2024年4月28日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 12 | 0 |
Hawks | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1× | 3 | 8 | 0 |
継投/ 隅田知一郎〜 H佐藤隼輔〜 H本田圭佑〜 H水上由伸〜 ●中村祐太〜 H平井克典〜 ジェフリー・ヤン
敗戦投手/中村祐太 0勝1敗0S 0.00
盗塁/ 金子侑司(3)、 源田壮亮(1)
延長12回裏のまさに最終回、筆者は古市尊捕手を見ていてやや気になったことがあった。キャッチングのレベルがかなり低いのだ。ピッチャーが丁寧に低めを狙ってショートバウンドになってしまったボールを止めに行く際、上半身をボールに覆い被せるように前に倒しすぎている。だがこれはキャッチングが下手な捕手の典型的な動きだと言え、上手い捕手は決して見せない姿だ。
ショートバウンドを止めに行く際に覆い被さってしまうと、上半身のプロテクターを壁として使うことができなくなり、ボールを体に当てても前には転がらず、脇腹を抜けて後ろに転がってしまうのだ。そのためショートバウンドを上半身の壁で止めに行く際は、ある程度上半身は起こしておく必要がある。
しかし古市捕手はほとんどすべてのショートバウンドで上半身を覆い被せており、見ていて非常に危なっかしいと筆者は感じていた。そして二死満塁で柳田選手を迎えるという大ピンチで、古市捕手はジェフリー・ヤン投手に対し最後の1球として外角低めにスライダーを要求した。
ヤン投手はその要求通り、外角低めに逃げていくスライダーを投じたのだが、それが際どいコースではなく、完全なボールゾーンに行ってしまった。ただ、これが内側に入っていくよりは外側に外れた方が大怪我はしなくなるため、ヤン投手のボールは狙い通りではなかったものの、決して悪いものではなかった。
だがそのスライダーを古市捕手はミットの捕球面を下に向けて捕りに行ってしまう。これは野球では俗に「虫取り」と呼ばれる捕球方法で、これもやはり下手な捕手の典型的な捕り方だと言える。そしてその結果、ワンバウンドさえしておらず、ミットもしっかりと届いていた外角低めに逃げていくスライダーをパスボールしてしまった。そしてこのワンプレーによりライオンズはまたもや延長戦でサヨナラ負けとなってしまう。
古賀悠斗捕手の脳震盪がどの程度のものなのかは現状では分からないわけだが、古賀捕手が安心してプレーできる状態になった際は即座に古賀捕手を一軍に戻すべきだろう。残念ながら古市捕手のキャッチング技術は一軍レベルとは言えない。ただパスボール後に古市捕手が泣き崩れた場面には筆者もグッと来るものがあり、古市捕手もこの悔しさをバネにしてさらに良い捕手へと成長してくれるはずだ。
さて、またもや延長戦で敗れてしまったとは言え、今日の松井稼頭央監督は久し振りに執念の継投を見せてくれた。だが12回裏の継投策はリリーバーたちはまったく納得いっていなかったと思う。
まずは12回裏の頭からは中村祐太投手がマウンドに登ったわけだが、先頭打者に簡単にライト前ヒットを許してしまう。そして犠打で送られ一死二塁の状況でベンチは申告敬遠を選び、ここでピッチャーは中村投手から平井克典投手にスイッチされた。申告敬遠の直後に交代を命じられた中村投手の表情は「え?ここで代わるの?」とでも言いたそうなものだった。
そして平井投手は打者一人を見事センターフライに抑え一殺でお役御免となるわけだが、この平井投手もワンポイントで降板する際にはもっと投げたそうな不満げな表情を浮かべていた。もうここまで来ると松井監督も、体裁など気にしていられないということなのだろう。1%でも確率の高い投手を次々と投入していった。
そして最後はヤン投手がマウンドに登り、1本ヒットを打たれたことで二死満塁で柳田選手を迎えるという絶体絶命のピンチを迎え、上述した古市捕手のパスボールの場面へと繋がっていく。
今日の敗戦は監督の采配云々ではないと思う。もちろん久しぶりとなる12安打を放ちながらも2点しか取れなかったというのは非常に残念であったわけだが、しかし問題は一軍レベルではない捕手を重要な局面で起用せざるを得なかったということだ。ここがライオンズの選手層の薄さを感じさせられる場面となった。
そして12回裏という重要な場面で古市捕手を起用せざるを得なかったのは、11回表、一死から死球で出塁した今日の二番手捕手であった柘植世那捕手に代走高松渡選手が送られていたためだ。もちろん一死だったことから併殺打を避けたかったという意味もあっての代走だったとは思うのだが、盗塁をさせないのであれば慌てて代走を送る必要はなかったようにも見えた。
高松選手を代走起用したのであれば、打席の源田壮亮主将にサポートさせながら盗塁をさせても良かったと思う。だがそれをしないのであれば、代走は柘植捕手が二塁に進んでからでも遅くはなかっただろう。そもそも俊足で左打ちの源田主将であれば、二塁は封殺されたとしても源田選手までアウトになって併殺になる可能性は低かった。ただし違う見方をすれば、高松選手が盗塁をしなかったから源田主将がボールを見極めやすくなったと言うこともできるため、ここに関してはまさに紙一重だった。
だが盗塁をしなかったことによりこの場面、源田主将が二塁打を打ちながらも得点に結びつくことはなかった。このような起用が11回表にあり、もう残っている専任捕手が古市捕手しかいなかったということから、最も重要なイニングで古市捕手を起用せざるを得なくなってしまった。本来であればこのような場面でこそ抑え捕手として炭谷銀仁朗捕手を起用したいところではあるが、しかしこの試合では炭谷捕手はスタメン出場で1安打、1犠打、1四球と活躍し、すでにベンチに下がってしまっていた。
さて、ライオンズは相変わらず勝つことができずに苦しんでいる。だが打線は少しずつ「らしさ」を取り戻しつつあるのではないだろうか。まず四番ヘスス・アギラー選手が8回、10回、12回と重要局面で3打席連続ヒットを放ち上手くチャンスメイクをしてくれた。しかもライト前、レフト前、センター前と非常にバランス良く打っており、アギラー選手のコンタクト能力の高さを改めて実感させられた。
そして五番佐藤龍世選手も1安打、1犠飛、2四球としっかりと活躍し、10回、12回に選んだ四球の価値は非常に高かい。得点にこそ結びつくことはなかったが、このように重要な場面で冷静に四球を選べる選球眼の高さは、クリーンナップを打つに相応しい能力だと思う。
そして一番金子侑司選手も1安打、1四球で最近ようやくライオンズの一番打者が機能し始めてきている。そして二番平沼翔太選手もやはり1安打、1四球と良いところを見せてくれて、金子・平沼コンビになってからは、一・二番が非常に上手く回るようになってきた。
そして若き中距離砲である六番岸潤一郎選手もしっかりと2安打を放っている。岸選手に対し好感を持てるのは、ホームランを打った直後でも決してもう一本ホームランを求めに行かないところだ。一流の打者でもホームランを打った直後の打席では大振りをしてしまいがちなのだが、岸選手は決してそのような姿を見せない。そのため将来的にはホームラン数こそ多くはなかったとしても、非常に有能なクラッチヒッターへと成長していくのではないだろうか。
さて、一転心配なのは七番外崎修汰選手だ。1打席目こそは二塁打を放ったものの、その後の打席では内容の悪い凡退が5打席続いてしまった。これがもう少し内容のある凡退であれば良いのだが、2打席目以降の凡退はどれも、ヒットになりそうにないものばかりだった。
そして12回表、打線が上手く繋がって一死満塁という場面で外崎選手はこの日6回目の打席に入った。これはもう野球未経験者であっても野球ファンなら理解するところではあるが、この場面最も避けなければならないのは併殺打だ。そのため打者としてはとにかく「外野フライで十分」という考えを持って打席に入らなければならない。そうすれば目付は自然と高めに行くわけだが、外崎選手は相手バッテリーの術中にはまり引っ掛けてしまい、簡単にボテボテの三塁ゴロを打たされ敢えなくホームゲッツーとなり万事休す。
この場面はとにかく掬い上げるくらいの気持ちが必要だった。だがそのような明らかな対策さえ見せることができず、最近の外崎選手は簡単に打たされているケースが非常に多い。ちなみにライオンズで最も犠牲フライを打つのが上手いのは栗山巧選手であるわけだが、栗山選手はまさに犠飛が欲しい場面では追い込まれても低めはファールで逃げながら、より高めのボールを振ってフライを上げるのが非常に上手い。そしてこのような場面では栗山選手は、明らかにフライを上げようとしているスウィングを見せてくる。
だが今日の外崎選手のスウィングからはそのような姿勢はあまり強く感じることができず、「何としてもヒットを打って決めてやろう」というような逸ったスウィングをしているように見えた。その結果自分のポイントにボールが来るまで待つことができずに引っ掛けてしまい、サードゴロ併殺という最悪の結果に終わってしまう。
確かに外崎選手の守備力は高いわけだが、ライオンズもそろそろトノゲン後の次世代二遊間を本気で育て始めなければならない時期に差し掛かっている。それならば不調の外崎選手はしばらくベンチスタートにし、平沼選手をレフトではなくセカンドとして起用しても良いのではないだろうか。そして外野はもっと、外野専任の若い選手たちに経験を積ませていくというのも一つのやり方だと思う。
外崎選手は昨季までの過去5シーズンはいずれも満足のいく打撃成績を残せてはいない。そしてある程度良い成績を残せているのも2018年と2019年の僅かに2年だけなのだ。そう考えると確かに守備力は高いものの、ここまで辛抱強く重用する必要はないのではないだろうか。また、筆者個人の感想としては年俸1億6000万円に相応しい活躍はまったくできていないように思える(2023年から4年契約)。
外崎選手ももう若手と呼べる年齢ではなく、今年は32歳を迎えるシーズンとなっている。つまり2018〜2019年と同じことをしようとしていてはダメだということだ。ベテランならベテランらしく、栗山選手のように場面によって打席での思考を柔軟に変えられる選手になっていかなければならない。ベテランである外崎選手が今日の12回のような内容の薄いバッティングをしているようでは、外崎選手を手本としようとする若手選手も育たなくなってしまう。
だからこそ筆者はベテラン外崎選手に対しては調子の良し悪しだけでプレーをするのではなく、調子が悪い時には悪い時なりの、調子が良い時とは異なった思考で打席に立つことができる選手になってもらいたいと期待しているのだ。そして外崎選手がそのように状況に応じてバッティングを変える姿を見せていけば、若手選手もそれを手本とし、もっと状況に応じた柔軟なプレーができるようになるだろう。
そのためにも筆者は外崎選手には、調子が悪い今だからこそ状況に応じたプレーを見せてもらいたいのだ。例えば今日の12回の場面では1点取れれば十分だったのだ。そう考えると自らの判断でセーフティスクイズをするというのも、最低限併殺を避けるという意味ではなしではなかったと思う。外崎選手にはぜひとも、ヒットを打つことだけがバッティングではないという姿勢を若手選手に示せるベテラン選手になっていって欲しいと筆者は期待したい。