2024年3月 3日公開
埼玉西武ライオンズvs千葉ロッテマリーンズ練習試合
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Marines | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | 6 | 8 | 0 |
Lions | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 7 | 1 |
この試合先発マウンドに登ったのは、今季から先発調整をすることになったボー・タカハシ投手だった。結果的には3イニングスを投げて無失点という好投を披露し、開幕に向けて期待を持たせてくれるアピールをしてくれた。
ボー・タカハシ投手のピッチングを見ていると、まったく慌てる素振りを見せることがなかった。日本での先発としてはまだ慣れない部分もあるはずだが、もう何年も先発として投げ続けているような雰囲気を醸し出している。本来であれば主力投手たちがポスティング移籍した後を見据えての先発転向だったと思うのだが、これだけ落ち着いたピッチングを見せてくれると、今季からでも先発ローテーション入りを期待して良いのかもしれない。
この試合の3イニングスを見ていると、まるでロングリリーフをしているようにも見えた。昨季のフォームと比較をすると、やや動きを減らしたような部分もあり、ボー・タカハシ投手が先発として長いイニングを投げることを前提に工夫をしていることが見て取れた。
確かにこの試合では3イニングスで素晴らしいピッチングを見せてくれたわけだが、課題はやはりスタミナだと言えるだろう。今後もオープン戦で投げていくことになると思うのだが、投げるイニング数がより長くなり、2巡目3巡目の打線を迎えた時にどうなるかが今後のチェックポイントになってくると思う。
流石にまだ6回7回を投げ切れるスタミナや投球術は十分ではないと思う。このあたりを焦らずに磨いていくことができれば、ボー・タカハシ投手は今季中にもローテーションに食い込んでくる可能性があるだろう。
そして二番手としてマウンドに登ったのは松本航投手だった。フランチー・コルデロ選手のエラーもあって少しバタついた状況にはなってしまったが、しかしそのエラーで松本投手の安定感が損なわれることはなかった。
今季ここまでの松本投手のピッチングを見ていると、例年以上に安定感があるように見える。この日のピッチングにしても、自分のボールに自信を持っているからこそ打者へのピッチングに集中できているようにも見えた。
状態が良くない時の松本投手は、良いボールを投げようとする意識が強くなるあまり、打者との勝負に集中し切れていないように見えることも多かった。だが今季はここまで非常に良いボールを投げ続けており、この状態であれば間違いなく開幕ローテーションに加わってくるはずだ。
ここ2年間は期待通りの活躍をできていなかったため、今季に関しては開幕ローテーション入りは当落選上からのキャンプインだったと言えた。松本投手もそれをしっかりと理解しているかのように、危機感を上手くモチベーションに変えられているようだった。そのメンタル面での成長の影響なのか、今季ここまでのマウンド上の松本投手は、何事にも動じないような姿を見せ続けている。そしてその姿からは風格さえ漂わせている。
松本投手は中学時代、同郷同学年の甲斐野央投手にピッチャーを引退させそうになったほどの好投手だった。もちろんそれからもう10年以上の年月が経っているわけだが、今季その甲斐野投手がチームメイトになったことで、甲斐野投手には決して負けたくないという気持ちも強いのかもしれない。
直近の2年間では勝ち星を減らしてしまっている松本投手だが、今季はどうやら大きな期待を寄せても良さそうだ。もともとは二桁勝利を挙げられるレベルにあるピッチャーだけに、今季のように自らのボールに自信を持って投げ続ければ、二桁勝利のみならず、最多勝争いにも加わっていくことができるはずだ。そして松本投手にもそろそろタイトルを獲らせてあげたい願っている筆者のようなライオンズファンも多いと思う。
そしてこの試合、ライオンズのユニフォームを着て初の対外試合に登板したのが甲斐野投手だった。千葉ロッテマリーンズの先発は佐々木朗希投手で、この試合すでに157km/hという球速を計測していたわけだが、甲斐野投手はその上を行く158km/hを計測した。
オープン戦もようやく始まってくるというこの時期にこれだけのスピードが出せるというのは、甲斐野投手の調整がそれだけ上手くいっていたという証なのだろう。
ドタバタの移籍劇を経ながらも速攻でチームに馴染み、オフの調整にも失敗することなく、甲斐野投手はここまで本当に順調に来ていると思う。守護神の座となるとまだまだ分からない部分もあるわけだが、しかし守護神候補が少ないチームであれば、間違いなく守護神を任されるであろうパフォーマンスを発揮してくれている。
そしてマウンド上で投げている姿を見ると、もう何年も前からライオンズのユニフォームを着て投げているような雰囲気さえ醸し出している。甲斐野投手の獲得は本当に大成功だった。昨季FAでライオンズを去って行った打者と比較をしても、甲斐野投手がライオンズにもたらしてくれるであろう好影響はずっと大きくなるはずだ。
FA移籍して行った選手は素行の悪さも有名で、この選手の対応を快く思わないメディア関係者も非常に多かった。筆者の知人である記者もやはり同様のことを口にしていた。その反面甲斐野投手の対応は素晴らしく、キャンプ中にも長時間ファンのサイン攻めに応える姿も見せている。甲斐野投手は仮に守護神の座に収まらなかったとしても、間違いなく勝ちパターンでの主戦リリーバーになっていくはずだ。そしてこの人柄に好成績も加わっていけば、今季はもしかしたらライオンズの中でもトップクラスの人気選手となるのではないだろうか。
このように甲斐野投手は実力面だけではなく、営業面でもライオンズに絶大なプラスをもたらしてくれそうだ。そのためにもこれからも怪我することなく、甲斐野投手には日本シリーズの最終戦までブルペンに居続けてもらいたい。