2024年2月20日公開
武内夏暉投手のピッチングを見ていると、本当に開幕ローテーションに入ってくるのではないかと思えてくる。もちろんファンとしては入って欲しいわけだが、しかし開幕ローテ6人という枠には現状決して空きがあるわけではない。
髙橋光成投手を筆頭に、平良海馬投手、今井達也投手、隅田知一郎投手、松本航投手、與座海人投手と、先発として実績のある投手の頭数はしっかりと揃っている。さらには渡邉勇太朗投手や青山美夏人投手、ボー・タカハシ投手らもローテーション入りを狙っている。
ライオンズの先発投手陣はまさに12球団屈指とも呼べるレベルになってきたわけだが、ルーキーである武内投手がこの枠に入り込むことは決して簡単なことではない。だが武内投手が投げているボールを見ていると、開幕ローテーションに加わってもまったく不思議ではない質なのだ。
松坂大輔臨時コーチも「直すところがない」と評価したほどで、ルーキーながらも武内投手はすでにプロレベルの実力を備えていると言って良いだろう。以前のコラムでも書いた通り、武内投手には左投げの西口文也投手というようなイメージを筆者は持っている。恐らくは順調にいけばルーキーイヤーから7〜8勝程度は挙げられるのではないだろうか。
ちなみに西口投手は、ルーキーイヤーは2勝で終えているのだが、2年目には16勝を挙げ、タイトル争いに絡む活躍を見せている(この年の最多勝は17勝を挙げた日本ハムのグロス投手)。筆者の印象では現時点の武内投手の完成度は、ルーキーイヤーの西口投手の完成度よりもやや高い。となると、経験値から言っていきなり二桁勝利は高望みかもしれないが、7〜8勝くらいは無難に挙げてくれると考えられる。
そして武内投手のフォームの特徴なのだが、テイクバックした際に打者からボールがほとんど見えなくなる。特に左打者からはまったく見えないと思われ、右打者からも一瞬チラッと見える程度だと思う。そのため打者はタイミングを取るのが非常に難しく、ライヴBPで打席に立った蛭間拓哉選手と長谷川信哉選手も、ヒット性の当たりを飛ばすことはほとんどできなかった。
武内投手はキャッチャーがしっかりとリードしてあげられれば、間違いなく新人王の最有力候補だと言える。だが課題はスタミナだ。大学時代は当然だが一年間試合で投げ続けた経験はない。しかしプロ野球では少なくとも毎週一度ずつ先発マウンドに上がる必要がある。そのため課題があるとすれば、一年間投げ続けられるスタミナがあるかどうか、ということくらいだろう。
だがそこは一先ずは、ルーキーイヤーの隅田投手と同水準の16試合をまずは目指していけば良いのではないだろうか。その中で勝率.500くらいで投げることができれば、自然と勝ち星も7〜8勝に届くようになり、その後は目先の1試合1試合を丁寧に投げていけば良いと思う。
ちなみに隅田投手のルーキーイヤーの勝率は.091で、1勝10敗という成績だった。しかし武内投手が隅田投手と同じ道を歩むことはないだろう。なぜならそうならないように、隅田投手がしっかりと武内投手をサポートしてくれるはずだからだ。そしてこのサウスポーコンビが今季、ふたり合わせて20勝程度挙げられれば、ライオンズは一気に優勝に近づいていくだろう。武内投手には次世代のライオンズのエースとして、まずは隅田投手に追い付き、さらには全盛期の西口投手の数字に近づいていけるように、無理して怪我をすることなくルーキーイヤーを駆け抜けていってもらいたい。