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2024年3月30日公開

【ゲームレビュー】2024年03月30日 東北楽天 vs 埼玉西武 2回戦

埼玉西武ライオンズ vs 東北楽天ゴールデンイーグルス/2回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 1 0 3 1 0 0 0 1 2 8 15 1
Eagles 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 8 0

継投/隅田知一郎佐藤隼輔〜本田圭佑〜甲斐野央豆田泰志
勝利投手/隅田知一郎 1勝0敗 3.18
本塁打/古賀悠斗(1)
盗塁/高松渡(1)

不安定だった立ち上がりを3回以降はしっかりと修正した隅田知一郎投手

2024年2戦目となった仙台でのイーグルス戦、先発マウンドを任されたのは侍ジャパンでも活躍した隅田知一郎投手だった。だが昨日の今井達也投手の好投に触発されすぎたのか、立ち上がりはやや力みが見られ、隅田投手らしいピッチングにはならなかった。

初回2連打と四球で作ってしまった満塁のピンチは何とか三振で切り抜けられたが、2回には再び3安打を集められ2点を失い、初回にもらった先制点を簡単に吐き出してしまった。ただし確かに不運があったとも言える。2番の阿部選手に打たれたレフト前ヒットに関しては、レフトライナーがフランチー・コルデロ選手のグラブを弾いてのものだった。もし守備レベルが並以上の選手がレフトを守っていたとしたら、この場面はレフトライナーで終わり、1失点で済んでいたと思う。

だがコルデロ選手にとっては難しい打球だったのだろう。外野手にとって最も難しいのは自らの正面に飛んでくる打球で、それがライナーであればフライよりもさらに難しくなる。グラブから溢れてしまった打球は真正面からというわけではなかったのだが、コルデロ選手にとっては難しく見えたライナーだったのだと思う。だが守備に難のあるコルデロ選手の場合、この場面は後逸しなかっただけでも首脳陣としては御の字だったと言えるのではないだろうか。

さて、話を隅田投手に戻すと、チームが逆転してくれた3回以降はやや落ち着きを取り戻したようで、3回・4回はしっかりと三者凡退に抑えて見せた。昨季までの隅田投手なら、もしかしたらあのままズルズルと行ってしまっていたかもしれない。しかし侍ジャパンで自信を深めてきた今季は、悪い流れを自ら断ち切ることのできる能力が備わったようだった。その結果5回2/3を2失点で投げ抜き、あと一歩でQSという好投を見せることができた。

今日の試合に関しては立ち上がりは確かに不安定なものだったが、しかしその後の立ち直り方を見ると、今年の隅田投手は二桁勝利にとどまらない活躍を見せてくれるであろう予感を与えてくれた。今日の3回以降のピッチングを見る限り、今季の隅田投手には今まで以上の期待を寄せて良いのではないだろうか。

昨日に続き今日も良い仕事ぶりを見せられたブランドン選手

そして打つ方では昨日はスタメンとして2安打を放ったブランドン選手が、今日は2四球を選ぶ働きを見せている。経験が浅い選手は調子が良い時はヒットを打ちたいという気持ちが強くなりすぎて、ボール球にも手を出してしまうことで調子を落としてしまうこともある。だがもはや苦労人とも呼べるブランドン選手の場合、昨日の2安打に浮かれることはなかった。

ブランドン選手の今日の2四球は2安打にも値する2四球だったと思うし、5打席目にはきっちりヒットも放っており、それに対する首脳陣の評価は非常に高いはずだ。このようにしっかりと四球を選ぶ姿を見せておけば、仮に3連戦ノーヒットに終わることがあったとしても、そう簡単にスタメンを外されることはなくなるだろう。

逆にやや心配なのが若林楽人選手だ。オープン戦はやや上り調子で終えられたわけだが、開幕してからの2試合はなかなか良いバッティングを見せられずにいる。ただし若林選手はかつての片岡易之選手に似たタイプの打者であるため、ハマり出すと面白いようにチームの得点力を上げていくことが考えられる。

松井稼頭央監督は片岡選手と共にプレーをした経験はないわけだが、かつての赤ゴジラこと嶋重宣コーチは2年間一緒にプレーしており、高山久コーチに関しては同学年で、片岡選手の全盛期のプレーを熟知している。そのため高山コーチの頭の中にはパンチ力も秘めるかつての片岡選手のような活躍を若林選手には期待していると思うし、嶋コーチとしてもルーキーイヤーの若林選手の輝きを取り戻させたいという思いがあるはずだ。

そして何よりも若林選手の場合は抜群の守備力があるため、仮にヒットを打てない試合が続いたとしても、若林選手の守備力によって失点を防ぐことができれば、ノーヒットという結果は十分に相殺されることになるだろう。しかしいずれにせよライオンズファンとしては、今日のように「ブランドン・若林」という並びのオーダーを見ると感慨深いものがある。この盟友ふたりには、是非とも今後のライオンズを背負っていってもらいたい。

上昇気流に乗り始めたアギラー選手とコルデロ選手

一方開幕戦ではそれぞれノーヒットだったヘスス・アギラー選手とコルデロ選手だったが、今日の試合ではそれぞれに日本初ヒットが飛び出した。コルデロ選手に関しては2安打1四球という内容で、2安打したあとはボールの見極めが良くなったようにも見えた。

オープン戦のバッティングを見ていて、イーグルス側もコルデロ選手は縦の変化球に弱いというデータを掴んだはずだ。この試合でも確かに縦の変化球に対する見極めは、他の選手よりはまだ対応できていないという印象だった。しかし2安打放った後の4打席目では縦に大きく割れるカーブをしっかりと見極めて四球を選んでいる。まだまだ完全な上り調子とまでは言えないと思うのだが、しかしこのようにしっかりとボールを見極める姿勢を続けていけば、ホームランを量産し出す日もそう遠くはないだろう。

そしてそのコルデロ選手に好影響を与えているのが不動の四番アギラー選手だ。アギラー選手はオープン戦の段階からしっかりとボールを見極めることができていた。その結果予想以上に早く日本人投手の攻めに対応していき、オープン戦でもしっかりと結果を残した。

コルデロ選手も、恐らくはそのアギラー選手の助言によりボールの見極めを重視するようになったのではないだろうか。オープン戦までのコルデロ選手のボールの見方と比較すると、今日の試合での縦の変化球の見極めは落ち着きがあって、バッテリーからすると簡単には空振りを奪えないという雰囲気があったはずだ。

これからの成長が目を見張るものになりそうな古賀悠斗捕手

古賀悠斗捕手

そして最後にもう一人、古賀悠斗捕手についても書いておかなければならない。昨日の試合も開幕スタメンとしてマスクを被り1安打、今日の試合でも3安打猛打賞で1本塁打という大活躍を見せている。打順は8番にとどまっているが、しかしここまでは「打てる捕手」の姿を遺憾なく発揮してくれている。

さらには打つだけではなく、昨日は今井投手、今日は隅田投手を非常に巧くリードしていた。古賀捕手も昨年から侍ジャパンに選ばれ始めた若獅子であるわけだが、隅田投手同様に日本代表のユニフォームを纏うことによって自信を深めてきたのだろう。リードしている姿にも風格が出てきているし、投手としても投げやすいという印象を持っているのではないだろうか。

オフシーズンには柘植世那捕手との正捕手争いになるだろうとも考えられていたが、開幕してみると正捕手の座はほとんど古賀捕手のものとなったようだ。ブロッキングに関してもほとんど前にボールを転がしてくれるため、投手も思い切って低めに変化球を投げることができる。この日の試合でも隅田投手はワンバウンドになることを恐れることなく低めにチェンジアップを投げ続けていた。きっとキャンプでの野田浩輔バッテリーコーチの特訓が生きてきているのだろう。

強いチームには得てして名捕手の存在がある。残念ながら森友哉捕手は名捕手と呼べる域の捕手ではなかった。バッティングに関してはもちろん素晴らしかったが、チームを勝利に導くことのできる捕手とは言えなかった。しかし侍ジャパンで自信を深めてきた古賀捕手は、ここまでしっかりとチームを勝たせることができている。

高い盗塁阻止率を誇り、安定したブロッキングを見せ、さらにこれだけ打ってくれるともはや正捕手と呼んでしまっても差し支えないのではないだろうか。野田コーチとしてもかつての自らの背番号を背負う古賀捕手の育成には一入の思いもあるのかもしれない。まだまだ完成された捕手というわけではない分、古賀捕手のこれからの成長は目を見張るものになっていきそうだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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