2024年7月26日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 9 | 1 |
Fighters | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 8 | 0 |
継投/ 渡邉勇太朗〜 Hボー・タカハシ〜 Hアルバート・アブレイユ〜 H佐藤隼輔〜 H本田圭佑〜 ジェフリー・ヤン
失策/ 山村崇嘉(5)
負けなかったから良しとすべきか、勝ち切れなかったと言うべきか。ペナントレース再開の初戦、エスコンフィールドでのファイターズ戦は1-1の引き分けに終わってしまった。投手陣は6人で1失点と非常に頑張ってくれたわけだが、打撃陣がまた足を引っ張る結果となってしまった。
正直なところ、今日の試合は勝てたと思う。だが勝てなかったのは5回表の拙攻が影響したと言って間違いない。一死から西川愛也選手がセンター前ヒットで出塁したのだが、続く古賀悠斗捕手がまたもやバントミスをしてしまった。
ヒットをそれほど打てず、バントもできないということになると、やはりこれは正捕手と呼ぶことはできなくなる。古賀捕手は投手がモーションに入ってからセーフティーバント気味に送りバントをしたのだが、これがほとんど、前に出た捕手の足元に転がり、敢えなく併殺打となり一瞬で好機が潰えてしまったのだ。
古賀捕手はバントが下手だ。これは今季の姿を見ていれば誰もが思うところだろう。しかしここで解せないのが、なぜバントが下手な選手が送りバントをセーフティーバント気味にやったのかという点だ。古賀捕手はバントが下手なのだから、投手がモーションに入る前からしっかりとバントの構えをしておくべきなのだ。下手にフェイントなどかける必要などまったくなかった。
そもそも古賀捕手の走力でセーフティーバントが成功する可能性は非常に低く、ファイターズの内野陣も古賀捕手がセーフティーバントをしてくるとは考えていなかったはずだ。それを逆手にセーフティー気味にバントをしたと言われればそれまでなのだが、しかしセーフティー気味に見せたとしても、この場面でセーフティーバントをしてくると考えた者はいなかったはずなのだ。走力もあり左打ちの源田壮亮主将ならまだしも。
つまりライオンズベンチもファイターズベンチも100%送りバントだと確信していた場面であるため、古賀捕手は最初からしっかりとバントの構えをして普通に落ち着いて一塁線側に転がせば良いだけだったのだ。それを下手に小細工をしてセーフティー気味にバントしてしまうものだから正確なバントを行うことができず、送りバントとしては最悪と言われる、捕手の足元に転がしてしまう結果になってしまった。
この繰り返されているバントミスに関しては、やはり渡辺久信監督代行もかなり御冠であるはずだ。実際バントミスをした次の打席では代打を送られ、8回裏以降は牧野翔矢捕手がマスクを被った。そして自滅した後には得てしてピンチに陥るのが野球の常であり、このバントミスの直後に今日も素晴らしいピッチングを見せてくれた渡邉勇太朗投手が今日唯一の失点を喫してしまう。
侍ジャパンにも選ばれた古賀捕手ではあるものの、現状では捕手としても打者としても決して一軍レベルではないと思われる。古賀捕手がこのような状態であれば、やはり炭谷銀仁朗捕手を多用すべきだし、牧野捕手にももう少しチャンスを与えてあげるべきだろう。
さて、一旦バントの話はさておき、古賀捕手の捕手としての能力も確認しておきたい。今日は4回に渡邉勇太朗投手にワイルドピッチが記録されているわけだが、このボールは捕手としては止めてあげなければならなかった。
このボールは恐らくは見た感じ、ホームプレートの捕手寄りのあたりでバウンドしたと思うのだが、古賀捕手は手を伸ばしてミットを上から被せるように捕りに行っていた。だがこの捕り方は野球では「虫取り」と呼ばれ、プロアマ問わず下手な捕手がやってしまう捕球のしかたなのだ。
この虫取りに関しては筆者は今シーズン序盤、古市尊捕手がやっているのを指摘したことがある。とにかく捕手としてはワイルドピッチやパスボールを防ぐためには虫取りだけは避けたいところなのだが、まだ経験の浅い古市捕手ばかりか、日本代表にもなった古賀捕手までも未だ虫取りをしているのだ。
渡辺監督代行に代わって以来は投手が捕手のサインに首を振ることが増えた影響で、配球に関しては交流戦前よりも改善しているとは思う。配球の意図がまったく見えないリードは少し減ってきたのかなという印象だ。しかしキャッチングやブロッキングに関しては古賀捕手はまだまだ技術不足だ。
一方牧野捕手のキャッチングを観察していると、牧野捕手ももちろんまだまだ完成された捕手ではないのだが、古賀捕手よりも大事にボールを捕りに行っていることが分かる。例えば今日の試合でもワンバウンドするかしないかという地面スレスレのところに来た投球があったのだが、牧野捕手は迷わず両膝を地面について大事に捕球をしに行っていた。こういう姿勢が非常に大事だと筆者は思うのである。
虫取りがダメなことは捕手だけではなく、プロ野球選手であれば投手でも他の野手でも知っていることだ。そのため今日の試合でも複数回虫取りする姿を見せていた古賀捕手に対し、投手陣からの厚い信頼があるとは筆者には思えない。投手からすれば内心、「そんな捕り方をするから止められないんだよ」、と思ってしまうこともあるだろう。
ライオンズが次世代の正捕手の育成が急務であることは筆者もよく理解している。しかし日本代表に選ばれたからと言ってこのまま古賀捕手を重用し続けていては、捕手陣の底上げをすることは難しいだろう。ミスを繰り返したらもうしばらくはスタメンでは使わない、くらいの厳しさを首脳陣も見せていかなければ、炭谷捕手レベルの正捕手を育成していくことはできないはずだ。
明日からはしばらくは牧野捕手にスタメンマスクを被らせて、古賀捕手と比べて勝率がどれくらいになっていくかを観察しても良いのではないだろうか。上述の通り、牧野捕手もまだまだ完成された捕手ではないわけだが、しかし古賀捕手がミスを繰り返している以上、やはり牧野捕手にもある程度まとまったチャンスは与えるべきだと思う。そうして切磋琢磨させることで、次世代の捕手を育てていきたいところだ。
だがその牧野捕手だが、こと打撃に関しては今日は内容が良くなかった。10回表には田中正義投手との対戦があったわけだが、初球のストレートの見逃し方が、「ストレートなんて待っていませんよ」、と言わんばかりの見逃し方だったのだ。その姿をファイターズバッテリーもよく見ていたのだろう。あっという間にストレートで追い込まれてしまい、最後もストレート、もしくはストレート系のボールで簡単に三振に倒れてしまった。
牧野捕手は捕手なのだから、もっと捕手脳を使って打席に立てればもう少し一軍でも良い打撃ができる確率を高められると思うのだが、牧野捕手の打席を見ていると、捕手経験をほとんど打席で活かせていないように見えるのだ。ファームではそこそこ打っていたわけだが、しかし一軍レベルの投手との対戦になると、現状では手も足も出なくなってしまい、打率も.071という悲惨な数字になってしまっている。
捕手脳とは簡単に言うと、対戦相手の投手を見ながら「自分ならこんなふうにリードをする」と考えながら次の1球を待つということだ。だが牧野捕手は完全にヤマを張りに行っており、ファイターズバッテリーのみならず、パテレ観戦の筆者にさえ変化球狙いなのがバレバレな状況だった。
恐らくこのヤマを張るというのは高山久コーチの指導によるものではなかっただろうか。現役時代の高山コーチは筆者の記憶が正しければヤマを張って打席に立つタイプで、そのヤマが当たる時にはよくヒットが出るのだが、一度ヤマがハズレ出すとまったく打てなくなるというギャンブラータイプの打者だった。
ひと昔、いや、ふた昔前のように投手の球種がせいぜい三つ四つだった時代であれば、状況によってはヤマを張っても良かったと思う。だが現代野球の投手たちが投げる球種は、例えば同じ投手が投げるスライダーだけでも3パターンの曲がり方があるほどだ。中には細かく分類をすれば10種類程度の球種を投げ分けてくる投手さえもいる。
そのため球種待ちをしてしまうとどうしても確率が低くなってしまうのだ。だからこそ現代野球ではヤマを張って球種待ちをするよりは、コースに合わせて素直にバットを出していくことの方が重要になってくる。
そして牧野捕手に関してはやはり捕手なのだから、初球の自らのストレートの見逃し方を冷静に省み、2球目以降はそこでパッとストレート待ちにシフトすべきだったのだ。しかしそうはせず、最後まで変化球待ちで行ってしまったために、変化球は途中で1球ボールゾーンに来たものの、残りのボールはストレート、もしくはストレート系のボールで押し切られてしまった。
もし牧野捕手が今日の1打席目で待ち方をパッと切り替えられていれば、元々打力のある捕手なのだから、一軍でも打てる捕手として活躍していけるはずだ。古賀捕手がミスを繰り返している今、牧野捕手にとってそれは大きなチャンスであるのだから、このチャンスを決して無駄にして欲しくはない。もし無駄にしてしまうようなことがあれば、牧野捕手も古賀捕手も共倒れという結果になり、ライオンズが浮上するキッカケさえも失ってしまうことになるだろう。