2024年5月10日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Eagles | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 3 | 3 | 4 | 0 | 13 | 18 | 0 |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 10 | 1 |
継投/ ●青山美夏人〜 田村伊知郎〜 本田圭佑〜 ジェフリー・ヤン〜 浜屋将太
敗戦投手/青山美夏人 0勝1敗0S 3.86
失策/浜屋将太(1)
かつてこんなに弱い西武ライオンズは果たしてあっただろうか。西武ライオンズ初年度となった1979年のシーズン、ライオンズは2つの引き分けを挟み開幕12連敗というところからシーズンが始まった。そしてこのシーズンは5位南海ホークスと0.5ゲーム差の最下位(首位とは28.5ゲーム差)で、勝率は.381だった。
そして今季、ライオンズはここまで11勝22敗の勝率.333という低空飛行が続いている。首位ホークスとのゲーム差もすでに12ゲームに広がっている。10試合戦えばだいたい7回勝てるホークスに対し、ライオンズは10試合戦っても3回程度しか勝てない。これが今季ここまでのチーム状態だ。
そして悪い流れというのは連鎖するもので、今日の試合も本当に残念な立ち上がりとなってしまった。先発マウンドに登った青山美夏人投手は先頭打者に対し簡単に2ストライクと追い込んだのだが、その後二塁打を打たれ、二番打者にはセンターに犠牲フライを打たれ、打席には一死三塁で浅村栄斗選手が入った。
この場面の初球、青山投手は外角低めの良いところにスライダーを投げた。だがそのスライダーを古賀悠斗捕手がパスボールしてしまう。記録的にはパスボールになっているのだが、これはサインミスではなかったろうか。古賀捕手のミットの動きを見ていると、まるでストレート系のボールを待っていたかのように慌ててミットを低めに持っていっていた。
このスライダーは外角低めに行ったものの、映像で見る限りはワンバウンドはしていなかったと思う。つまり普通に手を伸ばせば普通に捕れた普通のスライダーだったはずなのだ。そのボールに対しミットが追いつかずに、ボールは古賀捕手の股の下を抜けていき三塁走者を難なくホームインさせてしまった。松井稼頭央監督も初回のミスが出た時点で古賀捕手を引っ込めるくらいの厳しさを持つべきではないだろうか。
今日の試合はこんなミスからスタートしていき、最終的に2-13という屈辱的な点差での敗戦になってしまった。筆者は思うのだが、古賀捕手は確かに肩も強いし打撃も良い。だが古賀捕手は現状ではチームを勝たせられる捕手ではないのではないだろうか。古賀捕手は昨季から主戦捕手となり、日本代表にも選ばれるような捕手であるわけだが、配球面では昨季からまったくチームを勝たせることができていない。
もちろんチームが勝つためにはそれなりの得点力も必要であるわけだが、しかしそれ以前にライオンズの投手陣が簡単に先制点を相手に献上してしまっている試合が非常に多いのだ。古賀捕手自身、配球に関してはややパニックになっている面もあるのではないだろうか。
今日の試合を観察していても、投手が低めの良いところに要求通りに投げてもヒットを打たれていた。これは「徹底して低めに投げておけば何とかなる」というアマチュア野球の配球だ。プロ野球の一軍レベルではこれは通用せず、低めで勝負をしにいきたい場合、先に高めを見せておく必要がある。だがそのような対角線の配球が上手くできていないため、今日は投手が低めに投げてもイーグルス打線に18安打も打たれてしまった。
確かに現時点で打率.300の古賀捕手をオーダーから外すのには勇気がいるが、しかしこのまま古賀捕手をスタメンマスクとして起用し続けても、チームは勝てるようにはならないだろう。明日に関しては先発ピッチャーが武内夏暉投手であるため、スタメンマスクは炭谷銀仁朗捕手になると思われる。だが武内投手以外の試合でも、炭谷捕手や柘植世那捕手を起用することによって配球に対する目線を変えていくことも必要だと思う。
体力面と肩の衰えというものをど返しすれば、投手力を活かしてチームを勝利に導ける捕手は炭谷捕手となるだろう。炭谷捕手の配球は球界では非常に高く評価されているし、ショートバウンドした低めの変化球を捕球する技術レベルも圧倒的に高い。野球界では困った時のベテラン、と言われているわけだが、ライオンズは今困っているどころか困り果てている状況だ。この現状を打破できるのは若手の勢いよりも、もしかしたらベテラン選手の老練さなのかもしれない。
さて、先発オーダーに関してはヘスス・アギラー選手が登録抹消となったことで、まったく迫力がない打線になってしまった。仮にまだ日本の野球に対応し切れていなくても、やはりアギラー選手が四番に座っていると相手バッテリーとしては嫌なものだ。
もちろん三番には中村剛也選手がいるわけだが、中村選手は近年、速いボールには滅法弱くなってしまった。変化球や半速球を打つのはまだまだ非常に上手いわけだが、剛腕投手に力で押し切られてしまうともうなかなか対応できなくなって来ている。
今日は四番には佐藤龍世選手が入ったわけだが、佐藤龍世選手も一時の好調さはもう見られず、最近は4試合連続ノーヒットが続いている。ただ、佐藤選手の場合は得点圏打率が.357と非常に高いため、チームとしては何としても佐藤選手の前に走者を貯めていきたい。だがこの試合、ライオンズは佐藤選手の前に走者をスコアリングポジションに進めることは一度もできなかった。
松井稼頭央監督としては、ここ最近ヒットが続いていた中村選手にチャンスメイクしてもらって佐藤龍世選手に繋げたいのだとは思うのだが、さすがに今の中村選手に安定した打率を求めることは難しく、一発はあるものの三番打者としては警戒さえ怠らなければそれほど怖くはないというのが、相手バッテリーの考えではないだろうか。
そもそもアギラー選手が登録抹消になった時点で、松井監督はなぜフランチー・コルデロ選手を一軍に戻さなかったのだろうか。もちろんファームでも打率は.250でそれほど爆発はしていないのだが、2本塁打を放って9打点を挙げている。率は低くても、コルデロ選手の名前が入っているだけで打線の迫力は違うし、中村剛也選手に一塁を守ってもらえば、コルデロ選手を指名打者として起用することもできるはずだ。
逆に今ファームで元気がある打者と言えば、もう村田怜音選手くらいしかいない。村田選手は現在打率.333で2本塁打を放っている。チームとしてはこのルーキーを大切に育てたいのかもしれないが、しかし大卒選手であるため、高卒選手ほど過保護になる必要はないと思う。
ずっと一塁を守って来たアギラー選手が不在の今だけでも、一塁手のルーキー、レオのガリバーこと村田選手を試してみても良いのではないだろうか。はっきり言って今のライオンズはもはや失うものは何もない。5位バファローズとの差さえ4ゲームもあるのだ。もうなりふり構っている場合ではない。ルーキーであってもファームで活躍しているのなら、どんどん一軍で試していくべきだ。
そしてライオンズの選手たちは今、映画『マネーボール』を観るべきだろう。この映画では負けているチームの間違った試合後の雰囲気と、負けているチームが見せるべき負けている時の正しい感情表現が上手く描かれている。今のライオンズを見ていると、ブラッド・ピット演じるオークランド・アスレティックスのビリー・ビーンGMが怒りのあまりウォータージャグをぶん投げる前のアスレティックスの情けない姿を見ているかのようだ。西武球団のように資金力に乏しい球団が、ビーンGMの巧みな選手スカウティングで勝てるようになっていく実話を元にした名作映画だ。ライオンズの敗戦を観るのに疲れてしまった方はぜひ観てみて欲しい。