ライオンズは3年連続でドラ1投手を人的補償で出すホークスとは好対照の良いチーム

2024年1月12日公開

3年連続でドラ1投手を人的補償で出し続けているホークス

甲斐野央投手

それにしてもライオンズには本当に素晴らしい投手が加入してくれることになった。人的補償での加入となるわけだが、甲斐野央投手の加入は人的補償というよりは、B〜CランクのFA補強と言っても過言ではない。

ところで敵ながらホークスは大丈夫なのだろうか?2021年は岩崎翔投手(中日・又吉克樹投手の人的補償)、2022年は田中正義投手(日本ハム・近藤健介選手の人的補償)、2023年は甲斐野央投手(西武・山川穂高選手の人的補償)と、3年連続でドラフト1位の投手を人的補償で流出させている。2012年の馬原孝浩投手を加えれば実に4人目だ。しかも田中投手と甲斐野投手に関してはそれぞれ6年目、5年目とまさにこれからと言った年齢で流出させている。

こんなことを続けていてはアマチュア球界も「ホークスにはうちの選手を出したくない」と考えるようになり、ドラフト戦略にも影響が出ると思われるのだが、しかしそこは金満球団のソフトバンクだ。誰かを失えばFAで補強すれば良い程度にしか考えていないのかもしれない。

ドラフト1位指名の投手たちのほとんどが一軍の戦力になっているライオンズとはまさに対照的だ。ホークスの孫正義オーナーはホークスを世界一の球団にしたいと考えている。それもあり恐らくはアメリカのマイナーリーグシステムのようなものを、自前の2〜4軍で再現しようとしているのだろう。だが和田毅投手や千賀滉大投手が苦言を呈しているように、残念ながらホークスのこのシステムはどうやら上手く機能していないようだ。

そうすることで能力があるのにチャンスをもらえない選手や、甲斐野投手のように一軍での実績があるのにプロテクト漏れによって移籍を余儀なくされる選手が増えている。3年連続でドラフト1位の投手を流出させている時点で、もはや育成のホークスとは呼べない状況とは言えないだろうか。

甲斐野投手にはそのようなチームを離れ、「ライオンズに来て本当によかった」と思ってもらいたい。そして名実ともに今後はライオンズの主戦リリーバーとして、ライオンズファンで埋まるベルーナドームを沸かせてもらいたい。

2023年は過去最高のパフォーマンスを見せつけた甲斐野央投手

ちなみに甲斐野投手は2020年に肘の手術を受け、この年は一軍登板は一度もなかった。だが手術後の2021年は22試合、2022年は27試合で防御率2.52、2023年は46試合で防御率2.53というように、パフォーマンスは65試合で26ホールドをマークしたルーキーイヤー2019年のものに近づいて来ている。いや、アップした球速や投球術を踏まえれば、ルーキーイヤー以上のパフォーマンスを見せたと言って間違いないだろう。

160km/hを何度もマークして46試合に投げられている時点で、もう2020年に手術をした肘の不安はほとんどなくなっているのだろう。しかも2023年に関してはWHIPも1.08と本当に素晴らしい数字を残しており、首脳陣も安心してマウンドに送り出せる安定感を見せられるようにもなった。

ルーキーイヤーは防御率4.14でWHIPが1.41だったことを考えると、2023年のパフォーマンスは圧倒的に良くなったと言える。そしてこの流れで2024年シーズンを迎えられれば、まさにライオンズの新守護神争いにも加わることができるパフォーマンスを見せることも可能なはずだ。

ちなみに今季のライオンズの守護神候補は増田達至投手を筆頭にし、アルバート・アブレイユ投手田村伊知郎投手豆田泰志投手上田大河投手と非常に豊かな顔ぶれとなっている。ここにさらに甲斐野投手が加わることになる。

さて、ソフトバンク球団は金満球団と言われているわけだが、2023年、甲斐野投手は46試合に投げて防御率2.53という好成績だったわけだが、年俸はわずか400万円上がったのみだった。確かに開幕から1ヵ月少々は二軍調整をしていたわけだが、昇格後は最後まで一軍に帯同して投げ続けた。これで400万円アップの4000万円というのは、評価としては十分なのだろうか?

もちろん試合状況も影響したのだろう。すべて勝ち試合で投げるのと、ビハインドでもマウンドに上がる投手とではそれなりに評価は変わってくる。だとしてももう少し上がっても良かったのではと、筆者は甲斐野投手の推定年俸を見てそう感じた。

だが2024年オフはベルーナドームで主戦投手として投げ続け、是非とも大幅昇給を勝ち取ってもらいたい。そして甲斐野投手には本当に「ライオンズに来て良かった」と思いながら、2024年シーズンを日本一で締め括ってもらいたい。

甲斐野央投手にとって心強い味方になるであろう西武のバイオメカニクスチーム

さて、188cmの長身オーバーハンドスローから投げ下ろされる160km/hの豪速球とフォークボールというピッチングを見ていると、筆者は森慎二投手を思い出してしまう。故森慎二投手も189cmという長身からストレートとフォークボールを投げ込み、セットアッパーや守護神、さらには先発としても大活躍された。甲斐野投手はその森慎二投手のイメージとよく被る。

もちろん甲斐野投手には森慎二投手のようなたてがみはないわけだが、しかしピッチングスタイルはよく似ている。だが森慎二投手の最速が154km/hだったのに対し、甲斐野投手は160km/hを投げ込む。ややシュート回転することもあるのだが、しかしそれが上手く右打者の懐に食い込んだり、左打者からは逃げていくため打者としては厄介な投手だと言える。

ライオンズは今、本当に素晴らしいチームになって来ている。天国で観戦している森慎二コーチもきっと喜んでいることだろう。育成に関してもしっかりと機能しており、ドラフトで指名して来た選手たちが続々と1軍での活躍を見せて来ている。甲斐野投手もライオンズの素晴らしいコーチ陣からアドバイスをもらえれば、160km/hという球速がさらに上がることだって考えられる。

特にライオンズはバイオメカニクスチームを充実させているため、甲斐野投手も今まで以上に体への負荷を減らしながらパフォーマンスを上げるフォームの微調整ができるようになるはずだ。

コラム:育成のライオンズで常勝時代を築き上げるために加わった二人のバイオメカニクスの専門家

球速がずば抜けて速い甲斐野投手の場合、心配されるのはやはり大谷翔平投手同様体への負荷の大きさだ。だがその負荷をバイオメカニクスチームの助言により軽減させていければ、今後は怪我の心配をするなく思う存分投げることができるだろう。ちなみにホークスの場合、バイオメカニクスチームの導入は2024年以降を予定している。

つまり最先端技術においては、西武球団はソフトバンク球団よりもかなり先を走っている状況にあるのだ。ソフトバンク球団は人数をたくさん集めてそこから金の卵を見つけていく、ある意味では質よりも量とも呼べる手法を取っているが、西武球団の場合は完全に量よりも質を重視している。だからこそ西武球団はドラフトで指名した選手をFA以外の理由で簡単に流出させることはしない。

だから今は西武球団は、かつてないほどライオンズでプレーする選手たちに愛される球団になって来ており、逆にホークスからはベテラン選手やOBたちから球団の姿勢や育成システムの意義を問う意見が続出している。金銭で作り上げた常勝球団にも、いよいよ綻びが見え始めているということなのだろうか。

それでもホークスは昨季は3位、ライオンズは5位という順位で昨秋まではまだホークスの方が上回っていた。だがこのオフの一連のすったもんだを見物していると、今季は間違いなくライオンズはホークスを上回るという確信を得られてくる。しかも3位と5位と言っても、勝ち星の差は僅かに6勝のみだった。つまりライオンズがホークスとの1カードで3連勝(ライオンズの勝ち星が3つ増え、ホークスの勝ち星が3つ減る)していれば勝ち星の数は並んでいたということになる。

そういう意味では3位と5位、AクラスとBクラスという差はあったものの、昨秋の時点でライオンズとホークスの差はそれほど大きくはなかったと言うことができる。それに加えてこのオフのソフトバンク球団の迷走振りを見せられると、今季はライオンズがホークスを下回るはずがないという確信が生まれてくるのだ。

そして甲斐野投手には弱体化しつつあるホークスから、これからまさに常勝時代を迎えようとしているライオンズに加わったことで、今後ホークスではそれほど味わえなくなるであろう優勝の味を、ベルーナドームでホークスを相手に胴上げ投手になることでぜひとも堪能してもらいたい。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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