和田毅投手は人的補償として西武移籍を打診された際に引退を決意していた!

2024年1月15日公開

西武入りに際し引退する意向を三笠GMに伝えていた和田毅投手

ガッツポーズを見せる和田毅投手

これは事実かどうかは分からない。だが一部メディアが報道しており、和田毅投手は人的補償としてライオンズへの移籍を打診された際、ホークス三笠GMに引退する旨を伝えていたようだ。

昨季はホークス投手陣2位となる勝ち星を挙げているローテーション投手であり、球界の現役レジェンドでもある和田毅投手にそんなふうに考えさせてしまう人的補償というシステムには、誰しも疑問を感じずにはいられない。

例えばこれがライオンズに来る直前の内海哲也投手のように、ローテーションを守ることができず、成績も下降の一途を辿っていた場合は話も変わってくるのかもしれない。

だが和田投手の場合は昨季、ほとんど年間を通してローテーションを守り8勝を挙げている。ホークス小久保新監督も和田投手に関しては今季もローテーション入りさせることを明言していた。それだけに和田投手も自分が人的補償に選ばれたことにショックを隠せなかったのだろう。

しかも和田投手のホークス愛は尋常ではなく、メジャーから日本に戻って来た際も迷わずにホークスに戻ることを選んだ。それだけにプロテクトを外されたということに大きなショックを受け、エースとして投げ続けて来たプライドも崩れ落ちてしまったはずだ。。

一部のホークスファンは、西武球団が和田投手を指名したこと自体を批判している。和田投手がリストから漏れていたとしても、指名しないのが不文律だという言い分だ。しかし西武球団はルールに則って和田投手を指名したため、和田投手を指名したことを批判される筋合いはない。

だが筆者も、和田投手を野球人として強く尊敬している一人だ。そのため今回ソフトバンク球団の不手際により引き起こされた出来事により、和田投手の心が引退に傾いてしまったということに強い悲しみを覚えている。

なぜならこれはライオンズで言えば、栗山巧選手中村剛也選手が人的補償として移籍してしまうこととまったく同じだからだ。そのため多くのホークスファンがソフトバンク球団フロントの対応を批判する気持ちはよく分かる。

※ NPBの現行ルールでは、人的補償による移籍を拒否した場合、本人の意思に関わらず資格停止処分となり、事実上引退同様の扱いとなります。そして自由契約や戦力外とは異なり任意引退の場合、退団後に自由に他球団と交渉することもできません。

すべての事情を知りながらもライオンズ柄のヘッドバンドで現れた男気溢れる甲斐野央投手

一方ライオンズに移籍してくることになった甲斐野央投手は、どうやらプロテクトリストに加えられていたようだ。これも一部メディアが報じているだけで、リストの内容は永遠に公開されることがないため真実かどうかは分からない。だが普通に考えれば、2023年のパフォーマンスを見れば甲斐野投手がプロテクトリストに入っていることの方が自然だ。

恐らく甲斐野投手も、三笠GMからはこのような事情により、プロテクトリストには入っていたが移籍を承認してくれという打診をされていたはずだ。この状況を把握しながらも嫌な顔一つせず、翌日にはライオン柄のヘッドバンドをして自主トレをする姿を見せているのだから、甲斐野投手の男気には本当に頭が下がるばかりだ。

そのような好青年であり、しかも160km/hを投げられる投手なのだから、ライオンズの栄光の背番号18を背負う資格は十分にあると言って良いだろう。甲斐野投手には今季本当にライオンズの守護神となり、今年はホークスを破ってリーグ優勝し、胴上げ投手としてそのマウンドに立っていてもらいたい。

和田毅投手のクラスではもはや金銭はモチベーションにはならない

さて、心配されるのはやはり和田投手のメンタル面やモチベーションだろう。和田投手は自身がプロテクトリスト入りしていなかったことを知り、自分はもう選手として必要とされていないと感じてしまったはずだ。

だが西武入りの報道が出た後も、和田投手は多くの選手やスタッフを引き連れて行っている自主トレの場で、決していつもと違う表情は見せなかったと言う。そのため共に自主トレをしていた選手は、仲の良いスポーツ紙の記者に連絡をして「和田投手の西武入りは本当ですか?」と確認していたほどだった。

若い投手の場合は、より多くの年俸を稼ぐというモチベーションによって自分を高めていくことができる。これをスポーツ心理学においては「社会的動機」の中に分類される「獲得動機」と呼ぶ。金メダルや賞状などではなく、この場合は金銭を得るために頑張るという種のモチベーションとなる。

だが和田投手クラスになってくると、もはや獲得動機だけでモチベーションを維持することはできなくなる。そもそも和田投手はすでに多くの金銭を稼いでおり、極端な話、これ以上稼がなかったとしても十分に生きていくことができる。

和田投手が今後高いモチベーションを維持して戦っていくためには、これも社会的動機の一つとして分類される「達成動機」というものが必要になってくる。達成動機とは、より卓越した高い水準で何かを達成することを追求していく際に生まれる外発的動機のことだ。つまりただ自分の勝ち星を増やすためではなく、物事をより高い水準で考え、チームの優勝を実現させるために自分のパフォーマンスを上げていくという追求行動のもとで、このモチベーションは高められていく。

だが今回のソフトバンク球団の不手際により、和田投手は「自分はもうホークスからは必要とされていない」と感じてしまったはずだ。いくらホークスの三笠GMが自主トレ先の長崎まで飛んで直接説明をしたとしても、一度和田投手の心に植え付けられてしまった負の感情は、そう簡単に拭い去ることはできないだろう。

こうなってくると今季、和田投手は高いモチベーションを維持してシーズンを戦い抜くことは難しくなるのではないだろうか?だがライオンズファンとしては思うのである。きっと盟友である松坂大輔氏が和田投手の気落ちをフォローしてくれるはずだ、と。

ライオンズの先発陣は充実しているように見えても、実は早急な底上げが必要

ソフトバンク球団としては恐らく、ライオンズの先発陣は充実しているため、43歳で年俸2億円の選手を欲しがるはずはないと踏んだのだろう。だがこれは大きな間違いだ。ライオンズは近い将来髙橋光成投手平良海馬投手がメジャー移籍することが濃厚となっている。そのため実はライオンズは、今早急に先発陣の底上げをしなければならない時期となっている。

また、仮に和田投手が戦力として大きな力になれなかったとしても、和田投手の経験値をライオンズの若手投手たち、特に和田投手の自主トレに帯同している隅田知一郎投手や、和田投手に憧れてプロ野球選手になった武内夏暉投手にとっては、和田投手のライオンズ入りは計り知れないほど大きなプラスとなる。そういう意味でもライオンズにも和田投手は本当に必要な存在だったのだ。

これがもしメジャーで時々見かけるような冷徹なGMだった場合、西武球団が和田投手を指名することにより、和田投手が移籍を前にして引退してしまうことになったとしても、少なくともホークスの戦力を削げるという意味で強行指名することもあったかもしれない。

しかし渡辺久信GMは球界切っての人情派GMだ。そのため和田投手が引退する決意をしたことを知ってまで強行指名することはしなかった。そしてそこで大人の対応を見せたことにより、渡辺GMはプロテクトリストに名前が入っていたとされている甲斐野央投手を獲得することができた。そういう意味では渡辺GMは上手く取引したなという印象だ。

繰り返し書くが、筆者はライオンズファンであっても和田毅投手に対してはリスペクトする気持ちでいっぱいだ。現にこのような話題になる以前、2022年9月の時点で筆者は、隅田知一郎投手が一皮剥けるためには和田毅投手を参考にすべしというコラムを書いている。
コラム:隅田知一郎投手を進化させるのは和田毅投手という生きたお手本

ライオンズファンであってもそれだけ和田投手のことをリスペクトしている筆者だからこそ、今回引き起こされたこの問題には本当に心を痛めている。和田投手には心からライオンズにやって来てもらいたかったが、同時にそれを理由に引退などして欲しくはない。

だがもし今年の秋、和田投手がFA宣言をして万が一でもライオンズ入りを表明したならば、筆者も含めた全ライオンズファンが心の底から和田投手の加入を歓迎するだろう。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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