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2023年11月25日公開

平井克典投手が今西武球団とFA交渉している内容を考察する

FA宣言直後にファンを安心させてくれた平井克典投手

FA宣言直後にファンを安心させてくれた平井克典投手

2023年11月9日に国内FA権を行使して以来、今なお平井克典投手と西武球団の交渉は続いている。現段階では代理人が球団側と契約内容の調整をしており、もう間もなくで平井投手自身が交渉の席に座り、西武球団と最後の詰めに入っていく流れのようだ。

平井投手がFA権を行使した際は、また素晴らしい選手がライオンズを去ってしまうのだろうかとも心配されたが、平井投手によればこれは移籍を前提としたFA宣言ではないとのことだ。平井投手自身移籍する意思は持っていないようで、今後も気持ちよくライオンズでプレーするための話し合いの時間を作るためのFA宣言だったらしい。

とにかく平井投手はライオンズには絶対不可欠な存在だ。万が一でも平井投手がライオンズを去ってしまうことになれば、来季も優勝争いどころか、また最下位争いをする羽目にもなりかねない。

おそらく平井投手自身、ライオンズファンが選手のFA宣言にナーバスになっていることに気付いていたのだろう。そのためFA宣言してすぐ、移籍を前提としたFA宣言ではないことを明言し、ファンを安心させてくれた。この行動により平井投手は、さらに男を上げたなという印象だ。

すべてのライオンズファンが知っての通り、ライオンズというチームはこれまで本当に多くの選手をFAにより失ってきた。メジャー移籍ならまだ受け入れやすいが、FAでパ・リーグに移籍する選手たちを本当に多く見送ってきたのがライオンズファンだ。平井投手はきっと、そんなライオンズファンの気持ちを慮ってくれたのではないだろうか。

平井投手の交渉事項は住宅問題と終身雇用!?

平井投手はHonda鈴鹿出身の選手で、いわゆるサラリーマン上がりのプロ野球選手だ。社会人野球を経由することで、一般社会で必要な考え方をしっかりと身に付けた上でプロ入りすることができる。

例えばライオンズで言えば石井貴投手も社会人上がりの投手だったが、一般常識や礼儀をしっかりと弁えており、野球界を離れても十分通用する人物だった。筆者も幾度が石井貴コーチとお話をさせてもらったことがあるが、いつでも他者に対するリスペクトを忘れない本当に素晴らしい人柄だった。

サラリーマンは不況ともなると、いつクビを切られるのか分からない。いくら実力があったとしても、会社の業績が傾けば退職せざるを得なくなる。そのため生き方そのものが堅実になり、家庭を大切にする傾向が強くなるという。平井投手も今、家族のために将来の安定を優先させて球団と話し合いを続けているのだと思う。

平井投手はよく「子どもを転校させたくない」と口にする。ライオンズが好きというだけではなく、この点も平井投手が移籍を前提としていない非常に大きな要因だ。

そして平井投手は住宅についての話もしているのではないだろうか。引退後もずっと西武球団に携われるのであれば、平井投手も安心してベルーナドームに通える場所に家を購入することができる。これも重要な交渉事項になっているはずだ。

つまり平井投手にとって重要なのは、分かりやすくザックリと言うと、複数年契約よりも終身雇用契約なのだと思う。だがこれはもちろん、選手としてずっと契約して欲しいという意味ではなく、いつ怪我をして引退するか分からないプロ野球人生であっても、引退後の再就職に心配することなくプレーに集中したいという意味だ。実際、引退後の再就職で上手く行っていない元プロ野球選手は五万といる。

例えば引退後即コーチ就任の枠がなかったとしても、引退後は間違いなく西武球団に残れるという手形を平井投手は求めているのではないだろうか。子どもが一本立ちした後なら話は別だろうが、子どもが子どもであるうちは、平井投手は引退してもなお単身赴任は避けたいと考えているのだと思う。

お子さんのために転勤したくないと考える家族思いの平井克典投手

そしてこの交渉にはおそらく、将来的なトレード拒否権も含まれるのではないだろうか。例えば平井投手が納得すればトレードという状況になったとしても、移籍先は在京球団のみなど、そのようなこともこの交渉には含まれていることが考えられる。

もちろん西武球団が平井投手をトレードに出すことなど現段階では考えられないが、過去ライオンズは、沢村賞にも輝いている石井丈裕投手を34歳で日本ハムにトレードに出し、最優秀防御率を獲得している新谷博投手を36歳でやはり日本ハムに放出している。
※石井丈裕投手と新谷博投手は同学年

平井投手は来季は33歳を迎える。もちろんタフネスさはまだまだ球界随一と言えるが、平井投手自身、いつ体が思うように動かなくなるかという不安もあるはずだ。

石井投手と新谷投手に関しては、まだ東京ドーム時代の日本ハムへの移籍だったため、単身赴任は強いられなかった。だが秋山幸二選手の場合は32歳で埼玉県のライオンズから、福岡県のホークスにトレードされてしまった。

ただ秋山選手の場合はトレードに出されなかったとしても、翌シーズンでのFA移籍が濃厚だとされた中でのトレードだったため、石井投手・新谷投手とはやや事情は異なるだろう。しかもホークスは、秋山選手の地元熊本に最も近い球団だ。

プロ野球選手であっても、サラリーマンであっても、いつ転勤という状況になるかは分からない。そのため平井投手は今、引退後とトレードを含めた処遇などに関しても細かく話し合っていることが予想される。

会社に属しているサラリーマンの場合は辞令が出れば従って転勤するか、拒否して転職するしかない場合も多い。だがプロ野球選手は個人事業主であり、球団との雇用契約はない。そのためFA権取得時にしっかりと話し合えば、移籍などしなくてもきちんとした条件で再契約を結ぶことができる。

FAというと、ライオンズファンとしては戦々恐々という気持ちになってしまいがちだが、平井投手のようなFA権の使い方であれば、今後他の選手たちもどんどん権利を行使していくべきだと思う。だがそこで良い条件を勝ち取るためには、当然だが平井投手のように一流の数字を残せる選手になっていなければならない。

とにかくライオンズファンとしてはFA交渉中とは言え、平井投手が来季もライオンズのユニフォームを着て投げることが濃厚である事実に安堵の気持ちでいっぱいだ。

まだまだ若い投手が多いライオンズの中で平井投手や増田達至投手といったベテランは、優勝するためには間違いなく必要になってくる。

仮に今までのように一年間フルで戦えなくなったとしても、平井投手・増田投手は今後もライオンズには不可欠な存在だ。そのような選手たちがこうして続々ライオンズに留まってくれるようになったのもやはり、渡辺久信GMらが尽力してフロント・選手間の蟠りを払拭してくれたおかげだろう。平井投手も今、きっと渡辺GMを信頼して交渉に当たっているのだと思う。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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