2024年5月12日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Eagles | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 1 |
Lions | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 | × | 6 | 12 | 0 |
継投/ ○今井達也〜 松本航〜 佐藤隼輔
勝利投手/今井達也 3勝0敗0S 1.47
本塁打/長谷川信哉(1)
ライオンズは今日、12安打を放って6点を奪い難敵岸孝之投手の攻略に成功した。だが今日の打線に関しては過信すべきではないと思う。立ち上がりから岸投手のピッチングをずっと見ていたが、今日の岸投手のボールには伸びが感じられなかった。
確かに岸投手も今季は40歳になるシーズンで、ライオンズ時代のような球質の良さは影を潜めている。そしてライオンズ時代には毎年のように二桁勝利を挙げていたわけだが、最近9年間で二桁勝利を挙げたのは一度だけで、コントロールを間違えてしまうと失点が重なるケースも増えている。
そして今日の岸投手のボールは、ピンチで力を入れて投げた時でもストレートの速度は141〜142km/h程度で、しっかりと緩いボールを見せた後に低めいっぱいにストレートを投げても、そのストレートを簡単に外野まで運ばれてしまうケースが多かった。
本調子ではない投手をしっかり攻略できた、という意味ではもちろん打線を評価すべきだと思うが、しかし今日6点取れたからといって、ライオンズ打線が蘇ったと見るのは早計と言うべきかもしれない。エース級とまでは言わなくても、二番手三番手レベルの先発投手からしっかり点を取れるようになってこそ、打線は上向きになって来たと見るべきだろう。
それにしても首脳陣は打線には本当に苦労している印象だ。つい先日は四番に入っていた佐藤龍世選手が今日は八番に入った。調子が悪いから単純に打順を下ろしただけなのか、それとも首脳陣は佐藤龍世選手に対して明確に求める何かがないのか、やはり起用法が場当たり的になっている点は気になるところだ。
ライオンズはここまで、ヒットを打った次の試合で打順を降格させられたり、1試合良かったからと言ってすぐに上位を打たせてしまうことで、選手たちが役割を徹底し切れない状況が開幕からずっと続いている。もちろん打線が機能していないから動かさざるを得ないと言われればそれまでなのだが、やはり役割に関しては、投手の分業制同様に打者陣にも明確な指示を中長期的に与えるべきではないだろうか。
さて、先発マウンドに登った今井達也投手に関しては流石だとしか言えない。開幕時と比較をすると不調というわけではないが、絶好調というわけでもない現状であっても7回2失点とHQSをクリアして来た。
そしてイーグルス戦ということに関して言えば、今井投手は2021年の10月から負けなしの12連勝となっている。楽天キラー振りは今なお健在で、今井投手自身もイーグルス戦に関しては自信を持って投げられているのではないだろうか。そのためか、先制点を奪われてもピッチングが乱れることなく、終始落ち着いて投げているように見えた。
もし好調時の今井投手であれば奪三振数も二桁に乗り、イーグルスも得点を挙げることは難しかっただろう。今季はスケジュール的にイーグルス戦が週末に来ることが多く、今井投手の開幕投手の役目もそれを踏まえてのものだったわけだが、ここまではその楽天対策が機能していると言える。
そして配球に関しては今井投手自身も何か思うところがあったようだ。今季開幕直後あたりに、筆者は今井投手のピッチングを見ていて明らかにカーブ・スライダー系統のボールを狙われている、と書いたわけだが、今日の試合後、今井投手も同様のコメントを残している。
今日の試合でも先制点を奪われたイニングに打たれた2本の長打は、いずれも左打者の外からストライクゾーンに入ってくるスライダー、もしくはカーブだった。もちろんコースがやや甘かったということもあったわけだが、しかし見ているとイーグルスの打者たちも変化球を待っているタイミングで振っているように見えたため、やはりある程度配球のパターンは読まれているのだろう。
そういう意味でも筆者は一度古賀捕手を外すべきだとここ最近は書いて来たわけだが、今井投手自身もスライダーを上手く狙われていると感じており、それを防ぐためにも配球を見直さなければならないという趣旨のコメントをしていた。だがチームで唯一の3割打者をオーダーから外すのも、なかなか難しいことなのかもしれない。
さて、ライオンズでは昨日から松本航投手の起用法が先発からセットアッパーへと変わった。これは豊田清投手コーチが直々に松本投手を説得してのことだったらしいが、甲斐野央投手を右肘の違和感で欠きブルペン陣の防御率も5点台になって来た今、そのテコ入れとして松本投手を8回に持って来たという形だ。
松本投手と甲斐野投手は中学時代の県代表でのチームメイトでもあり、その甲斐野投手のカバーを松本投手がしていくというのも、何か奇妙な縁を感じさせる。ただ、それほど球種が多くはない松本投手の場合、リリーバーという役割は決して意外性のあるコンバートではなかったと思う。
とは言え今季は打たせて取るピッチングが非常に上手くいっており、100球以下で完封する「マダックス」を狙える状態にもあった。それだけに今季は3年振りの二桁勝利も期待されていたわけだが、しかし先発投手陣の駒は揃っており、逆にブルペン陣が不安定となって来ている今、松本投手はブルペンの救世主ともなり得るかもしれない。
松本投手クラスであれば、かつての豊田清投手のように守護神さえも努められるだろうが、しかし現在はアルバート・アブレイユ投手という絶対的守護神が抜群の安定感で投げてくれているため、甲斐野投手が抜けた8回のピースに収まる形となった。
これでライオンズの8回・9回はしっかりと安定したことになり、7回に関しても佐藤隼輔投手が今季も安定したピッチングを続けているため、僅差でのリードの場合は基本形としては佐藤投手〜松本投手〜アブレイユ投手という並びになっていくのではないだろうか。
さて、昨日の試合では後藤高志オーナーが直々にチームに檄を飛ばしてくれた。ライオンズファンの間では松井稼頭央監督解任論も声高に叫ばれているわけだが、「松井監督には思う存分やってもらいたい」とオーナー自ら公言したことにより、その雑音もシャットアウトされたことになる。
松井監督もこのチーム状況では「更迭もありうる」と戦々恐々しながらの采配になってしまう可能性もあった。だがそれを先回りし、更迭はないからやりたい野球をしっかりやって欲しい、というメッセージを伝えることで後藤オーナーはまず、松井監督の目を覚まさせようとした。
さすがは堤義明オーナー後、ライオンズを守り続けて来てくれたオーナーだ。他球団のオーナーのように選手の起用法などに口を出すことは一切せず、チームがピンチの時にこうして効果的な手を上手く打ってくれる。これも「物言う株主」たちからライオンズを守り続けた後藤オーナーだからこそ打てる手なのだろう。
後藤オーナーが仰る通り、試合はまだまだ110試合程度残っている。そう考えると9つの負け越しくらい、十分に返せそうにも思えてくる。後藤オーナーと渡辺GMはこれまで、ずっと中長期的な目でライオンズの再建を続けて来た。そのため多少上手くいっていないからと言って、目先の敗戦だけで物を言うことが決してない。その辺りは一喜一憂してしまう我々ファンと、どっしりと長い目でチーム作りを考えている西武球団フロント陣との違いと言えるのかもしれない。