山川穂高選手が真の四番打者となりアンチを黙らせるのに必要な「C」マーク

2022年10月15日公開

山川穂高選手が真の四番打者となりアンチを黙らせるのに必要な「C」マーク

アンチがほとんどいない中村剛也選手に対し、多くのアンチを抱える山川穂高選手

山川穂高選手の真価が問われるのはまさに来季、2023年シーズンだと思う。山川選手はまさに辻発彦監督の起用によって開花した選手だった。だが来季ライオンズの指揮を執るのは松井稼頭央新監督であり、山川選手にしても森友哉捕手にしても、来季も3・4番を前提に考えられているという保証はない。

松井稼頭央2軍監督が1軍ヘッドコーチに転身した一年前、松井ヘッドコーチは早々に山川選手に対し一年間四番を打てる準備をしておくようにと求めた。しかしこれは辻監督が手塩にかけて育てた山川選手を蔑ろにするわけにはいかないという忖度もあったはずだ。だがシーズンが始まると山川選手は早々に怪我をして離脱してしまっう。それでも最終的には41本塁打、90打点で二冠に輝いたのはさすがと言うべきだろう。

山川選手はネット上にかなりのアンチを抱える選手の一人だ。かく言う筆者も山川選手には厳しい内容の記事を書くことが多い。だが誹謗中傷は決して書かない。筆者は、山川選手がライオンズの四番にこだわりを持っているため、ライオンズの真の四番打者を見る目で見ているだけだ。だがネット上には山川選手に対する心ない誹謗中傷で溢れていると言う。筆者はこれを有名税だとは決して思わない。

山川選手にアンチが多い理由として考えられることとすれば、スポーツ紙に切り取られている山川選手のコメントの多くが、個を重視しているように聞こえるものばかりだからだと思う。

一方中村剛也選手にはアンチが非常に少ない。これはやはり中村選手が個を優先しているように聞こえるコメントを残すことが絶対にないからだろう。口数は非常に少ない選手ではあるが、時々「打てて良かったです」以外のコメントを残す時は、だいたい「チームが勝てて良かったです」という趣旨の言葉が多い。山川選手のように「自分が打てば勝てる」「三冠王を狙いたい」というような個ありきの言葉を残すことがまったくないのだ。

そのためライオンズのチーム内でも、球団内でも、ライオンズに携わる様々な方の中でも、ファンの間でも、中村選手を嫌う者はほとんどいない。筆者個人はファンであるのと同時に「ライオンズに携わる様々な人間」のうちの一人であるわけだが、幾度か中村剛也選手とお話をさせていただいても、口数は少ないながらも本当に好感を持てる人物なのだ。そして何よりも一時期、奥様の誕生には必ずホームランを打つという姿が筆者の脳裏に焼き付いて離れない。

山川選手はこのままではライオンズの真の四番打者になることはできないだろう。このままではただたくさんホームランを打てる選手、という枠の中で選手人生を歩むことになってしまう。だがそれでは本当にもったいない。これほどホームランを打てる打者などそうはいないのだから、山川選手には今季の二冠になど囚われることなく、チームを優勝に導ける真の四番打者になってもらいたい。

だがこれだけの実績を持っている選手がここから内面的に変わっていくことは容易くはないだろう。一度手にした栄冠を簡単に脱ぎ捨てられる者などそうはいない。だがもし山川選手にそれができるのであれば、山川選手はただホームランをたくさん打てるだけの選手ではなく、ライオンズを日本一に導ける真の四番打者へと進化していけるはずだ。

松井稼頭央選手が松坂フィーバーに嫉妬せずに済んだ理由

そこで筆者がふと思い出しのが、1998年オフの松井稼頭央選手のことだった。この年の松井稼頭央選手は日本シリーズでは敗れはしたものの、MVPを獲得する大活躍を見せていた。だがその輝かしいMVPが霞んでしまう出来事がこのオフのライオンズには起こっていた。もちろん読者の皆さんも覚えていると思うが、このオフ、東尾修監督の懸命な説得により横浜高校の松坂大輔投手がライオンズ入りを決意した。

松井稼頭央選手としてはMVPを獲得したにも関わらず、話題をすべて高卒ルーキーに持っていかれてしまうことはさすがに面白くはない。春季キャンプが始まっても注目されるのはMVPの松井稼頭央選手ではなく、高校の卒業式もまだ迎えていない松坂大輔投手ばかりだった。この状況に気を揉んで何とかしようと苦心したのが東尾修監督だった。

東尾修監督は、松井稼頭央選手にはまださらに一段も二段も進化して欲しいと考えていた。だが可能性は低いとしても、万が一でも松井稼頭央選手が松坂フィーバーに嫉妬でもしてしまったら大事となる。そこで東尾監督は春季キャンプ中に松井選手を呼び出し、練習を終えた後の松坂投手の面倒を見るように言い付けたのだった。

地位が人を育てるとはよく言われることだが、それはまさに東尾監督がその時狙ったことだった。松井選手に松坂投手の面倒を見させることにより、松坂投手が嫉妬の対象ではなく、松井選手にとっての可愛い後輩になるよう仕向けたのだった。南郷に行けば松井選手も毎年お世話になっている各所に挨拶回りをしに行っていたわけだが、そこに松坂投手を同行させたりもしていたようだ。

こうして松坂投手はMVP選手の嫉妬の対象になることなく、後に松松コンビが誕生していくことになる。松坂投手の兄貴分としてはデニー友利投手や石井貴投手の名が挙がるが、実は入団直後のキャンプで松坂投手をグラウンド以外の場で面倒を見ていたのは松井稼頭央選手だったのである。

松井選手は元々素晴らしい人柄を持っている選手ではあったが、この東尾監督の計らいにより、松井稼頭央選手は人格者として球界を牽引していくスター選手となっていった。

山川穂高選手が真の四番打者になるために必要なのはキャプテンマーク

こうして振り返ってみると、山川選手も自主トレでは森捕手と仲良くやっているではないかという意見も出てくるとは思う。だがこれは松井選手と松坂投手の関係とはまったく異なる。山川選手と森捕手の関係はどちらかと言えば仲の良いチームメイト、仲の良い友だちといった部類だ。ここには松井選手と松坂投手の間にあるようなある種の師弟関係は存在していない。

山川選手が今後真の四番打者になっていくためには、人格者としての一面も見せなければならないと思う。だが山川選手と当時の松井稼頭央選手のキャラクターはまったく異なる。松井選手は非常にクールな性格だが、山川選手はどちらかと言えばオールスターゲームで馬のマスクを被っていたようにおちゃらけることが多い。そのため山川選手が松井選手になることはできない。

それならば山川選手を来季は主将に任命するのはどうだろうか?上述したように地位は時として人を育てる。山川選手に主将という地位を任せることで、山川選手はもはや個を優先することはできなくなる。主将の役割はチームを勝たせて和すことにあるため、山川選手も「自分がホームランを打てばチームは勝てる」という個ありきの発言をしなくなり、アンチもそれほど騒がなくなるのではないだろうか。

そして個を主張し過ぎることなくチームを牽引し、日本一に導くことができれば、その時山川選手もただたくさんホームランを打てる打者ではなく、ライオンズの真の四番打者の顔をしているはずだ。そしてその時は同時に、アンチにしても筆者にしても、きっと手のひらを返すような称賛を山川選手に送っているはずだ。

2020年からは源田壮亮選手がキャプテンマークを付けてきた。だが源田主将の3年間でライオンズはリーグ優勝を果たすことはできず、2021年に関して言えば最下位に転落してしまった。もちろんこれは源田主将の責任ではないわけだが、しかしキャプテンとして源田主将は何らかの責任を感じていたと思う。

だからここは一度源田主将のユニフォームからキャプテンマークを外し、もっと伸び伸びとプレーさせてあげてはどうだろうか。そうすれば源田選手もキャリア初の3割をマークできるかもしれない。

逆に山川選手にキャプテンマークを付けさせてチームの顔として言動させることにより、松井稼頭央新監督には山川選手を真の四番打者へと進化させてあげて欲しい。

山川選手はライオンズの四番であるため、筆者は他の選手よりも山川選手に対しては多くを求めている。ただ打てるだけでは真の四番打者とは呼べない。だからこそいつも山川選手に対しては厳しい記事を書いているのだが、しかし筆者は魚屋に行って野菜を買うようなことはしない。

山川選手がただホームランを打てるだけの選手で終わってしまうのか、それともチームを優勝に導くことができる真の四番打者になれるのかどうかは、まさに監督が変わるこのタイミングにかかっている。もし山川選手自身がこのタイミングで今までとは違った自分を見せることの必要性を感じたならば、きっと来季の山川選手はチームを日本一に導く真の四番打者になるだろう。

だがこのタイミングでも「今までとやることは変わらない」というスタンスを貫くならば、山川選手はただホームランをたくさん打てる凄い打者という枠の中だけで残りの野球人生を歩んでいくことになる。

14年間も日本シリーズから遠ざかっているライオンズ

四番の真価はホームラン数では決まらない。四番の真価はその活躍によりチームを日本一に導けるかどうかだ。だが山川選手はまだ日本シリーズに出場した経験を持たない。山川選手が入団したのは2014年で、ライオンズが前回日本シリーズで戦ったのは2008年だ。パ・リーグには6球団しかないのにも関わらず、ライオンズは14年間も日本シリーズから遠ざかっている。

実は西武ライオンズ史に於いて、ライオンズがここまで長期に渡り日本シリーズから遠ざかったことはなかった。森祇晶監督勇退後、東尾修監督は僅か3年でチームを日本シリーズに導き、その後は2002年に伊原春樹監督、2004年はシーズン2位から伊東勤監督、そして2008年には渡辺久信監督がNo Limit打線でライオンズを日本シリーズに導いている。だがそれ以降14年、ライオンズは日本シリーズから遠ざかってしまっている。

その間幾度となく日本シリーズを戦ってきたホークスに対し、ライオンズナインで日本シリーズ経験があるのは中村剛也選手と栗山巧選手のみだ。この経験値の差がCSでライオンズがホークスにまったく勝てないという現実を生み出してしまっている。

だがその経験値以上の違いとして、ホークスには絶対的エースと真の四番打者がいるのに対し、今のライオンズには絶対的エースも真の四番打者もいない。だからライオンズは短期決戦でホークスに太刀打ちすることができない。しかし山川選手が真の四番打者へと進化してくれれば、来季のCSではまた違った戦いを見せられるようになり、2008年以来の日本シリーズに進出することもできるだろう。

そしてそのきっかけとして、キャプテンマークを山川選手に付けさせることが山川選手にとっても、チームにとってもベストであると筆者は考えている。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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