと、ブランドン選手の復活も心待ちされるところだ。ブランドン選手に関しては残念ながら育成契約に切り替えられてしまったが、しっかりと戦えるコンディションになれば、またすぐに支配下登録してもらえるはずだ。
入団から3年間は怪我に苦しんだ若林楽人選手とブランドン選手ではあるが、来季はまずは若林選手にリードオフマンの座を奪取してもらい、それを励みにブランドン選手にも早く一軍に戻ってきてもらいたいと思う。