HOME > ゲームレビュー (92記事) > チームを勝たせる投球をした渡邉勇太朗と、勝たせる好リードを見せた牧野翔矢捕手

2024年6月25日公開

チームを勝たせる投球をした渡邉勇太朗と、勝たせる好リードを見せた牧野翔矢捕手

埼玉西武ライオンズ vs 北海道日本ハムファイターズ/8回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Fighters 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0
Lions 1 0 0 0 0 0 0 0 × 1 8 0

継投○渡邉勇太朗Hジェフリー・ヤンH本田圭佑H松本航Sアルバート・アブレイユ
勝利投手渡邉勇太朗 1勝2敗0S 3.03
セーブアルバート・アブレイユ 1勝4敗13S 2.96
盗塁/高松渡(6)

チームを勝たせる投球をした渡邉勇太朗と、勝たせる好リードを見せた牧野翔矢捕手

渡邉勇太朗投手が活躍するほど価値が上がる内海哲也投手の獲得

渡邉勇太朗投手

今日先発マウンドに登った渡邉勇太朗投手は本当に素晴らしいピッチングを見せてくれた。結果的には5回1/3を投げて被安打5、奪三振4、四球1、失点0という内容だった。

残念ながら6回にマメが潰れてしまい緊急降板となってしまったが、幸いにも次回の登板には影響はなさそうだ。その渡邉投手は今日、「自分がチームを勝たせるっていう気持ちが芽生えてきた」と話していた。この自覚は本当に素晴らしいと思う。ただ口でそう言っているだけではなく、自然とそのような気持ちが芽生えてきたようだ。これはエースになっていくための最初の一段目の階段だと言えるのではないだろうか。

髙橋光成投手は今季はほとんどの登板で自分との戦いになってしまっていた。そのため打者に向かって行っているような姿が見られず、ピッチング内容もかわしにいく投球が多く、さらにはパワーアップしたはずのストレートでさえも簡単に外野まで運ばれてしまう有様だった。

四球で自滅しているわけではないのだが、この髙橋投手のピッチングはいわゆる独り相撲と呼ぶことができる。しかし一方の渡邉投手が見せてくれた今日のピッチングは自分のためではなく、チームのためのピッチングのように見えた。今日バッテリーを組んだのはトミー・ジョン手術からようやく一軍復帰してこられた同学年で同期の牧野捕手で、この牧野捕手とのコンビネーションも抜群だった。

やはりお互い二軍で苦楽を共にしたからこそ芽生えた信頼関係があったのだろう。牧野捕手は渡邉投手の良さを存分に引き出していたと思うし、渡邉投手も牧野捕手の配球の意図をしっかりと理解しながら投げているように見えた。そのためコントロールミスはあっても、「なぜその配球?」と疑問に思った配球は今日はほとんどなかった。

この体の大きな23歳が今後もローテーションの一角を担っていければ、ライオンズの先発陣は髙橋光成投手と平良海馬投手を欠いても盤石のものとなるだろう。ストレート自体の球速は150km/h行くか行かないかくらいで、現代野球ではすごく速い部類に入るわけではない。だがしっかりと下半身を使ってボールを投げられているため、ストレートに伸びが感じられた。

さらにはストレートと同じ腕の振りでカットボールも制球良く投げていたため、打者としてはストレートとカットボールの見極めはかなり難しかったはずだ。恐らくはカットボールで芯を外されて凡退になった打者たちも、ストレートを打ち損ねたと思いながらダグアウトに戻っていたのではないだろうか。それくらい今日の渡邉投手のストレートとカットボールの見極めは難しかったと言える。

渡邉投手がこのように活躍してくれると、炭谷銀仁朗捕手の人的補償として内海哲也投手を獲得したことは本当に正しかったとつくづく思えてくる。そして不思議なもので炭谷捕手がジャイアンツに移籍したことで内海投手はライオンズにやってきたわけだが、炭谷捕手がライオンズに復帰した今季、内海投手コーチはまたジャイアンツへと戻って行ってしまった。縁とは実に面白いものである。

786日振りに先発マスクを被った苦労人・牧野翔矢捕手の帰還

そして今日は牧野翔矢捕手にとっては記念すべき一戦となった。2022年に右肘のトミー・ジョン手術を受けた牧野捕手はその後育成契約に切り替わり、それまでの38番から117番という大きな背番号を背負ってリハビリに励んでいた。今日の試合でも53番の新しいユニフォームが間に合わずに117番を背負ったまま出場したわけだが、この2年間は本当に苦しかったと思う。

トミー・ジョン手術は一般的には投手が受ける肘靭帯の修復手術になるわけだが、通常は実戦復帰までは一年程度かかる。そして現代では成功率は限りなく100%に近づいてきてはいるが、それでもまだ手術が上手くいかないケースもあり、その場合は術後の怪我が癒えてリハビリに励んでも、怪我をする前のパフォーマンスまで戻せない選手がほとんどだ。

ライオンズは投手も含めると肘の内側側副靱帯の修復手術を受けている選手が非常に多い。なおこの肘痛は投げ方が良くないことによって引き起こされ、肩関節の内外旋の順番を整えてあげることによって、肘の靭帯に負荷のかからない投げ方に変えることができる。ちなみに筆者の職業はまさにこのあたりがメインで、肩肘に負荷のかからない投げ方を指導しながら、同時に制球力や球速も上がっていくようにしていく。

いわゆる地肩が強いタイプの選手はポジション問わず、スローイングアームの動きが硬い場合が多い。牧野捕手も地肩が強いタイプで、まさに肩の馬力によって強いボールを二塁に投げていたタイプの捕手だった。そのため肘の内側に負荷がかかってしまったわけだが、今後牧野捕手は、その肘痛が再発しない投げ方を時間をかけて身につけていく必要があるだろう。

しかしとにかく牧野捕手は今日、好リードによってライオンズを勝利に導いてくれた。ライオンズがカードの初戦に勝ったのは実に14カード振りだ。もう前回がいつだったのかさえ思い出せないほど遠い昔の話だ。今のところ正捕手争いで一歩リードする古賀悠斗捕手は去年・今年とチームを勝たせることができるリードができていない。だがここで牧野捕手がチームを勝たせられるようになれば、一気に正捕手争いに食い込んでくることになるだろう。

ちなみにリハビリ中の二軍では、岡田雅利捕手と武隈祥太氏が心身共に牧野捕手を支えてくれていたようだ。岡田捕手自身も怪我で苦しんできたわけだが、その辛い経験を生かしながらも後輩たちを支えてくれている。確かに岡田捕手はしばらく一軍の試合には出られてはいないが、しかしこういうサポートをしてくれるからこそ、それでも岡田捕手はライオンズには不可欠な存在なのである。

そして今日牧野捕手が登場曲として使った2曲は、武隈投手と岡田捕手の登場曲だったらしい。この二人の恩に報いるためにも、牧野捕手には古賀捕手の存在を脅かすような活躍を今後も見せ続けてもらいたい。

まだまだ完成度は低いが着実に成長の跡を見せている岸潤一郎選手

さて、ライオンズが初回の1点のみで完封勝利を収めたのは1999年8月28日のダイエーホークス戦以来の出来事らしい。スポーツ紙はよく毎回このようなデータをパッと見つけてくるものだなぁと感心しながらも、やはり幸先よく先制しながらも追加点を奪えなかったことは猛省すべきだろう。

特に今日は児玉選手のスクイズ失敗が痛かった。源田壮亮主将が三塁打で出塁し、一番に戻り鈴木将平選手が倒れた後、二番児玉選手にはスクイズのサインが出されたわけだが、まずそれをファールにしてしまい、続く球ではあろうことかスクイズを空振りしてしまい、飛び出していた源田主将があえなくタッチアウトになってしまった。

これで無死三塁という大チャンスが一瞬で二死走者なしとなってしまった。児玉選手に求められているのはまさにこのような小技であるのだから、それを求められている選手が2球も続けてミスしてしまうというのはちょっと考えられない。このようなプレーをしているようでは、松原選手のユニフォームが出来上がって一軍に上がってくる際、児玉選手は真っ先に登録抹消されてしまうのではないだろうか。

しかも本当に残念だったのが、スクイズを失敗した後は児玉選手は四球を選び、続く栗山巧選手が2打席連続でヒットを打っていることだ。もし児玉選手がスクイズに失敗していたとしても、せめて源田主将だけは生かしておければ、栗山選手のヒットによって生還することができたのだ。児玉選手自身も猛省しているとは思うのだが、バントの特訓は必要そうだ。

そして今日はもう一人、岸潤一郎選手についても少し書いておきたい。ご存知の通り筆者は岸選手は少なくとも今はまだ四番タイプではないと書いた。その理由はパンチ力はあるわけだが、正確性や安定感がまだまだ低いからだ。打率もまだ.254という低い水準にとどまっている。

だが筆者は岸選手に対しては好感を持っている。これは以前も詳しく書いたことだが、とにかくインサイドアウトという基本を徹底して打席に立っており、コースに逆らわないバッティングを見せることが非常に多い。そしてもう一つは得点圏打率が打率よりも高いことだ。今日の試合を終えた時点で打率.254に対し、得点圏打率は.286となっている。もちろんこれは四番としては十分な数字とは言えないが、打率よりも得点圏打率が高くなるタイプの選手は、将来的にはクリーンナップを任せられる可能性が高いと言える。

また、岸選手は状況に応じたバッティングを見せてくれる。追い込まれるまではバットは長く持っているのだが、追い込まれたり、チームバッティングが必要な場面になると指1〜2本分バットを短く持ち替えるのだ。本来の四番打者の姿としてはこのような小細工はせず、いつでも泰然と打席に立っているべきなのだろうが、しかしこのような柔軟な姿を見せる岸選手は、将来的には鈴木健選手のようなソフトタイプの四番打者になれるのではないだろうか。

まだまだ完成された選手とは言えない岸選手ではあるが、今日も栗山選手が二塁打で出塁した直後に同じように二塁打を打ち、栗山選手をホームに迎え入れている。岸選手は日に日に勝負強い打者になってきているため、もしかしたら夏場あたりにはもっとクリーンナップらしい打者に進化しているかもしれない。

なかなか成長し切れないライオンズの若手打撃陣において、岸選手は着実に成長の跡を見せてくれている。そのため筆者は今後も岸選手の活躍と成長には注目していきたいと思っている。

関連記事

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
🐦 筆者カズのTwitter(現X)

Latest Articles - 最新記事