2024年6月 7日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 8 | |
Tigers | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 0 | × | 5 | 8 | 0 |
継投/ ●與座海人〜 中村祐太〜 田村伊知郎〜 豆田泰志〜 上田大河
敗戦投手/與座海人 1勝1敗0S 3.38
盗塁/山野辺翔(1)
失策/山野辺翔(1)</a
これで10カード連続のカード初戦黒星となり、負け越しも19まで膨らんでしまった。神宮球場ではライオンズファンから罵声も浴びせられていたわけだが、果たして選手たちはそれを聞いてもまだ奮起することができないのだろうか。
チームとしては8安打(阪神と同数)打って四球も2つもらっているものの、挙げられた得点は僅かに1点のみだった。1点では投手陣が完封しなければ勝つことはできない。そして最近はクリーンナップを任されている蛭間拓哉選手も、今日の試合ではストレート系のボールを待ちながらストレートを振りに行って空振りをしてしまっている。しかも150km/hを超えるような豪速球ではなく、139km/hという、140km/hにさえ届かないストレートだった。
試合の前半では1〜2打席目は2打席連続でツーシームを打たされ、3打席目では空振り三振、そして4打席目では明らかにストレート系を狙って来ているとバッテリーに勘づかれている状況でスライダーで泳がされて投手ゴロと、今日の蛭間選手は凡打の内容が非常に悪かった。
仮にヒットを打てない試合であっても、凡打の質が良ければ次の試合に期待することもできる。しかし今日の試合のようにストレート系を狙いに行ってストレートやツーシームといったストレート系のボールを打ち損ね、そしてストレート系を待っていると読まれてスライダーに簡単に泳がされているようでは、本物のクリーンナップになることはできない。
もちろん百発百中で狙った球を仕留められる打者などどこにもいない。だが一流打者と呼ばれるためには、少なくとも30%以上の確率で狙い球を仕留めなければならない。しかし今日の蛭間選手が狙い球を仕留められたのは3回中0回で、しかもいずれも、非常に難しいコースというわけではなかった。
このようなバッティングを見せられると蛭間選手はまだまだ技術不足であると言え、師匠である栗山巧選手には遠く及ばない。蛭間選手が将来栗山選手の後継者となっていくためには、狙ったボールが来たら最低限30%の確率で仕留められる技術を身につける必要があるだろう。
そしてその栗山選手と中村剛也選手という23年目コンビだが、昨日の試合からそれぞれレフト、ファーストの守備に就いている。松井稼頭央前監督はこの二人を守備に就かせることはなかったが、渡辺久信監督代行は二人同時に守備に就かせた。
これは渡辺監督代行からのメッセージだとも受け取れる。「栗山・中村が守備に就いてこれだけ頑張っているのに、まだお前たちは闘志を見せて来ないのか?」、というメッセージだ。本来であればこの23年目コンビは代打の切り札としてベンチスタートとなっていることが望ましい。だが現状のライオンズはこの二人を守備に就かせ、しかも三番四番を打たせなければならないほど深刻な状態なのだ。
栗山選手に関しては今季不振で二軍落ちした際には引退説さえも囁かれていた。しかしそのままフェードアウトしてしまうのではなく、栗山選手はまたこうして一軍に戻り、しっかりとヒットを打ってチームに貢献している。中村選手の7本塁打もチームではダントツトップの数字だ。
本来であればフランチー・コルデロ選手がもう少しホームランを打っていなければならなかったわけだが、しかしそのコルデロ選手も60打席台ではさすがにまだ日本の野球に慣れることはできないと思う。一般的には外国人選手が日本の野球に慣れるためには200打席程度必要だと言われているため、それを踏まえるともう少し一軍で我慢して使っていきたいところではあった。
そして首脳陣としては、日本未経験のコルデロ選手とヘスス・アギラー選手なのだから、見極めるのであればやはり200打席を超えてから判断すべきではあった。渡辺監督代行はコルデロ選手を昇格させた後、意外と早く僅か6日間でまた二軍に戻してしまったわけだが、外国人選手の場合、二軍での経験はほとんど一軍での糧にはならない。
また、メジャー経験者であるコルデロ選手とアギラー選手は、基本的には200打席超えていない限りはメジャーのプライドを尊重するという意味で、いくら調子が上がらなくても二軍に落とすべきではないと思う。もちろんこの二人の人柄を考えれば二軍で腐ってしまうとは思わないが、しかしこの両外国人選手を生かす方法は他にもいくらでもあったはずだ。
さて、昨オフ髙橋光成投手は平良海馬投手、與座海人投手、渡邉勇太朗投手、羽田慎之介投手、そして平井克典投手と合同自主トレを行なっている。だが今季、この自主トレチームで満足のいく結果を出している投手は一人もいない。
この自主トレチームは筋トレをメインにして球速アップに主眼を置いたトレーニングをしていたわけだが、髙橋・平良両投手はそれぞれ怪我で離脱し、今日先発した與座海人投手は渡辺監督代行の言葉通り、抑えなければならない場面の1球で制球が非常に甘かった。
筆者は普段コーチングをしている投手たちには常々言っていることがある。それは「制球>変化>球速」という公式を決して崩すなということだ。制球とはもちろんコントロールのことで、変化とは変化球のことだけではなく、リズムの変化、テンポの変化、球速の変化などのこと。そして球速はそのままスピードのことだ。つまり一番重要なのは制球力で、次が変化、三番目が球速だということだ。この公式を忘れずにトレーニングを積めば、必ず勝てる投手になれる。
例えばメジャーのオリオールズには1950年代、スティーヴ・ダルコウスキー投手というピッチャーがいて、彼は非公式ながらも184km/hという球速を記録した、まさに人類最速ピッチャーだった。しかし如何せんコントロールが悪かったため、これだけの球速のボールを投げられたにもかかわらずメジャーでは鳴かず飛ばずだった。
髙橋光成投手の自主トレチームの面々は、筆者がクライアントである投手たちに常々言っている公式をほとんど無視した取り組み方をしていた。結果的にストレートのアヴェレージはもしかしたら1〜2km/hアップしたのかもしれない。しかし大きくしすぎた上半身の筋肉を上手く扱えなくなり怪我をしたり、制球力を低下させたりし、今季はチーム髙橋の6投手全員が一軍では低迷している(羽田投手はまだデビュー戦のみの登板)。
ライオンズの投手陣がエース対決でもしっかり勝てていた涌井秀章投手までの時代は、彼らはとにかく走っていた。目的を持った過酷なラントレメニューをこなしていくことにより安定感抜群の下半身(土台)を作り上げ、それにより上半身の動作も安定するようになり、制球良く速いボールを投げることができていた。あの細身の岸孝之投手でさえも力強く投げた時のボールは152km/h程度を計測していた。
そして髙橋投手と平良投手は近々ライオンズを去ってメジャー移籍をしていくわけだが、今季からメジャー移籍している山本由伸投手などは体重80kgであるにもかかわらず、ここまでメジャーで6勝2敗という好成績を残している。体重92kgの千賀滉大投手も昨季はメジャーで12勝7敗の好成績だ。
だが体重105kgの髙橋光成投手は今季ここまで、メジャーではなくパ・リーグで7戦5敗と1勝も挙げられていない。先週のピッチングを見ていても要所要所でコントロールが甘く、パワーヒッターではない打者にも簡単に外野までボールを運ばれていた。そしてアンダースローでそれほど球速が出ない與座投手の場合、なおさらコントロールを重視しなければならないわけだが、渡辺監督代行の言葉通り、勝負どころで甘く入るボールが多かった。
こうして考えると、筋トレに頼って野球をやるというのが如何に間違っているのかがよく分かる。と、このような話を筆者がコーチとして選手たちに話すと、必ずと言って良いほどダルビッシュ有投手や大谷翔平選手のことを話してくる選手がいる。しかしダルビッシュ投手と大谷選手は、非常にレベルの高い技術を習得している。これは並のプロ野球選手では真似できないレベルの高さだ。
その非常にレベルの高い技術がある上で彼らは、その技術によって出力したハイパフォーマンスに耐えられる体を作るために体を大きくしているのであり、決して筋トレありきの野球ではないのだ。髙橋投手も平良投手も、それに気付かない限りはメジャー移籍したとしてもメジャーで活躍することはできないだろう。そして未だにメジャーリーガーはパワーでプレーをしていると話す解説者も多いが、メジャーリーガーの技術レベルの高さは尋常ではない。
ライオンズは近年メジャーの良いところを取り入れようと努め、投手陣をシアトルにあるドライヴライン・ベースボールに派遣するなどしている。そこでは筋トレよりも、技術力を向上させるサポートが徹底して行われているわけだが、投手陣の技術レベルを上げるためには、ドライブラインからコーディネーターを1人呼び寄せるというのも一つの案だと思う(もちろん筋トレも重要なトレーニング)。
武内夏暉投手の体調不良もあり運良く巡って来た先発の機会を、残念ながら與座投手は生かすことはできなかった。そして髙橋投手もさすがに明日こそは初勝利を挙げなければならない。だがこれまでのように筋力に頼った野球をしているうちは、彼らが満足な成績を挙げられるようになる日は訪れないだろう。