2023年12月30日公開
西武球団は来季2024年から、打者の四球数に関する査定方法の見直しを行うようだ。これは今季岡田監督の提案で阪神タイガースが導入した査定方法として注目されていたわけだが、西武球団も阪神球団の良い面を見習って改善していくことになる。
四球は確かにヒット1本分の価値があると言っても過言ではない。だがこれまでの西武球団の査定では、四球数に対する評価はほとんど行われておらず、ヒットを打たなければ年俸が上がらないというシステムだった。これが来季から、極端な話をするとヒットを打てなくても四球を得られれば年俸が上がるというシステムに変わっていく。
ちなみに今季のライオンズの四球数はリーグ5位の387個だった。このうち約14%にあたる56個を、136試合に出場し571回打席に立った外崎修汰選手が記録し、約8%にあたる31個を、77試合に出場し191回打席に立った栗山巧選手が記録した。
チームトップの四球を得た外崎選手の場合、だいたい10打席に1個の割合で四球を選び、栗山選手の場合は6打席に1個四球を選んでいる。こうして比較をするだけでも、栗山巧選手の選球眼がいかに良く、いかに四球を大切にしているかがよく分かる。
そしてチーム2位の四球数となると48個のマキノン選手となるわけだが、しかしここで注目をしたいのは佐藤龍世選手の四球数だ。佐藤選手は今季91試合に出場して257回打席に立ち、チーム3位、リーグ18位の42四球を選んだ。割合としては栗山巧選手と同様、だいたい6打席に1個の割合で四球を選んでいる。
今季後半戦から、佐藤龍世選手はチームには決して欠かせない選手となった。二塁と三塁を守れるだけではなく、北海高校時代に捕手を務めた経験から、今季は緊急時の第三の捕手としても指名されていた。
その佐藤選手が今季飛躍するきっかけを掴んだのは、やはり選球眼が良くなった影響が大きいと言える。どれくらい良くなったかと言うと、昨季は37試合で106回打席に立ち、7個の四球を選んでいるのだが、割合としては15打席に1個となる。だが今季は6打席に1個の割合で四球を選べるようになった。
ボール球は見逃し、ストライクゾーンのボールをしっかりと狙っていけるようになったことで、佐藤選手の打率と出塁率は急上昇していくことになる。特に9月の働きは目覚ましく、月間打率.293、出塁率.465、四球23という結果だった。今季はプロ野球全体で3割打者が非常に少なかったことを考えると、月間打率とは言え、.293という数字は立派だったと思う。
選球眼が非常に良くなった佐藤竜泉選手に大きな期待を寄せたのだろう。渡辺久信GMは来季の佐藤選手の背番号を58から10に変更させた。背番号10と言えば、佐藤龍世選手が慕う森友哉捕手がかつて背負っていた番号だ。
だが佐藤選手にはやや気になる弱点がある。それは人を見る目だ。まず入団したての頃は付いていく相手を間違い、相内誠投手と行動を共にするようになり、その結果道交法違反という大問題を起こしてしまった。
そしてその後は自主トレを通して強い憧れを抱いていった森友哉捕手を慕っていくわけだが、森捕手はもちろん素晴らしい選手だが、一社会人としては決して褒められた存在ではない。
森捕手もライオンズ時代は、コロナ禍において知人女性を強引に自宅に招き、マッサージや家事をさせるという、相手女性に対し敬意のない行動をしたとし報道され、球団からも注意を受けている。山川穂高選手ほどではないが、女性を見下しているようなこのような行動は、決して許されるものではない。
佐藤選手の場合分かりやすく言うと、一般的にチャラチャラして見える相手に付いていってしまうことが弱点だと言える。ちなみに佐藤選手が山川・森両選手の自主トレに参加するようになったのは、山川選手と大学の先輩後輩の関係にあるためだった。
もちろん佐藤選手は道交法違反以降はまったく問題を起こしてはいない。しっかりと真面目に野球に打ち込んでいる。だからこそ素晴らしい選球眼を身につけられたわけなのだが、しかし12球団で最もコンプライアンスに厳しいライオンズでプレーをするならば、もう少し付いていく相手を選ぶ必要があるだろう。
例えば栗山巧選手、外崎修汰選手、源田壮亮主将、増田達至投手、平井克典投手らは野球選手として素晴らしいだけではなく、人としても尊敬される人格者たちだ。彼らは野球場を離れどの社会に入ったとしても十分通用するだろう。佐藤選手には彼らのような道を歩み、ベルーナドームを訪れるちびっ子ファンたちが安心して憧れられる選手になっていってもらいたい。
さて、その佐藤選手だが選球眼は非常に良くなったわけだが、得点圏打率に関しては非常に低い。以前はギャップヒッターとして打点王を目指したいとも話していた佐藤選手ではあるが、この得点圏打率の低さでは打点王を獲得するのは非常に難しい。
チームとしても得点圏打率が低い佐藤選手をクリーンナップに据えることはできない。それならば良くなった選球眼を生かし、ポイントゲッターではなくチャンスメーカーに徹することで佐藤選手はレギュラーの道を目指すことができるのではないだろうか。
佐藤選手はパンチ力はあるが長打力があるわけではない。そしてそれほど走れる選手でもないため、二番打者としてリードオフマンの盗塁をサポートしながら、打線をクリーンナップに繋げていく役割がフィットするのではないだろうか。
現在の二番打者はもちろん源田壮亮選手であるわけで、これは非常にマッチした打順だと思う。だが源田選手には一度くらいは打率3割を打たせてあげたい。そう考えると制約の多い二番を打ち続けるよりは、九番ショートに固定してあげることでよりバッティングに集中していくことができ、打率もキャリアハイを目指していけるようになるはずだ。
その二番に佐藤選手を据えて、制約の多い二番という打順で野球を学ばせ、選手としてより大きな成長を目指してもらいたい。そして佐藤選手が二番にいれば、リードオフマンが凡退したとしても佐藤選手が四球を選びチャンスメークし直すこともできる。
仮に得点圏まで走者が進んでいなかったとしても、走者がいる状況で来季の破壊力抜群のライオンズ打線を迎えることは、相手バッテリーも脅威に感じるはずだ。
ポジションとしては二番でも何番でも三塁手を目指すことになるわけだが、しかしこのポジション争いは来季は熾烈を極める。三塁のポジションを狙っているのは佐藤選手だけではなく、将来の四番候補である渡部健人選手、今オフトレードで獲得した元山飛優選手、そして陽川尚将選手だって三塁手としてこのまま枯れていくつもりなどないだろう。
つまり佐藤選手が試合に出るためには、彼らすべての三塁手候補を上回らなければならないということになる。そしてそれは佐藤選手自身も十分理解していることであり、試合に出るためには来季は今まで以上のレベルアップが必要だということも分かっているはずだ。
この熾烈な三塁手争いを制することができた時、佐藤選手は押しも押されぬレギュラーとなっているだろう。そしてバットを振らなかったとしてもチャンスメークすることができる栗山巧選手のように、ライオンズの得点力向上に大きく貢献できるサポート役として、絶対的地位を築き上げていくことになるはずだ。