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2024年5月15日公開

今のライオンズに最も欠けている闘志を見せてくれた村田怜音選手

北海道日本ハムファイターズ vs 埼玉西武ライオンズ/7回戦 エスコンF
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 3 0 0 0 0 0 3 5 2
Fighters 3 1 2 0 1 3 2 0 × 12 19 0

継投●隅田知一郎田村伊知郎平井克典糸川亮太本田圭佑
敗戦投手隅田知一郎 2勝3敗0S 4.14
失策佐藤龍世(3)蛭間拓哉(1)

炭谷捕手のミットよりも少しずつ甘いコースに投げ続けた隅田知一郎投手

今のライオンズは相手に先制点を取られるとかなり辛い戦いになることは、ナインは誰しも理解していると思う。だがローテーションの二番手投手を務めている隅田知一郎投手は、初回にスリーランホームランを打たれてあっという間に3点を失ってしまった。

ボールそのものは決して悪くはなかったと思う。ストレートにもスピード感があったし、変化球に関してはカーブが良いところに決まることも多かった。そして炭谷銀仁朗捕手もカーブが良いと感じたのか、初回からカーブを軸にして、ストレートとのコンビネーションで奥行きを使った配球を見せて来た。

しかしカーブ以外の球種の制球が甘かったようだ。チェンジアップはやや抜け気味になることがあり、ストレートも炭谷捕手が構えるミットよりも甘いコースに入ることが多かった。初回にホームランを打たれたボールに関しても、炭谷捕手が構えるミットよりも真ん中に近いコースに行っていたように見えた。

今日は結果的に3回2/3を投げて被安打9、失点6という早期ノックアウトとなってしまった隅田投手ではあるが、制球に関しては今日の試合においては日本代表クラスのレベルではなかった。そして炭谷捕手のサインに首を振って、その結果打者を仕留められないというケースもあり、今日のピッチングに関しては目指すピッチングがまったくできなかったという感触だったのではないだろうか。

そして隅田投手はすっかりファイターズ打線に火をつけてしまった。火消しとして二番手でマウンドに登りしっかりと打者1人を抑えた田村伊知郎投手以外は、その後平井克典投手が1失点、ルーキー糸川亮太投手が3失点、本田圭佑投手が2失点と軒並み失点を重ねていき、最終スコアは3-12という大敗となってしまった。

最近はセットアッパー・守護神以外のリリーフ陣の状態が非常に悪いため、このあたりの再編も必要になってくるのかもしれない。ただ、甲斐野央投手が二軍の試合で投げ始めているため、甲斐野投手が戻って来ればまた状況も変わってくるのだろう。

アギラー選手が不在の今こそ試してもらいたいコルデロ選手の指名打者起用

中村剛也選手

さて、一方打線に関しては今日は僅か5安打だったわけだがそれでも3点を奪って見せた。4回の表が始まった時点ですでに6点差だったため、打線としてはもう「打つ獅かない」という状況だった。走者が出ても送ったり進塁打を打ったりではなく、もうヒットを打つという作戦以外は取れない状況だった。

それでも4回には先頭の源田壮亮主将がライト前ヒットで出塁し、外崎修汰選手が四球で繋ぐと中村剛也選手がレフト前にタイムリーヒットを放ち、さらには佐藤龍世選手のセカンドゴロの間に1点、続く炭谷捕手のタイムリーヒットで1イニング3点を奪ってみせた。

ヒットの本数こそ少なかったが、こうしてヒットと四死球を絡めて1イニングに3点を取れたというのは連敗中にはほとんどなかったため、チームとしては最悪の状態は抜け出て来たのかなという印象だ。だが打線そのものとしてはヘスス・アギラー選手という軸を欠いているため、しばらくはまだ厳しい戦いが強いられるだろう。

こんな時こそフランチー・コルデロ選手のパワーに期待したいところではあるが、ファームでもそれほどヒットを打っているわけではない。しかし少し前と異なるのは、コルデロ選手が四球を選べるようになって来たことだ。ヒットが出ていなくても、例えば先週の土曜日には3つの四球を選んでいる。

こうして日本人投手が投げる変化球をしっかり見極められるようになったことは、今後コルデロ選手の状態が上がっていくであろう一つの要素となるはずだ。コルデロ選手の場合、極端な話三振かホームランかでも良いと思う。例えば前回ライオンズが日本一になった2008年には、「恐怖の九番打者」としてヒラム・ボカチカ選手が活躍した。

この時のボカチカ選手は78試合の出場で打率.251、本塁打20本という成績だったわけだが、コルデロ選手もこの時のボカチカ選手のように、しばらくは恐怖の九番打者として一軍で起用しても良いのではないだろうか。現状のライオンズではホームランバッターは中村選手ただ一人で、相手投手としては打線に対し怖さがないのだ。今日の試合に関しても5安打はすべてシングルヒットで、四死球さえ絡まなければ大怪我をする心配もない。

だがコルデロ選手に関してはまだ状態は上がっていないとはいえ、当たったら簡単にフェンスオーバーしていく。そのためバッテリーもより神経を使うようになり、スタミナの消耗も激しくなり、それによって他の打者への攻めが甘くなるケースも出てくる。そういう意味でもやはりホームランを打てるコルデロ選手の存在は魅力的なのだ。

だが松井稼頭央監督としては、ヒットが出始めるまでは上げたくないという考えなのだろうか。しかしラテン系であるコルデロ選手はファームで調整させ続けるよりも、観客の多い一軍の試合で盛り上がりながらプレーさせた方が乗っていけるのではないだろうか。そういう可能性も考えられるからこそ、筆者は以前よりコルデロ選手を一軍で指名打者として試してもらいたいと書き続けている。

今のライオンズに必要なのは闘志全開でプレーする村田怜音選手のような存在

そして今日はやはり村田怜音選手について書かないわけにはいかないだろう。今日の村田選手はヒットこそ出なかったものの、怪我を恐れずに一死を取りに行く積極果敢なプレーを見せてくれた。

今日は一塁手としてスタメン出場していた村田選手だが、7回裏一死満塁の場面でファールフライが上がるとそれを必死に追いかけていき、フェンスに激突してしまった。松井監督によれば膝、顔、首あたりに傷を負ったようだ。そして膝に関してはユニフォームが破れてしまっており、見るからに痛々しい姿だった。

しかし村田選手は痛みを堪えそのままプレーし続けることを直訴した。このような選手を見かけることは近年ずいぶんと少なくなってしまったが、この村田選手のファイティングポーズは、松井監督も他の選手たちも見習うべきだろう。痛手を負ってまで試合に出続け勝利に貢献しようとする姿は、今のライオンズに最も足りていない闘志だと言える。

やはり戦っている限り選手たちに闘志は必要だ。プレーが上手くいかずガッカリしている表情などファンは見たくないのだ。ファンが見たいのは三振をしても、フェンスに激突して怪我をしても、決してファイティングポーズを緩めることのないプロ選手の凛々しい姿なのだ。ライオンズに今最も欠けているそれを見せてくれたのが皮肉にもルーキーの村田選手だった。

ベンチに下がる際には足を引きずっているようにも見えたが、本当に登録を抹消されるレベルの怪我でないことを祈るばかりだ。ライオンズがこれから勝っていくために、このような闘志溢れるプレーができる村田選手の存在は絶対不可欠なのだ。

今日の試合では左膝をぶつけてしまったわけだが、靭帯を痛めていないことをとにかく祈りたい。本当にただの軽い打撲程度で済んで欲しい。そして幸運なのは明日は試合がないことだ。次の試合は金曜日となるため、一日でもしっかり休める状況は村田選手にとってはプラスとなるだろう。

だがレオのガリバーがここで簡単にダウンすることはないだろう。痛々しく見えた左膝もあっという間に治し、きっとまた金曜日には何事もなかったかのように元気な姿を見せてくれるはずだ。そして今後もライオンズナインに火をつけてくれるような闘志溢れるプレーを見せ続けてくれるはずだ!

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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