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2024年2月10日公開

松井稼頭央監督がやりたい野球ができた時がライオンズが日本一を奪回する時

2024年は真価が問われる松井稼頭央監督と平石洋介ヘッドコーチ

松井稼頭央監督と東尾修氏

2024年シーズンは松井稼頭央監督と平石洋介ヘッドコーチにとっては文字通り真価を問われるシーズンとなる。万が一でも今季もライオンズが低迷することになれば、松井政権が短命で終わってしまうことにもなりかねない。

まず2023年のライオンズは打線に関してはほとんど年間を通して四番打者が不在で、軸のないままオーダーを組まなければならず、打線が上手く機能することは最後までなかった。だが今季は違う。打線の軸となるアギラー選手コルデロ選手が加入したことで、クリーンナップの破壊力は12球団屈指となった。

一方投手陣に関しては昨季も数字的には安定していた。だが懸念されるのは絶対的エースがいないという点だ。確かに髙橋光成投手は近年エースとしてライオンズを支えているわけだが、投手の主要タイトル争いに加わったことはほとんどない。安定して二桁勝利は挙げられるが、他球団のエースたちの数字と比べるとかなり見劣りしていたのが現実だ。

だがその髙橋投手もメジャー移籍を目指し、今季は圧倒的な数字を残すことを宣言している。普段物腰が柔らかい髙橋投手がそう言い切ったのだから、今季はきっとやってくれるのだろう。だがこれまでの髙橋投手の安定感に加え、タイトル争いへの貪欲さが加われば、髙橋投手が複数の主要タイトルを獲得したとしてもまったく驚きではない。逆を言えば今まで髙橋投手がタイトル争いに加わっていなかったことの方が驚きだ。

このように今季はエース髙橋投手もようやく数字に対する貪欲さを公言するようになり、打線の軸もしっかりと補強することができた。これにより打線に関しては、チャンスメーカーを務めるべき選手がポイントゲッターを務めなければならないという昨季のチグハグさが解消されることになり、本来のチャンスメーカーはチャンスメイクに徹することができるようになる。

2023年に関しては5位に終わっても明らかな戦力不足により、松井監督と平石コーチを責める声はほとんどなかったが、しかし今季はそうもいかない。戦力がしっかりと整えられた今、今季は日本一になる獅かない。

東尾野球を継承しようとしている松井稼頭央監督

投手陣は先発陣もブルペン陣も駒が揃い、打線も同様に補強が上手くいった。となるとあとは松井稼頭央監督と平石洋介ヘッドコーチの采配如何ということになる。上述の通り、昨季に関しては采配以前の問題でチームが上手く機能しないままシーズンを終えてしまった。しかし今季に関しては松井監督も采配を執るのが楽しみなのではないだろうか。

ちなみに采配を執る際には「戦略」と「戦術」を上手く使いこなし、それを選手たちに徹底させられるマネジメント能力が求められる。戦略とは昨季で言えば「走魂」がそれにあたり、走魂に対する戦術が盗塁やヒット&ランということになる。

今季のチームスローガンは「やる獅かない」というものになっているが、だからと言って走魂を捨てるわけではない。走魂を引き継ぎながらも優勝する獅かない、というのが今季のチームスローガンだ。

そして走魂と言って思い出されるのが、東尾修元監督が掲げた「Hit!Foot!Get!」というスローガンだ。これは「打って走って得点する」という非常に分かりやすいスローガンで、チームにもすぐに浸透していった。この「Hit!Foot!Get!」の申し子が、当時まだ駆け出しの選手だった松井稼頭央選手、大友進選手、高木大成選手、小関竜也選手であり、彼らに加え清水雅治選手、河田雄祐選手ら足のスペシャリストたちもベンチに控えていた。

東尾監督は監督就任にあたり、とにかく投手が嫌がる野球を徹底していくことを宣言した。そして東尾投手が現役時代最も嫌だったことが走者に塁上でうろちょろされることだったと言う。その経験も踏まえて東尾監督はオーダーに俊足カルテットを据え、とにかくマウンド上の相手投手の集中力を削ぐような戦略・戦術を敷いていった。

その結果就任3年目でリーグ優勝、そして翌年はリーグ二連覇を達成し、7年間の采配で一度もBクラスに落ちることなく戦い抜いた。そして松井監督は今、その東尾野球を継承しようとしている。

松井稼頭央監督がやりたい野球をできた時が西武が優勝する時

松井稼頭央監督は、どちらかと言えば辛抱強い監督だと思う。起用すると決めたら、しっかりと起用し続けられる忍耐力があると思う。だが昨季に関しては駒がなかなか揃わなかったこともあり、ほとんど猫の目打線のような状態になってしまった。

これがマリーンズを率いたヴァレンタイン監督のように、データによる根拠があって打線を日替わりにするのであれば話も変わってくる。しかし昨季の松井監督は足りない駒の中から、とにかく少しでも調子や相性が良い選手を打線に据えて、少しでも得点できる確率を上げていくしか方法がなかった。

四番打者にしても中村剛也選手は別として、本来は四番タイプではない打者たちに四番を任せる試合も多かった。もちろん渡部健人選手は将来の四番候補ではあるが、まだ相手チームが嫌がるレベルの打者とは言えない。

さて、走魂という意味ではやはり最大の懸念はリードオフマンということになるだろう。本来であれば韋駄天若林楽人選手が一番に固定されていくのが理想的ではあったが、膝を怪我してからはまだ本来のプレーはできずにいる。ただ今季は膝の金具も除去されたため、その除去手術後の不安さえなくなれば、若林選手が再びルーキーイヤーのような輝きを取り戻せる可能性は高いだろう。

そして若林選手ら若手選手が一番に入って来れなかったとしても、今季はトノゲンコンビに1・2番を任せることもできる。昨季に関しては外崎修汰選手はどうしてもポイントゲッター役を務めざるを得なかったのだが、今季はアギラー選手とコルデロ選手の存在があり、中村剛也選手もかなり元気そうに見える。

そのためそれぞれ20〜30盗塁を計算できる外崎選手と源田壮亮主将が1・2番コンビを組めば、相手チームからすると外崎選手がクリーンナップを打つ以上に嫌なはずだ。そしてトノゲンコンビがかつての松井・大友コンビのように塁上を引っ掻き回すようになれば、ようやく松井稼頭央監督が掲げた走魂も成就されることになる。

そしてさらにはかつて高木大成選手が3番を打っていたように、やはり走ることができる蛭間拓哉選手が3番を打つようになれば、その走魂もさらに強力なものになっていく。また、かつて小関選手が9番を打ったように長谷川信哉選手西川愛也選手岸潤一郎選手、若林選手ら走れる選手が9番に入るようになれば、それこそ「Hit!Foot!Get!」の再現となっていく。

東尾監督時代のクリーンナップは高木大成選手、鈴木健選手、マルちゃんことドミンゴ・マルチネス選手だったわけだが、それほど長打が多いわけではない高木選手と鈴木選手、そして守備に難があったマルチネス選手と比べると、守備力も高く評価されているアギラー選手、そして破壊力抜群のコルデロ選手が形成するクリーンナップは、東尾監督時代のクリーンナップ以上に相手チームにとっては脅威となるはずだ。

とにかくこれで役者はほとんど揃った。あとは今季日本一になるためには、松井監督と平石ヘッドコーチが如何に上手く選手を起用し、戦術を敷いていけるかが鍵となる。だが昨年はやりたくてもできない戦術、戦い方が数え切れないほどあり、そのフラストレーションとアイデアもかなり溜まっていたはずだ。

今季は、昨季はできなかった松井稼頭央監督が本当にやりたかった戦い方を開幕から日本シリーズまで貫いてもらいたい。そしてそれが貫かれた時、ライオンズは2008年以来の日本一を達成することになるはずだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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