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2024年4月30日公開

試合結果/2024年04月30日(火) 埼玉西武1 - 2北海道日本ハム 5回戦 ベルーナD

埼玉西武ライオンズ vs 北海道日本ハムファイターズ/4回戦 ベルーナD
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1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Fighters 1 0 0 0 0 0 0 1 0 2 9 0
Lions 0 00 0 0 1 0 0 0 1 3 1

継投平良海馬●本田圭佑平井克典
敗戦投手本田圭佑 0勝2敗0S 3.18
失策長谷川信哉(1)

ホークス戦6戦6敗から残り19試合で五分に戻すために必要な数字

今日ファイターズに敗れたことで負け越しは12球団最速での二桁となり、首位ホークスとの差も11ゲームと開いてしまった。そして1点差ゲームに関して見ていくと今季は実に1勝13敗という数字で、勝率は僅かに.071にしかならない。そして今季の通算でも8勝18敗で勝率は.308となっており、12球団中最下位であるどころか、12球団で唯一の勝率3割台となっている。

また、昨日までの対戦成績は2勝1敗でライオンズが今季唯一勝ち越している相手がファイターズだったわけだが、今日敗れたことでタイとなり、これでライオンズが勝ち越している相手は0になってしまった。さらに数字を見ていくとホークス相手に6戦6敗、マリーンズ相手に4戦4敗と、この2球団相手では10戦10敗となっている。

ちなみに6戦6敗を取り戻すためにはどのような戦いが必要になるかと言うと、今後ホークスとの3連戦を6カード連続で2勝1敗で勝ち越すと、ようやく対戦成績が12勝12敗の五分になる。だが1シーズンでホークスと試合をするのは25試合であるため、0勝6敗から五分に戻すのがいかに大変であるかがよく分かる。なお2023年のライオンズ対ホークスの対戦成績は12勝13敗でほぼ互角だった。

さて、そろそろ今日の試合の話をしていくと、今日のライオンズ打線は5回まではファイターズ山崎投手にパーフェクトピッチングを許していた。6回になりようやく長谷川信哉選手の内野安打で完全試合とノーヒットノーランを阻止したわけだが、ヒットは僅かに3本止まりで、その6回に金子侑司選手のタイムリーヒットで1点を奪うのがやっとだった。

泥臭く戦うべきでも避けなければならないプレーがある

平良海馬投手

この日先発マウンドに登ったのは平良海馬投手だった。結果的には7回1失点とHQSをクリアしているため、好投と評価していいのだろう。だが筆者が注目したのは、今までも再三書いてきたように、今日も先発投手が簡単に相手に先制点を献上してしまった点だ。今日も平良投手が初回にあっさり1点を取られてしまった。

今のライオンズの打線の状態では追いつき追い越すのは非常に難しい。その理由は打線が不振であることに加え、野球というスポーツはビハインドになると攻撃時に使える戦術が限られてしまうからだ。打線の不振とビハインドが重なると、まず走者が出ても簡単に送りバントや盗塁のサインを出せなくなる。それによって攻撃が後手後手にやりやすく、連打や長打が出なければなかなか試合をひっくり返すことができない。しかし連打や長打でない状態を打線の不振と呼ぶ。

平良投手はもちろん、ライオンズ先発陣の全員が現在の打線の不振状態を理解している。だからこそ死に物狂いで先制点の献上は防いでいかなければならないわけだが、今井投手以外はほとんど毎試合で先発投手が先制点を献上してしまっている。打線の状態が良くない中でこれでは、勝てないこともまったく不思議ではない。

なんとしても先制点を許したくないという意味で言えば、ショートスターターの起用も一つの方法だと言える。例えば極端な話、守護神のアルバート・アブレイユ投手を先発として1イニング投げさせ、その他セットアッパーたちに2〜3回までを全力で抑えにいってもらうのだ。

すると試合の残りは6イニングスのみとなり、最長6イニングス限定ということが予め分かっていれば、そこから投げる先発投手陣もあまりペースを気にせずに最初のイニングから飛ばしていけるようになる。さらに1〜4回までをリリーバー4人で無失点で切り抜ければ、5回から登板する先発投手の役割は5イニングスのみとなり、さらにペースを上げやすくもなるだろう。

ライオンズはこれほどまでに負けが込んでしまっているのだから、もはや正面から相手にぶつかりに行く戦いをしている場合ではない。弱者の兵法ではないが、体裁など気にせずにとにかく泥臭く1つ1つ勝っていくしかないのだ。

ただし泥臭く戦うと言っても、今日の長谷川選手のように一塁にヘッドスライディングをすることだけは避けるべきだ。一塁へのヘッドスライディングほど怪我をする可能性が高いプレーは他にはない。さらに付け加えると、実は一塁にヘッドスライディングをするよりも、そのままトップスピードで駆け抜けて行った時の方が一塁への到達速度は速くなるということもデータとしてハッキリと出ている。

確かに高校球児ばりに泥に塗れてヘッドスライディングする姿はチームを鼓舞することがある。現にこの試合でも長谷川選手が出て、古賀悠斗捕手が送り、九番若林楽人選手が倒れた後の一番金子侑司選手に長谷川選手を生還させる同点タイムリーヒットが飛び出ている。

そういう意味ではこのヘッドスライディングが執念の1点に結びついたと言えるわけだが、しかし長谷川選手の打球を処理した遊撃手はボールを投げていないのだから、一塁の赤田将吾コーチは「ノースライ!」などと叫んでスライディングさせないための走塁指示も必要だったのではないだろうか。

今回は怪我に結び付かず本当に良かったわけだが、牽制時の帰塁を除き、進塁時のヘッドスライディングで手を怪我する選手は本当に多い。チームによっては一塁へのヘッドスライディングを禁止している場合もあるレベルの話であり、そういう意味でも、今日は怪我をしなかったから良かったものの、走塁コーチはこの点に関しては改めて野手陣と確認をすべきだろう。

渡辺久信GMの配慮が足りなかったとも言える髙橋・平良両投手への対応

さて、筆者は今少し気になっていることが一つある。それは平井克典投手についてだ。平井投手は今日の登板が今季2試合目であったわけだが、前回の登板でも今日の登板でも笑顔を見せながら投げているのだ。

普通であれば、例えば負け続けているのにベンチでニコニコヘラヘラしているのは士気の低下にも繋がるため避けるべきなのだが、平井投手を見ているとそうではなく、逆にこういう非常に苦しい時だからこそいつも以上に意識的に笑顔を見せているように筆者には見えたのだ。

笑顔というのは心理学的には、自分や周囲の人をリラックスさせる効果がある。逆にマウンド上のピッチャーがイラつく姿を見せると、その表情がよく見える内野陣に緊張が走り、守備の動きが硬くなり、ミスの連鎖が起きやすくなる。だがピッチャーがどんな時も笑顔を見せていると野手陣はリラックスして守ることができ、ミスも起きにくくなる。

例えば現役時代の西口文也投手などは、味方がエラーしても決して嫌な表情一つ見せずに、いつでも微笑みを湛えながら投げていた。ニコニコしていると言うほど笑顔を見せていたわけではないのだが、少なくとも野手陣に緊張が走るような表情を見せることは、現役時代には一度もなかったはずだ。

だからこそ当時のライオンズナインは、高木浩之選手の言葉を借りれば「西口に勝ちを付けてあげたい」と思いながら西口投手のバックを守っていたのだ。ピッチャーにはポーカーフェイスが必要なわけだが、ポーカーフェイスというのは無表情という意味ではない。どんな時でもいつも同じ表情を見せることをポーカーフェイスと呼ぶ。

西口投手のようにいつも柔らかな表情をバックに見せていたのならばそれがポーカーフェイスになるし、涌井秀章投手のようにいつでもクールな表情であればそれもまたポーカーフェイスとなる。さらに言えばデニー友利投手や石井貴投手のようにいつでも闘争心を剥き出しにしていれば、それもまたポーカーフェイスだと言えるのだ。

だが今日の平良投手の表情を観察していると、もちろん笑ったり怒ったりという表情を見せているわけではないのだが、どこか自分のボールに納得がいっていないような表情を見せながら投げていた。だがそのような表情は野手にネガティブな印象を与えてしまう。

平良投手はポスティングでのメジャー移籍を目指しているわけだが、今季の平良投手は防御率こそ1.42と非常に素晴らしい数字を残しているわけだが、メジャーリーグでも通用しそうなピッチングはしていない。筆者は仕事柄メジャーリーグもよく見ているのだが、平良投手のボールはメジャーリーグではせいぜい中の上という程度ではないだろうか。少しでもコースを間違えば簡単に打ち返されてしまうレベルだと筆者は見ている。

日本では相手打者のほとんどが日本人選手だ。今日のファイターズ打線もマルティネス選手以外はすべて日本人打者であり、彼らの体格はメジャーリーグの屈強な打者たちと比較するとまるで大学生と中学生ほどにも違う。つまり今日は8安打すべてをシングルヒットにとどめることができたわけだが、相手がメジャーリーガーだった場合、この8安打の半数は長打になっていただろう。

これは昨オフにも少し書いたことではあるのだが、平良投手と髙橋光成投手はメジャーリーグで通用するレベルには至っていないと筆者は考えている。もちろん野球の最高峰であるメジャーリーグにチャレンジしたいという気持ちは持ち続けてもらいたいわけだが、しかしメジャー希望を宣言する前にしなければならないことがあったはずだ。

平良投手にしても髙橋投手にしても、筆者は順番を間違えているとこれまでにも書いてきた。そしてこの順番間違いというのはチームの結束に大きなヒビを入れることがある。悪い言い方をすると「どうせあいつらは来年か再来年にはライオンズにはいない」と見られてしまうのだ。僅かでもそのような空気があった場合、果たしてチームが結束することは可能だろうか。いや、可能なわけがない。

ここに関しては渡辺久信GMの配慮不足だったとも言えるかもしれない。もし渡辺GMが彼らのメジャー希望を初めて聞いた際に、「チームの士気に影響するからその時が来るまで公言しないでくれ」と一言伝えていれば、また状況は変わっていたのかもしれない。

今こそ生かして欲しい源田壮亮主将のWBCでの経験

長い目で振り返ってみると、FAで多くの主力選手を失ったことだけではなく、複数の選手が早期にメジャー移籍を公言したことでも、少しずつチームに綻びを生んでしまっていたのかもしれない。そのためなのか、今のライオンズ打線はまったく一枚岩にはなれていない。ほとんどの若い選手たちが自分が打つことだけに集中してしまっているように見える。

だが野球はヒットがたくさん出ようが出まいが、点さえ取れれば勝てるスポーツなのだ。そう考えると打てていない選手は、かつての金森栄治選手のように死球さえ厭わず死に物狂いで次の打者に繋げる、という意識が必要になってくるのではないだろうか。ただしこれに関しては死球に対する受け身が上手い選手でないと怪我をしてしまうため、もちろん全員が全員やるべきこととは言えない。

もう一つ例を挙げておくと、やはりかつてライオンズで活躍した大崎雄太朗選手は少しでもミート力を上げるため、バットのグリップの、指数本分短い場所にテーピングを巻いて第二のグリップエンドを作り、バットを長く持ちたいというプロの打者としてのエゴを完全に捨て切ることで一軍で生き残ろうとした。

大崎選手は渡辺久信監督の時代、金森選手は広岡・森監督時代に活躍した選手であるわけだが、今のライオンズに必要なのはまさにこのような泥臭くプレーする選手の存在だ。このような選手が一人でも二人でも出てくれば、「あいつがあんなに死に物狂いでやっているんだから、俺ももっとチームのために頑張らないと!」という相乗効果も生まれてくるだろう。

しかし今のライオンズの若手選手たちを見ていると、自分がヒットを打てていないことで一杯一杯になってしまっている。だがそれはフォア・ザ・チームからはかけ離れた選手としての姿だ。打てないのならば、打てないなりにどうすればチームに貢献できるのか、というところにまで考えを及ぼさなければならない。

そしてそのような姿を率先して見せていかなければならないのが源田壮亮主将であり、外崎修汰副主将であるわけだが、外崎選手はまさに自分が打てていないことに一杯一杯になってしまっている状態だ。

一方の源田主将に関しては昨年のWBCで指を怪我した際、怪我をしたなりにどうすればチームに貢献できるのか、ということをすでに経験している。その時の経験を生かすべきなのがまさに今ではなかろうか。今のところこのチーム状況において主将、副主将としての存在感はかなり薄い。だがこんな時こそ率先して泥臭さを見せ、若手に示しをつけるのが彼らの役割ではないだろうか。少なくとも筆者はそのように考えている。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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