試合結果/2024年04月27日(土) ソフトバンク1 - 2埼玉西武 4回戦 みずほPayPay

2024年4月27日公開

福岡ソフトバンクホークス vs 埼玉西武ライオンズ/4回戦 みずほPayPayドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 R H E
Lions 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 4 0
Hawks 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 8 0

継投今井達也H本田圭佑H佐藤隼輔Hアルバート・アブレイユ●増田達至
敗戦投手増田達至 0勝2敗0S 3.00
本塁打金子侑司(1)
盗塁中村剛也(1)

ハイライト

現状を打破しようとしている姿勢を見せてこない松井稼頭央監督

今井達也投手

シーズンを通してこんな状態がいつまでも続くわけはないと、筆者はそう信じたい。今日は今季4試合目のホークスとの対戦だったわけだが、1-1の延長10回に増田達至投手が打たれ、またもや延長戦の接戦の末敗れてしまった。これでライオンズは延長戦14連敗となり、2リーグ制以降は2015〜2016年にかけてベイスターズが記録した13連敗を抜き、単独の日本ワースト記録となってしまった。

そしてこの試合先発マウンドに登ったのはエース今井達也投手だった。今日の今井投手はそれほど絶好調というようには見えなかった。しかしそれでも7回までに111球を投げて被安打5、奪三振6、失点1という素晴らしいピッチングを披露してくれた。

先発投手陣が軒並み先制点を許している中、1失点はしたものの今井投手はやはり先制点を許すことはしなかった。これこそがエースの姿であり、絶対的エースという存在になり得る投手の姿だ。

しかしその今井投手の好投を打線が援護することができない。金子侑司選手のソロホームランで3回に先制することはできたものの、結局出たヒットはそのホームランを含む散発の4安打のみで、7回8回には得点圏に走者を進めるもののそのチャンスを生かすことができなかった。

今井投手は今日が今季5試合目の登板で、防御率は0.77というずば抜けた数字を残している。にも関わらず今井投手には僅か2つの勝ち星しか付いていない。ここまでのピッチング内容と結果を見ると、今井投手は5試合目で5勝目を挙げていても不思議ではないし、実際にそうなっているべきなのだ。しかし打線が援護できなかったり、リリーフ陣が持ち堪えられなかったりなどで、僅か2勝に留まっている。

これが例えばホークスの津森投手になってくると、今季ここまでリリーフで10試合に登板し、すでに4勝目を挙げている。投球回数は僅かに10イニングスで10勝を挙げているのだ。一方今井投手は今日の試合で合計35イニングスとなったわけだが、35イニングスも好投を続けているのに僅か2勝だ。

こんな状態を続けていては、将来的にはこの今井投手でさえもライオンズはFAで失いかねない。もはやこれは打撃陣の好不調の問題ではない。同じ相手に対しいつも同じようにやられている状況は、これは打撃コーチの対策が成り立っていないことを意味する。

対戦相手に対する打撃コーチの対策が上手くいっていれば、打率.200程度の打者であっても勝負どころで何らかの良い働きをすることができるはずだ。もちろん毎打席というわけにはいかないが、しかし少なくとも今季のライオンズのように、チャンスを作りながらもことごとくそれを生かせないという状況にはならないはずだ。

平石洋介ヘッド兼打撃戦略コーチ、嶋重宣打撃コーチ、高山久打撃コーチの対策は果たして機能しているのだろうか。機能しているが相手がそれを上回っているのか、それともまったく機能していないのか。機能していないのであれば、やはり早急に二軍の小関竜也コーチらとの入れ替えも必要になるだろう。

ちなみに楽天イーグルスはおよそ一週間前に一・二軍の投手コーチを入れ替えてテコ入れを図っている。このような姿勢はチームに対しても、ファンに対しても、現状を打破しようとする意思をしっかりと伝えることができる。しかし今のところ松井稼頭央監督にはこのような動きが見られない。イーグルスの状態よりもはるかに下回っているにも関わらずだ。

金子侑司選手の今季1号ホームラン

平石コーチが持つ情報を生かせないライオンズと、山川選手の情報を生かしているホークス

ライオンズは2年連続で主力選手をFAで同一リーグ球団に流出させている。そして昨季は森友哉捕手から情報がすべてバファローズに知られ、今季は山川穂高選手から情報がホークスにもたらされている。FAで選手を失うと、戦力ダウン以上に情報流出が大きく響くケースが多い。

炭谷銀仁朗捕手のように、同じFAでもセ・リーグに移籍した場合はそれほどの影響は出ない。しかし同一リーグ、特に捕手を同じパ・リーグ球団に流出させてしまった場合はそのダメージは計り知れない。上述の森捕手のケース然り、2011年にホークスに移籍した細川亨捕手も然りだ。

現代野球は情報戦とも呼ばれるほど勝ち負けには情報が大きく影響している。これは数字で出てくるデータもそうだし、数字には出ない選手の特徴や癖などもそうだ。数字で出てくるデータに関しては敵も味方もしっかりと適切な対策を練ることができる。しかし数字には現れにくい情報に関しては対策を練るのが難しいし、そもそも相手にその情報を使われていることに気付かないケースも少なくない。

今季で言えば、山川選手はこれまでライオンズの若手選手にも多くのアドバイスを送っており、彼らの特徴をよく理解している。例えば性格面だ。「この選手は、このカウントになると力みやすい」というような情報はなかなかデータとしては現れない。だがそれを知る山川選手がその情報をホークスの投手陣と共有した場合、その癖はライオンズ側が知らず知らずのうちに利用されることになる。

もちろんライオンズ打線が上手く抑え込まれる相手はホークスだけではないわけだが、しかし少なくともライオンズは今季、ホークス相手にまだ一度も勝てていない。まだ4試合とは言え、流石にこれは「よくあること」という言葉で片付けることはできない。

ではどうすれば良いのか?それはもうFAでホークスから選手を獲得するしか対策はないのではないだろうか。ライオンズにはデータ室があるし、打撃戦略部門を担った兼任ヘッドコーチの存在もある。それでも上手く抑えられてしまっているのだから、やはりこれだけでは足りない何かがあるのだ。

するともうそれは、ホークスから選手を引っ張って来てその情報を生かしていくしかないと言える。そして実は筆者は、これこそ平石コーチに期待したことだった。平石コーチは2020〜2021年までホークスの一軍打撃コーチを務めていた。そのためホークス一軍打撃陣の特徴は完璧に熟知していたはずなのだ。

もちろん2023年から加入した近藤健介選手、今季から加入した山川選手は別としても、他のホークス一軍打者陣の多くの情報を持っているはずだった。しかしその情報をライオンズは上手く活かし切れていないのではないだろうか。もしくはホークスが平石コーチをライオンズに流出させてしまった時点で、平石コーチが持っていると思われる情報を即座に上書きしたのだろうか。確かにプロ野球レベルであればそれくらいのことはしてくるだろう。

筆者個人としては、ライオンズもイーグルスのようにコーチを入れ替えるなど何か手を打って来ないと示しはつかないと考えている。しかしだからと言って平石コーチらを一軍から異動させて欲しいという強い願望を持っているわけではない。なぜなら松井監督は平石コーチを絶対的に信頼しているからだ。

そして松井監督と平石コーチの間には、PL繋がりということ以上に強い信頼関係が築かれている。何らかのコーチ陣の入れ替えは必要だとは思うが、それは平石コーチではないのかなとも筆者は感じている。例えば一軍打撃コーチは左打ちの嶋コーチと、右打ちの高山コーチとなっている。そして二軍は野手総合コーチの小関竜也コーチも、打撃コーチの大島裕行コーチも左打ちとなる。そう考えると嶋コーチと小関コーチの入れ替えがまずは現実的となるのかもしれない。

コーチが選手に媚びる姿は弱いチームの典型的姿

正確なところは筆者には分からないし、筆者自身見逃している部分も多々あると思う。しかし今のライオンズからは現状を打破しようとする姿勢がファンにまで伝わって来ないのだ。例えば渡辺久信監督時代にはまだ、打てない時はダグアウト前でナインが円陣を組む姿がよく見られた。そして何よりもデーブ大久保コーチが命懸けで打線を機能させようと尽力されていた。これは以前も書いたことではあるが、デーブコーチは寝る時間も惜しんで対戦相手の対策を練り、それを重要な場面でネクストバッターズサークルで打者陣に耳打ちしていた。だがその命懸けの尽力の影響もあり打撃陣は球界屈指だったとは言え、実はデーブコーチはシーズン中から体調を崩されていたと言う。

今のライオンズには果たして、デーブ大久保コーチほど命懸けで戦っているコーチ、選手はいるだろうか。もちろん平石コーチも命懸けで頑張ってくれているのかもしれない。だがデーブ大久保コーチのその姿のように、今はそれが周囲にまであまり伝わって来ないのだ。

2008年のライオンズの打撃陣は、デーブ大久保コーチが寝る間も惜しんで対策を練ってくれていたことをよく知っていた。だからこそ選手たちもそれに応えようと必死になっていた。しかし今のライオンズにはそのようなコーチと選手の間の絆が薄ように見える。逆にコーチが、選手に媚びているように見えることさえある。

数日前の試合のことだ。チーム状況が非常に悪い中である選手が送りバントを決めた場面があった。これは確かにナイスバントだったと筆者も思っていた。そしてその選手はバントを決めて一塁でアウトになった後、一塁コーチャーズボックスからは離れた一塁ベンチ寄りを走ってダグアウトに戻ろうとしていた。

この時映像を見る限り、ボールデッドになっているようには見えなかった。つまりタイムはかかっていない状況だ。そんな状況下で、一塁の赤田将吾コーチはグラウンドに背を向けた状態で、わざわざコーチャーズボックスを出て、バントを決めた選手のところに駆け寄ってハイタッチをしに行っていた。この姿を見て、筆者はこれがライオンズが弱体化した原因ではないかと感じてしまったのだ。

映像上では分からなかっただけで、もしかしたらすでにボールデッドになっている状況だったのかもしれない。これに関しては確かに100%ではないのだが、しかし少なくとも筆者にはボールデッドになっているようには見えなかった。だとすると赤田コーチは決してボールから目を離すべきではないのだ。

一塁コーチの最大の役割の一つは常にボールがどこにあるのかを正確に把握しておくことだ。これにより隠し球や牽制でアウトになることを防ぐことができる。しかしこの時赤田コーチは少なくとも5秒以上はボールから目を離しているのだ。これは野球のプロコーチである筆者の目には「油断」として映っていた。

筆者はこれまでチーム単位の現場では監督代行、監督兼三塁コーチ、投手コーチ、戦略担当コーチという経験がある。そのため現場レベルのでのコーチ業についてもよく分かっているつもりなのだが、その筆者に言わせてもらえるのならば、ボールから目を離さなければならないような状況では、わざわざ一塁コーチがバントを成功させた選手にハイタッチをしに行くべきではないのだ。

そんなことをしている暇があるのなら、リアルタイムで正確にボールの場所を把握しつつ、進塁させた走者の動き、相手野手陣の動きをしっかり観察すべきなのだ。野球においてこれはたかが5秒ではない。されど5秒だ。5秒間集中してグラウンドを見渡せば、かなり多くの情報を得ることができる。

もちろんボールデッドであればグラウンドに背を向けても構わないとも言える。しかしこの場面では一塁手がボールを受けたあと、一塁手は投手にボールを返しており、ボール変更も要求されていなかったように見えたため、タイムはかかっていなかったものと思われる。そのため次の打者に対し投手が投げる直前にも、球審からタイムを解除する「プレー!」のコールもなかった。ただし、もし筆者が見逃していただけであれば、これに関してはあらかじめお詫びしておきたい。

このように弱いチームには弱いチームなりの理由が必ずあるのだ。逆に強いチームというのは「グリーンライト」のサインさえ存在しない。つまり俊足の走者に対し「走れると思ったら自由に走って良い」というサインのことで、近年のライオンズにはグリーンライトのサインが存在している。逆に強いチームというのは1球ごとにサインが目まぐるしく変わり、その1つのサインに対し全選手が同じ方向を向いてプレーすることができている。

筆者は監督としての伊原春樹氏はまったく評価していない。それは2002年時も同様だ。しかし三塁担当としての伊原コーチの仕事ぶりは本当に素晴らしかったと思っている。選手個々に対し、しっかりと同じ方向を向いてプレーすることを強いる厳しさを持っており、それを監督としてすることができなかったのが残念で仕方ない。だが今のライオンズに伊原コーチ、土井正博コーチのように決して選手に媚びない指導ができるコーチ、もしくはデーブ大久保コーチのように体調を崩されるほど命懸けで戦うコーチの存在は果たしてあるのだろうか。少なくとも筆者はそれを疑わしく思っている。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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