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2024年7月 6日公開

長打率ベスト10入りしている人数が順位に直結しているパ・リーグ

埼玉西武ライオンズ vs 千葉ロッテマリーンズ/10回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

継投●隅田知一郎ジェフリー・ヤン松本航本田圭佑
敗戦投手隅田知一郎投手 6勝6敗0S 3.10
盗塁/高松渡(8)

逆転を許してしまった継投策は決して間違いではなかった

長打率ベスト10入りしている人数が順位に直結しているパ・リーグ

今日の敗戦はライオンズにとってはダメージが大きかった。7回裏までは3-1とリードし、ようやく今季初めてマリーンズに勝てるのではないかとも思われたが、8回表にまさかの3失点で逆転を許し、そのまま3-4で敗れてしまった。

8回表、それまで安定したピッチングを見せていた隅田知一郎投手が突如崩れてしまい、一死から連打を許し1失点し、なおも三塁一塁という場面でピッチャーはジェフリー・ヤン投手にスイッチされた。結果的にヤン投手が打たれ、隅田投手が残した走者が全員還ってしまい、渡辺久信監督代行はこれを継投ミスだと認めた。

しかし筆者は継投ミスだとは思わなかった。もちろん打たれてしまったわけなので、結果論から言えば継投ミスになるわけだが、それでもこの場面で出す投手としてはヤン投手がベストだったと筆者は考えている。その理由は単純に、この場面では内野ゴロでも外野フライでも1点入って同点となってしまうため、どうしても三振が欲しい場面だったのだ。

ヤン投手の奪三振率は9.00と高いため、三振が欲しい場面でのヤン投手の投入は最善の継投だったと言える。結果的に打者1人に投げて走者一掃のタイムリーヒットを打たれて降板となってしまったわけだが、しかし首脳陣もこの場面ではヤン投手のハイジャンプに期待を寄せていたはずだった。

継投という意味では、隅田投手は7回までで降板させるべきではなかったかと思われることもあるかもしれない。しかし隅田投手の投球数は8回表が始まる時点でまだ84球だった。さすがに好投を続けていた先発二番手レベルの投手を84球で降板させるという判断は、12球団のどの監督でもしなかったはずだ。

豊田清投手コーチとしても、できれば今日の試合は隅田投手1人で投げ抜いてもらいたかったはずだ。もしくは7回表を終えた時点で最低でもあと1イニング投げてもらい、最終回をセーブがつく場面でアルバート・アブレイユ投手に託したいというプランを描いていたはずだった。

だが残念ながら今日の試合に関しては投手陣が期待通りの仕事を果たすことができなかった。もちろんこのような試合はシーズンの中には何度かはあるわけだが、しかし近年のライオンズは終盤で簡単に逆転されてしまうケースが目立つ。今季に関しては甲斐野央投手が計算外の肘痛の再発もあったため、ブルペンは開幕時の想定以上に厳しくなっている。

その甲斐野投手も肘の痛みはなくなったようだが、まだ違和感が残っているために復帰後2試合ファームで投げただけで、また実践からはしばらく遠ざかっている。だが中距離のキャッチボールができるまでは回復してきているため、今日のような試合を減らすためにも、やはり甲斐野投手にはできるだけ早く復帰してもらいたいところだ。

長打率ベスト10入りの人数が順位に直結しているパ・リーグ

一方バッティングの方は今日も11安打を放ち3点を奪った。四球も3つもらっているため、正直なところとしてはもう少し点は取れそうだったのだが、1回、4回、5回はチャンスを作りながらも得点には繋がらず、点が入ったのは3回と7回のみだった。

もし4回、もしくは5回のチャンスで1点でも取れていれば試合展開はもう少し楽になっていただろう。だがあと1本がなかなか出ずに、次の1点が入ったのは7回だった。それでも最近はとりあえず3点くらいなら取れるようになってきたのだから、交流戦時と比較をすれば打線は間違いなく上向きだと言って良いだろう。

しかしそれでも圧倒的に足りていないのが長打力だ。今日もホームランが出ないばかりが、11安打はすべて短打だった。やはりこれが11安打を打ちながらも3点しか取れない原因となっている。一方マリーンズは11安打中3本が長打となっており、これらの長打がいずれも得点に結びつき、ヒットの本数はライオンズと同数ながらも得点はライオンズよりも1点多く取ることができた。

ようやくヒットが出るようになったきたライオンズの次の課題は、ヒットで出た走者を如何にして還すかということになるわけだが、そのためにも必要なのが長距離砲だ。今のライオンズ打線で長距離砲と呼べるのは中村剛也選手だけで、その中村選手もさすがに近年は目に見えてホームラン数が減ってきてしまっている。

だからこそファームで元気にプレーしているフランチー・コルデロ選手を六〜七番という楽な打順でDH起用し、三振かホームランかというようなバッティングをさせれば良いと思うのだが、今のところコルデロ選手が再昇格してくる気配は感じられない。

ちなみに今ライオンズで最も長打率が高いのは.376の岸潤一郎選手であるわけだが、もし岸選手が規定打席に到達した場合、この数字は現在パ・リーグ12位という数字になる。また、長打率ベスト10に選手が入っていないのはライオンズとバファローズだけで、この長打の少なさが順位だけではなく、リーグ5位、6位という得点数にも直結してしまっている。

一方リーグトップの320得点を挙げているホークスの場合は、長打率ベスト10に4選手がランクインしている。また、得点数リーグ2位のマリーンズも3人がベスト10入りしている。このように、長打を打てる選手の人数が得点力と順位に直結しているため、ライオンズが今後浮上していくためにどうしても欲しいのが長距離砲ということになる。

野村大樹選手がライオンズに来たことで覚醒してくれれば良いのだが、しかしそこに過度な期待を寄せるわけにはいかない。いくら選手層の厚いホークスとは言え、自ら売りと言っているバッティングでこれまでほとんど活躍できなかった野村選手なのだから、今季の救世主として期待するのは少し難しいだろう。

渡辺久信GMはこのような小粒のトレードではなく、もっと大きなトレードを成立させるべきだ。例えばかつての秋山幸二選手、糸井嘉男選手のようなS級レベルが絡んでくるトレードを仕掛けなければ現状打破は難しいし、抜本的な血の入れ替えもできないだろう。

だからこそ、今季ここまでまったく機能していない髙橋光成投手平良海馬投手を放出してでも、確実にクリーンナップを打てる長距離砲を連れてくるべきなのだ。だが7月31日まではまだ時間があると含みを持たせた言い方をしている渡辺GMなので、恐らく今現在進行中のさらなるトレードや補強策があるのだろう。筆者はその次なる一手に大きな期待を寄せたい。

とにかく怪我が多い近年のライオンズの選手たち

さて、弱り目に祟り目ではないが、今季のライオンズは故障者が本当に多い。パッと名前が出てくる選手だけでも髙橋光成投手、平良海馬投手、甲斐野央投手、外崎修汰選手佐藤龍世選手平沼翔太選手山村崇嘉選手、アギラー選手、ブランドン選手村田怜音選手蛭間拓哉選手若林楽人選手、児玉亮涼選手と、これだけの人数が今年新たな怪我をしている。

さすがにこれだけ故障者が多い状態では選手のやりくりだけでも苦労するし、二軍以下の対外試合ではチーム編成が困難となり実際すでに数試合が中止となっている。ライオンズをまともに戦えるチームにするためには、これだけの人数になっている故障者を減らすことも大切ではないだろうか。

そしてそのためにも現在ライオンズで活躍するPT(理学療法士)の人数は少なすぎる。今は4人しかいないPTを、倍の8人に増やすくらいのことをしなければ故障者を減らすことは難しいはずだ。筆者は自らのクライアントである選手たちには常々「怪我をしないことが上達するための一番の近道」だと教えている。無事是名馬という言葉の通り、野球選手も怪我をしないことが何よりも大切なのだ。

逆を言えば怪我に弱い選手は名選手になることはできない、ということだ。ほとんどBクラスに落ちることがなかった時代のライオンズは怪我に強い選手ばかりだった。その生き残りである栗山巧選手中村剛也選手も、まったく怪我をしなかったわけではないが、ほとんど怪我をしなかったという部類に入る。そしてあれだけ細身だった西口文也現二軍監督も、21年間ほとんど怪我をすることなく投げ続けた。

だが今のライオンズの選手はすぐに怪我をするし、怪我までいかなくても違和感という言葉により試合に出られない状態になってしまっている。ちなみに筆者はプロコーチとして、違和感という言葉に強い違和感を持っている。プロ野球選手は自らの体を商売道具として戦っているのだから、違和感という非常に相手に伝わりにくい言葉を使うのではなく、痛いのか痒いのかもっとハッキリと自分の体を理解すべきだ。

そしてそもそも、自分の体をしっかりと理解できていないからこそ簡単に怪我をしてしまうのではないだろうか。それともう一点、今も昔も筋トレに頼った体づくりをするとほぼ確実に怪我に弱い選手になってしまう。筋トレをすることはもちろん大切だが、筋トレに頼った体づくりをすることは正しいとは言えない。

また、今のライオンズには体、特に股関節が硬い選手が多すぎる。スポーツ科学的には股関節が硬いほど怪我のリスクが高まるわけだが、ピッチャーを見ていてもバッターを見ていても、体が硬いなと思える選手が多い。このあたりもトレーナーを中心にしっかりと改善していかなければ、今後も怪我人を減らすことは難しいだろう。

これだけ怪我人が多い中で戦わなければならない渡辺監督代行も大変だとは思うが、しかしこれからどんどん血を入れ替えていくことにより、怪我をしにくい選手をチーム内に増やしていってもらいたい。これも今ライオンズにとっては急務だと言えるポイントと言って間違いないはずだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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