2024年4月12日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 7 | 0 |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 |
継投/ 今井達也〜 ●甲斐野央〜 佐藤隼輔
敗戦投手/甲斐野央 0勝1敗0S 3.00
因縁の相手ホークスとの今季第一ラウンド、先発マウンドに登ったのは開幕投手今井達也投手だった。エースとしてのピッチングが期待されたわけだが、その期待を上回る凄みのある素晴らしいピッチングを披露してくれた。
試合展開はまさに手に汗握る投手戦で、今井投手だけではなく、ホークス東浜投手のピッチングも素晴らしかった。ライオンズ打線は7回に入るまで1本もヒットを打つことができず、東浜投手の変化球を本当に上手く打たされ続けた。まさに熟練のピッチングだったと言えるのではないだろうか。
そして今井投手に関しては最終的には7イニングスで111球を投げて被安打4、奪三振10、四球3、失点0で、防御率は0.43まで向上した。7回表を投げ終えた時点ではまだ0-0のスコアレスだったのだが、111球に達していたこともありその回ダグアウトに戻ると豊田清コーチ、松井稼頭央監督からねぎらいの言葉をかけられ、それにより降板が決定的となった。
ライオンズとしてはもっと早く今井投手を援護したかったわけだが、しかし初ヒットは7回まで待たなければならなかった。まず一死から好調外崎修汰選手がレフト線を破る二塁打で出塁し、ヘスス・アギラー選手が倒れた後中村剛也選手が申告敬遠で二死二塁一塁となり、続く佐藤龍世選手が見事ライト前にタイムリーヒットを放った。
その瞬間今井投手はベンチで雄叫びをあげ、帽子が飛ぶほどの勢いでダグアウトを叩いて喜んだ。だがその喜びも束の間だった。8回表にはホークスから移籍してきた甲斐野央投手が二番手として登板したのだが、先頭打者に内野安打を打たれると送りバントで一死二塁とされ、柳田選手に同点打を浴びてしまう。これで無情にも今井投手の勝ち投手の権利は消えてしまった。
マウンド上の甲斐野投手の表情は落ち着いているようにも見えたが、しかし内心は穏やかではなかったはずだ。不本意とも言える形で愛着のあるホークスを離れライオンズに移籍して来て、その古巣との初対決だったのだ。冷静を装いながらもいつも以上に力みが生じてしまったとしても誰も甲斐野投手を責めることはできない。
そしてそのマウンドではまさに因縁とも言える甲斐野投手と山川選手の対決が実現した。結果的には甲斐野投手が見逃し三振に打ち取り、この因縁の対決を制した。そして移籍後初めてベルーナドームのグラウンドに立った山川選手には、これまでベルーナドームでは聞いたことがないほどのブーイングが浴びせられた。しかしこれは山川選手のこれまでの行動からすれば当然のことだろう。
さて、話を甲斐野投手に戻すと、やはりこの試合はいつもの甲斐野投手のピッチングではなかった。力が入ってしまったせいかボールが少しずつ甘く入り、それにより結果的に逆転を許してしまう。本当に厳しいピッチングとはなってしまったが、これにより甲斐野投手の信頼がすべて失われるわけではない。明日からもリードしている場面の8回には、松井監督も迷わず甲斐野投手を送り出すはずだ。
そして筆者は思うのである。やはり選手を強くするのは日本シリーズの舞台であると。ホークスの柳田選手や近藤選手ら主軸打者、主戦投手たちの多くが日本シリーズを経験しており、さらにはWBCでも主軸として世界一に貢献している。一方ライオンズで日本シリーズを経験しているのは栗山巧選手、中村剛也選手、炭谷銀仁朗捕手だけで、今全盛期の選手で日本シリーズ経験者は一人もいない。強いて言えばホークス時代の甲斐野投手だけだろう。
ライオンズの選手たちは大舞台を経験していない分、ホークスの主力よりもここぞという場面に弱いように見える。こうして考えるとライオンズの新たな黄金時代は、今年の秋に日本シリーズを勝ち抜いてようやく始まると言うべきなのかもしれない。
黄金時代のライオンズはほとんど毎年、当たり前のように日本シリーズを戦っていた。その結果勝負どころや球際に強い選手がどんどん育っていき、他チームの追随を許さない最強チームを作って行くことになる。そして勝負どころに強い選手が増えたことで当時のライオンズは接戦に非常に強く、僅差のゲームでしっかり勝ち切ることが多く、それがそのまま2位以下との大きなゲーム差として現れていた。
ちなみに松井監督は1997年、1998年、2002年に日本シリーズ、2007年にワールドシリーズを経験しているが、初めてチャンピオンシップでの勝利を経験したのは楽天イーグルス時代の2013年だった。
ライオンズは松井稼頭央選手がメジャー移籍をした後、2004年と2008年に日本一を達成している。だが2004年はもう20年前であり、2008年の優勝を経験している主力たちは当時の球団本部長らの心ない言葉により、軒並みFA移籍をしてしまった。
2008年に優勝を経験した主力選手たちのFA移籍は、ライオンズを一気に弱体化させていくことになる。その頃の先発三本柱である涌井秀章投手、岸孝之投手、帆足和幸投手はすべてFAでパ・リーグ他球団に移籍してしまい、打者陣でも中島裕之選手はメジャーを目指し海を渡り、片岡易之選手は巨人、正捕手だった細川享捕手もホークスに移籍してしまった。
本来であれば彼ら日本シリーズ経験者が後進たちにその経験を語ることにより、強さを引き継いでいかなければならないわけだが、大量の主力流出によりそれが難しくなってしまった。それが近年の日本シリーズ巧者であるホークスと、日本シリーズを経験さえできていないライオンズの差としてそのまま現れてしまっている。
だからこそライオンズは今季は、何がなんでも日本シリーズに出場して日本一を奪還しなければならない。今ライオンズは、ようやく選手の流出が収まっている。それも渡辺久信GMが内外からチームを作り替えたことが奏功しているわけだが、ライオンズ愛を持つ選手が増えた今だからこそ日本シリーズに進み、その選手たちをさらに強くしていかなければならない。
そして先日はリードオフマンの打率が深刻なほど低いということを書いたわけだが、今日の試合でも一・二番の出塁は0だった。これではやはり1点を取るのがやっととなってしまうため、今後勝っていくためには一番打者に関しては何かカンフル剤になる存在の選手が必要になってくるだろう。
残念ながらホークスとの第一ラウンドは今井投手の完璧なピッチングがありながらも1-2で敗れてしまったわけだが、しかし明日は隅田知一郎投手、明後日は髙橋光成投手がライオンズを勝利に導いてくれるはずだ。今日は非常に悔しい敗戦となった分、明日・明後日はチームもファンも気を取り直してホークスを撃ち落としていきたい!