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2024年3月29日公開

【ゲームレビュー】2024年03月29日 東北楽天 vs 埼玉西武 1回戦

埼玉西武ライオンズ vs 東北楽天ゴールデンイーグルス/1回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 8 0
Eagles 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0

【継投】○今井達也H甲斐野央Sアブレイユ - 古賀悠斗
勝利投手/今井達也 1勝0敗 0.00
セーブ/アブレイユ0勝0敗1S 0.00
盗塁/金子侑司選手(1)

楽天キラー振りを遺憾なく発揮してくれた今井達也投手

2024年ライオンズの開幕戦は杜の都でのイーグルス戦だった。その先発マウンドに登ったのは8年目にして初の開幕投手となった今井達也投手で、イーグルスの先発は2020年のドラフトで西武球団も1位指名していた早川投手だった。両投手とも非常に良い立ち上がりを見せ、まさに開幕戦に相応しい緊張感溢れるシーズンのスタートとなった。

今井投手に関しては抜群の球威を見せながらも、非常に変化球の割合が高い配球となっていた。中でもこの試合ではカーブを有効的に使う場面が多く、カウントを稼いだり、空振りを取ったり、勝負球に使ったりとピッチングの軸になっているようだった。ストレートの球威が凄まじいのに力で押すばかりではなく、変化球を効果的に使っている姿は、まさに今井投手が師事するダルビッシュ有投手のようだった。

マウンドで投げている姿にも余裕が感じられた。まるで自分が投げるボールに絶対的な自信を持っているかのようだった。決して力任せに投げているわけではないのだが、「打てるもんなら打ってみろ」という気迫がひしひしと伝わってきた。これだけのピッチングを見せられるのだから、今井投手が開幕投手に選ばれたのは当然の結果だと言える。

それにしても今井投手は寒くなかったのだろうか。仙台の夜はネックウォーマーやグラウンドコートを着なければまだまだかなり寒い。しかし今井投手は初回から半袖のアンダーシャツで投げていた。かつてライオンズでもプレーし、昨季まではイーグルスの監督も務めていた石井一久投手も半袖にこだわる投手だったが、仙台の寒空の下半袖で投げ続ける今井投手の姿にはやはり驚かされる。

そして今井投手はこの日も楽天キラー振りを遺憾なく発揮してくれた。7回で116球を投げて11奪三振、被安打2、無失点という完璧な内容だった。この日の今井投手のピッチングは、ライオンズに久しぶりに絶対的エースが誕生することを予感させてくれた。

7回までは早川投手に完璧に抑え込まれてしまった西武打線

一方打線の方は、イーグルスの早川投手にかなり翻弄されていた。チェンジアップで上手く泳がされたり、変化球を打たされたり、各打者がなかなか思うようなスウィングをさせてもらえなかった。その結果たまにヒットが出てもそこから繋げることがまったくできず、両チーム共スコアボードには0が並び続けた。

しかしそんな中でも光明と言えたのは、各打者のスウィングは決して消極的にはなっておらず、しっかりと振り抜くスウィングが多かったという点だ。0行進が続いている中でも、外野に良い当たりが飛ぶことは多かった。結果的には早川投手の制球の妙でアウトにはなっていたが、もし早川投手の制球が少しずつでも甘くなっていたら、ライオンズはもっと早くに先制点を挙げていただろう。そう思えるほど、各打者のスウィングは良いものだった。

ただしフランチー・コルデロ選手に限っては早川投手のボールにはまったく合っておらず、今日の試合に関しては打てる気配がほとんど感じられなかった。だがアメリカにはここまで緩急を上手く使ってくる投手はそれほど多くはいないため、やはりコルデロ選手に関しては日本人投手の配球に慣れるまでは気長に待つ必要があるのだろう。

一方のヘスス・アギラー選手はこの日の試合ではボールをよく見る姿が印象的だった。1打席目にはしっかりと四球を選んでいるし、レフトフライに倒れた2打席目も甘いボールが来るまで待つという姿勢を貫いていた。その結果2打席目に関しては簡単に2ストライクと追い込まれてしまったわけだが、しかしボールをよく見極めに行く姿は好感的だった。

この試合だけを見れば両チーム共に貧打という印象を持ってしまいがちだが、しかし今井投手だけではなく、イーグルスの早川投手も非常に素晴らしいピッチングを見せていた。その結果ライオンズ打線は甘いコースを見逃して、難しいコースに手を出さざるを得ないという状況が増え、その結果ヒットを続けることができなかった。

これだけ素晴らしいピッチングを見せていた早川投手の攻略法は、やはりシンプルにファーストストライクを振り抜いていくことに尽きるのではないだろうか。全体的に見ると、この試合では早いカウントでど真ん中付近のボールを見逃す打者が多かった。金子侑司選手にしろ、アギラー選手にしろそうだった。だがその甘く入ってきたファーストストライクをもっと積極的に振っていれば、早川投手のピッチングももう少し苦しくなっていたのかもしれない。

ようやく試合が動き始めたのは8回表になってから

決勝打を放った外崎修汰選手

そしてようやく試合が動いたのは8回表になってからだった。実は7回のマウンドを降りた時点で、今井投手はもう降板姿勢に入っていた。そのためもし8回に点を取れていなければ、7回無失点、被安打2、奪三振11、116球の今井投手を見殺しにしてしまうところだった。

だが一死から一番金子侑司選手がセンター前ヒットで出塁し、若林楽人選手が三振に倒れた後金子選手が盗塁を決め、二死二塁というチャンスを作った。そして副主将である外崎修汰選手が左中間を破る三塁打を放ちようやく先制点を挙げることができた。その直後、三塁ベース上で外崎選手が見せたガッツポーズはすべてのライオンズファンに希望を与えてくれた。

今井投手が降板した後の8回には甲斐野央投手がマウンドに登った。オープン戦の最終戦では逆転を喫してしまった甲斐野投手だったが、この日の甲斐野投手の表情はオープン戦までのものとはまったくの別物だった。口を真一文字に結び、鬼気迫る迫力があった。ヒット1本は許したものの、しかし甲斐野投手の足元を抜けただけのゴロで、打球としては完全に打ち取った当たりだった。そしてそのあとはフルカウントから四球を出して二死二塁一塁というピンチを作ってしまったわけだが、最後は空振り三振に仕留め、緊張感溢れたライオンズでのデビュー戦を何とか無失点で切り抜けてくれた。

そして最終回を締めてくれたのは新外国人投手のアルバート・アブレイユ投手だった。先頭打者をヒットで出してしまったものの、その後は危なげなくアウトを3つ重ね、日本初セーブをマークした。これによりライオンズは初戦から勝利の方程式の形を見せることができ、今季の戦い方をしっかりと示すことができた。

一年間のたかが1試合と呼ばれることもある開幕戦ではあるが、しかしその1試合に良い形で勝てるか否かは、やはり一年間の戦いを占うにあたってはとても重要な要素となってくる。その1試合をライオンズは今日、今井投手のパーフェクトピッチでモノにすることができた。そしてこの良い流れのまま打線をさらに活発化させ、明日は隅田知一郎投手に侍ジャパンで見せたような快投を披露してもらいたい!

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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