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2024年7月28日公開

前回の好投から過信のような物が見え隠れした今日の菅井信也投手のKO劇

北海道日本ハムファイターズ vs 埼玉西武ライオンズ/14回戦 エスコン
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0
Fighters 2 7 0 0 0 0 0 0 × 9 13 0

継投●菅井信也中村祐太水上由伸松本航
敗戦投手菅井信也 1勝2敗0S 5.51

前回の好投から過信のような物が見え隠れした今日の菅井信也投手のKO劇

前回の好投によりやや過信のようなものが見えてしまった今日の菅井信也投手

今日の先発は7月15日に7回無失点という好投をしていた菅井信也投手だった。しかし結果的には2回持たず6失点KOとなってしまう。だがまだ経験の浅い若い投手なのだから、今日のミスを次回に繋げていければ、今日のKOそのものについてはもう忘れてしまって良いと思う。

首脳陣にしても今日のKOだけで次回の先発機会を判断するのではなく、今日のKOの次の試合でどのような修正を見せてくるかによって、この先のことを考えてもらいたい。熾烈な優勝争いをしているようなチームならまだしも、今季ライオンズの最下位はほとんど確定してしまっている状況においては、菅井投手を今後大きく育てていくためにも、今日のKOだけですべてを判断してもらいたくはない。

今日のピッチングに関しては、打たれたボールのほとんどは炭谷銀仁朗捕手のミットよりも内寄りに入り、見逃されたボールの多くがミットよりも外側に行っていた。高低の制球ミスは決して多くはなかったように見えたのだが、ラインの制球に関しては今日はかなりアバウトだった。

少し前に菅井投手は、渡辺久信監督代行から「ストライクを取れる変化球を覚えておくこと」を課題として出されていたわけだが、前回の登板ではその課題が克服されており、それにより7回無失点という好投を披露することができた。しかし今日の試合に関してはその変化球の精度が、上述のようにかなりアバウトになっていた。

もしかしたら前回想像以上にピッチングが上手く行ったため、それにより僅かな過信が芽生えてしまっていたのかもしれない。しっかりと投げさえすれば二軍同様に抑えられると考えてしまったのかもしれない。だが僅かでもこのような過信や油断、慢心が生まれてしまうと、一軍では今日のように簡単に打ち込まれてしまう。

いくら老練なリードで若手投手の良さを引き出せる炭谷銀仁朗捕手と言えど、さすがに今日の制球のようなアバウトさでは配球そのものが成り立たなくなってしまう。

菅井投手の場合、まだまだ自信を確信に変えるべき時ではない。少なくともローテーションを守れるようになるまでは決して過信することなく、謙虚な気持ちで1球1球丁寧に投げていくべきだろう。その丁寧ささえ忘れなければ、次の登板ではまたきっと素晴らしいピッチングを見せられるはずだ。

非常に難しいマウンドになってしまった今日の中村祐太投手

菅井投手が2回途中でノックアウトされると、二番手には中村祐太投手がマウンドに登ったわけだが、残念ながらこの中村投手も今日は2回2/3を投げて3失点と打ち込まれてしまった。

今日の中村投手のピッチングを見ていると、1イニング目に関しては特に腕の振りがいつもより緩かった。3回と4回のピッチングに関してはいつも通りに見えたのだが、ほとんど緊急登板状態だった2回のマウンドでは、恐らくは準備が十分でなかったのだろう。いつもの中村投手のリズムでは投げられていなかった。

もちろんプロである限り、準備が十分ではなかったという言い訳をすることはできない。しかしさすがにブルペンでは、先発投手が2回持たずにKOされることなど基本的には想定していない。今日の場合は初回からすでに打ち込まれていたため、中村投手も初回から肩を作り始めてはいたはずなのだが、やはり筆者の印象ではそれが十分ではなかったのかなというところだ。

リリーフピッチャーと守護神の違いは、リリーフピッチャーは1試合で2〜3回肩を作ることも珍しくはない。一方守護神は9回のマウンドに合わせて一度だけじっくりと肩を作るのが普通だ。そのため登板時のプレッシャーの大きさは別として、体への負担は守護神の方が軽減されやすい。

そしてリリーフピッチャーの場合は一度だけと言うよりは、二度三度肩を作ることによって登板時に体をマックスに持っていくという調整を行う。だが今日の中村投手は緊急的に肩を作り始めて、一度だけしか肩を作れなかったためにいつものリズムでマウンドに入っていくことができず、2回のマウンドでは上手く火消しすることができなかったのだろう。

肩に関してここでもう少し書き加えておくと、二度三度肩を作る場合でも、その間に休憩を入れるタイプの投手と、休憩を挟まずに二段階、三段階という感じで上げていくタイプの投手がいる。前者でも後者でも基本的には一度目や一段階目で30%程度まで上げ、その後また60%、90%と段階を踏んで上げていき、いざ登板という時点で100%に持っていけるようにブルペンでは調整している。

つまり今日の中村投手は段階を踏んで肩を作ることができなかったばかりか、いきなり100%に持っていく流れで行かなければならず、これはリリーバーにとっては非常に難しい調整だったと言える。もちろんファンとしては何とか2回のマウンドでも火消しを期待したかったわけだが、このような調整の難しさと、ノリノリになってしまったファイターズ打線の勢いも相まって、2回のみは中村投手らしいピッチングをすることができなかった。

しかし上述の通り3回4回のマウンドではいつも通りの中村投手に見えたため、恐らくは2回のマウンドではまだ60%の段階であったのだろう。かつての鹿取義隆投手のように15球でマウンドに上がれるほどあっという間に肩を作れる投手は現代ではほとんど見当たらない。そして元々は先発タイプの中村投手の場合も、どちらかと言えば肩を作るのにやや時間を要している。

経験の浅いピッチャーが先発なのだからそれを想定して早め早めにに肩を作っておくべきだ、と言う野球評論家もいるが、このようなことを仰るのは得てしてリリーフ経験がない、もしくは少ない元プロ野球選手だ。リリーフを経験している野球評論家であれば、今日の中村投手の登板の難しさはきっと解ってくれるはずだ。

本塁打を警戒する必要がまったくない今のライオンズ打線

さて、今日のライオンズ打線に関してはまったく奮わなかった。ファイターズの13安打に対し、ライオンズは僅かに2安打だった。しかもその2本は源田壮亮主将が打った2安打で、他の打者たちは誰一人として伊藤投手からヒットを打つことができず、チームとしても今季二度目のマダックス(100未満での完封)を献上してしまった。

確かに伊藤投手は今日で8勝目となっている好投手だ。しかし2安打ではさすがに試合にならなくなってしまう。だがライオンズ打線はホームランがほとんどないこともあり、相手投手が伸び伸びと投げやすいという事情もあるのだ。今日時点のライオンズのチームホームラン数35本(リーグ5位)に対し、ファイタイーズは57本(リーグ2位)だ。22本の差は決して小さいとは言えない。

スタメンで最もホームランを打っているのが3本の外崎修汰選手なのだから、相手投手としてもホームランを恐れることなくどんどん懐を攻めていくことができる。それが伊藤投手のような好投手の場合は尚更だ。

このように相手投手を楽にさせないためにも長距離砲は打線には必要になってくるのだが、果たして残り3日で新外国人選手の獲得や更なるトレードは実現するのだろうか。もしくはデストラーデ氏の再生手腕に賭けるのだろうか。

いずれにしても今季はもうここから本格的に巻き返していくだけの試合数は残されてはいない。そして何らかの奇跡が起きない限りは5位に浮上することさえできないだろう。そう考えるとリスクのある新外国人選手を連れてくるよりは、ヘスス・アギラー選手フランチー・コルデロ選手の再生を目指し、同時にアンソニー・ガルシア選手の成長に賭けるのも良いのかなとは思えてくる。

残り試合を捨ててまで育成に力を入れて欲しいとは思わないが、しかし来季に向けてできるだけのことは今季中にやっておく必要がある。それが新外国人選手の獲得になるのか、既存外国人選手の再生になるのかは、あと3日もすればハッキリするだろう。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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