悪質なタニマチから蛭間拓哉選手を守ることは西武球団の務め

2023年8月12日公開

蛭間拓哉選手が1年目からこのまま1番打者に固定され続ければ快挙

悪質なタニマチから蛭間拓哉選手を守ることは西武球団の務め

ここ数試合、蛭間拓哉選手がリードオフマンとして1番を打つオーダーが固定されつつある。1番打者を固定できないのは、ライオンズにとっては秋山翔吾選手を欠いて以来の課題だったわけだが、ここに来てやや解決の兆しが見え始めている。

やはりチームとしては1番打者を固定できないのは痛い。まず戦術としてシンプルに、初回から1番打者が出塁し、盗塁し、2番打者が走者を進めて一死三塁、もしくは無死三塁一塁という状況でクリーンナップを迎えられると、初回に得点できる確率が非常に高まる。

どのようなスポーツでも同様なのかもしれないが、しかし攻撃に裏表がある野球の場合は特に先制点が重要だ。逆に相手に先制されてしまうと、攻撃時に敷ける戦術の幅がとても狭くなってしまう。

例えば3点差で負けていた場合、無死から走者を出しても送りバントを使うことはできない。いや、もちろん使ってもいいのだが、3点返さなければならない状況でみすみす打者一人を犠牲にしてしまうことは、戦術としてはセオリーからは外れる。

同点や、リードしている場面では送りバントは有効なのだが、ビハインドの場面では使いづらい戦術であり、送れないが故に併殺打となる確率も高まってしまう。そしてもちろんビハインドの場合、簡単に一塁走者に盗塁をさせることもできない。

足のスペシャリストならばその可能性もあるが、足が速いだけの選手に対しては、いくら盗塁数が多かったとしても簡単に走らせることはできない。ここで仮にグリーンライト(自由に走っていいという指示)が出ていたとしても、ビハインドの場面ではスタートは切りにくいだろう。

そういう意味でも、野球というスポーツはとにかく先制点を挙げたいし、何としても先制点を献上することは避けたいスポーツだと言える。

だが1番打者がしっかりと機能している場合、上述したように初回に得点を挙げられるチャンスが増えていく。仮にベルーナドームでの試合で、1回表を先発投手がリズム良く三者凡退に抑えていた場合、その裏の攻撃でもリズム良く先制点を挙げられる可能性は高くなる。

「野球に流れなどない」と言い切る方もいらっしゃるが、野球には流れが存在する。リズム良く守れればリズム良く攻撃ができるし、リズム良く攻撃できていれば守りのリズムも良くなる。そしてこのリズムを崩さないためにも、投手はできるだけリズム良く、テンポ良く投げていくことが望ましい。

蛭間選手ほどの実力者を単独指名できたという奇跡

蛭間選手は以前、「自分自身は1番・3番タイプ」とコメントしたことがあった。確かに広角に打てて足も速いため、どっしりと座る四番打者というよりは、打って走って守れるかつての秋山幸二選手のような1番・3番タイプと言えるのかもしれない。

だが松井稼頭央監督が、最も打てる打者を四番打者に据えたいと考えているのであれば、昼間選手も将来的には四番を打つことに挑戦すべきだ。将来的には吉田正尚選手のような四番打者へと成長していってもらいたい。

オールスター明けくらいの気温がどんどん暑くなり始めた頃から、蛭間選手は少しずつプロのボールに慣れ始めて来ているように見える。速いボールにも簡単には振り遅れなくなって来た。

もちろんこのコラムを書いている時点でまだ23試合にしか出場していないため、この時点ですべてを語ることはできない。だが1軍に昇格した直後の6月は、プロの速いボールに簡単に差し込まれている場面が多く見られた。

おそらく蛭間選手はアジャスト能力が非常に高い選手なのだろう。差し込まれることが多かった最初の10試合の反省を活かし、8月に入るとしっかりと自分のスウィングでバットを振ることができる打席が増えて来た。

6月の月間打率は.211、7月は.214、そして8月になると.250まで月間打率を上げて来ている。しかも8月の得点圏打率は.333という高さだ。もちろんこの得点圏打率もまだ打席数が少ないため、状態を見極められるほど正確な数字ではないわけだが、しかし勝負強さを垣間見せる打席は確実に増えて来ている。

かつて秋山翔吾選手は1年目の開幕戦から下位打線で試合に出続け、1年目は110試合の出場で.232という打率を残している。現在23試合の蛭間選手がここから100試合以上に出場していくことは物理的に不可能なわけだが、しかし1年目から1番打者としてこのまま固定され続ければ、ある意味では1年目はずっと下位打線だった秋山翔吾選手を上回ったと評価することもできるかもしれない。

それにしてもこれだけのレベルにある選手を、いくらライオンズJr出身だからといってドラフト会議で単独指名できたのは驚きだった。筆者には他球団が西武球団に対し忖度したとしか考えられなかった。蛭間選手はそれほど、複数球団による競合になっても不思議ではない逸材なのだ。

心配されるのはチームメイトからの蛭間選手に対する悪影響

今のところ、蛭間選手には浮ついた噂は一つもない。他のライオンズの若手選手たちの3〜4人はすでにSNSの不適切利用が報じられている。だが蛭間選手に関しては少なくともここまでは野球にだけ集中できているようだ。

だが心配なのは、SNSを使って女性を口説いている他のライオンズの若手選手たちが、蛭間選手を毒してしまうことだ。これだけは、そうならないように渡辺久信GMらが耳にタコができるほど蛭間選手に注意していく必要があるだろう。

すでにSNSナンパの味を知ってしまった選手は、よほど痛い目に遭わない限りは注意しても隠れてやり続けるだろう。これはプロ野球選手だろうが、一般の社会人だろうが同じことだと思う。だからこそ西武球団は非常にクリーンなイメージを持っている蛭間選手を、チームメイトからも守っていく必要がある。

例えばなかなかレギュラーを掴めない選手の場合、「SNSナンパなんかに時間を使ってるから活躍できないんだ」とファンから言われてしまう。だがしっかりと野球に集中できている選手の場合、仮にしばらく打てなかったとしても、「調子が上がるようにもっと応援してあげよう!」と思ってもらえるようになる。

例えば栗山巧選手が開幕から21打席連続ノーヒットだった時、中村剛也選手が開幕から10試合ノーアーチだった時、一体誰がこのふたりを責めただろうか?少なくとも本物のライオンズファンの中でこのふたりを責めた者は一人もいなかったはずだ。

なぜならライオンズファンのほとんどが、このふたりが浮かれることなくしっかりと野球を頑張り続けていることを知っていたからだ。蛭間選手には、この系譜を受け継いでいってもらいたい。

去年3番を打っていた森友哉捕手は新型コロナウィルスの流行中、外出禁止だったのにも関わらず、抜け穴を使うかのように女性を自宅に呼んだことが問題視された。そして去年まで4番を打っていた山川穂高選手が起こした問題は言わずもがなだ。蛭間選手には決してこの系譜を歩んでいってもらいたくはない。

年俸数億円を稼ぐスター選手になった後でも決して浮かれることなく、一般社会に出しても恥ずかしくない、周囲の手本となるような選手になってもらいたい。そう、栗山選手や中村選手のように。

タニマチの毒牙から蛭間選手を守るのは西武球団の務め

蛭間選手がこのままどんどん実力を身につけ、スター選手となっていくのは時間の問題だ。だからこそそうなった時の周囲の存在が心配なのである。プロ野球選手の場合、活躍すればするほどいわゆる「タニマチ」が増えていく。山川選手にも複数のタニマチがいたようだ。

タニマチほどタチの悪い野球ファンはいない。いや、実際にはタニマチを野球ファンと呼ぶべきではないだろう。12球団の中でも阪神タイガースは特にタニマチが多いことで知られるわけだが、ライオンズであっても比較的東京に近いということもあり、タニマチに潰されてしまう選手も少なくはない。

もちろん渡辺久信GMもタニマチの存在は把握しているはずであり、とにかく蛭間選手をそのような悪質なタニマチから守ってあげて欲しい。具体的にはタニマチからの甘い誘惑の上手い断り方を教えてあげて欲しい。

タニマチは自らのお金を使い選手に美味しいものを食べさせたり、高級なお酒を飲ませたり、女性をあてがったりすることで恩を売り、選手たちを囲い込んでいく。そして周囲に「この選手は俺が育てたようなものだ」と豪語することで優越感を味わいたい輩のことだ。

そして、決して「タニマチ=反社」というわけではないのだが、中には反社と呼ぶべき人物も混じっている。実際スター選手の中にも、そのタニマチが反社とは知らずに付き合いを深め、あとで痛い目に遭ったというケースが実際にあった。

もちろんプロ球団への入団が決まったら、その直後に行われる12球団合同の新人研修でもタニマチの存在については注意されている。だがそこでタニマチとの付き合いは良くないと教わっても、数年後、活躍し出してチヤホヤされてしまうと、新人の頃の研修で教わったことなどすっかり忘れてしまう選手がほとんどだ。

そうならないようにタニマチ、SNSの適正利用、女性問題、金銭問題、薬物問題、法の遵守などは定期的にNPB主導でレクチャーしていくべきだ。「一度教えてあるから大丈夫」ではなく、「二度も三度も教えたけど忘れてしまった人もいるだろう」くらいの気持ちでやっていかなければ、タニマチはこれからも有望な選手たちを潰し続けるはずだ。

もちろん蛭間選手は山川・森側の選手ではなく、栗山・中村側の選手だと思うため、きっとこの心配も取り越し苦労に終わるはずだ。だがトラブルが続出している西武球団に於いて、十分ケアしたとしても、ケアしすぎるということはないと思う。

今後蛭間選手が意図せずタニマチの毒牙にかかってしまわぬよう、西武球団には過保護だと言われたとしてもしっかりと蛭間選手の野球人生とクリーンなイメージを守り続けてもらいたい。それが今筆者が西武球団に対し強く抱いている希望だ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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