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2024年4月 7日公開

○ 2024年04月07日 北海道日本ハム1 - 11 埼玉西武 3回戦/ゲームレビュー

北海道日本ハムファイターズ vs 埼玉西武ライオンズ /3回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 3 0 0 2 0 0 0 6 0 11 12 1
Fighters 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 5 0

継投○松本航中村祐太
勝利投手松本航 1勝0敗0S 2.08
失策元山飛優(1)

マダックスに新たな活路を見出した松本航投手

松本航投手

エスコンフィールドでのファイターズ3回戦、先発マウンドに登ったのはかつての三本柱の一角、松本航投手だった。オープン戦から先週の初登板まではなかなか松本投手らしいストレートを軸にした攻めのピッチングができずにいたのだが、今日のピッチングではどんどんストライクゾーンを攻めていっているように見えた。

ライオンズでは奪三振へのこだわりを口にしている投手が多い。隅田知一郎投手平良海馬投手今井達也投手、そしてジェフリー・ヤン投手らがそうだ。松本投手ももちろん三振を取れるのならば取りたいのかもしれないが、しかし今日のピッチングは二桁奪三振よりも価値のあるピッチングだったと思う。

結果的には8回で94球を投げて被安打4、奪三振5、四球1、失点1、自責0という素晴らしい内容だった。スポーツ紙では「あと少しでマダックス達成だった」とも書かれていた。マダックスとはかつてのメジャーリーグのスター選手のことで、その投手のように100球以内で完封勝利を挙げることを評してマダックスと呼ぶ。

松本投手は魔球のような変化球は持っていない。例えば中学時代のチームメイトでもあった甲斐野央投手にはいつでも空振りを奪えるフォークボールがあるが、松本投手にはそのようにいつでも空振りを取れるウィニングショットがないのだ。ないと言うと失礼に当たるわけだが、単純に空振りを取れる確率ということで言うと、ないと言った方が正しいと思う。

そのため無理をして力任せに三振を取りにいくよりは、今日のように伸びのあるストレートを軸にして、少しずつ動く変化球を上手く打たせてゴロアウト、フライアウトを増やした方が松本投手のスタイルには合っていると思う。そして今日のように球数を減らすことでより長いイニングを投げることも可能となり、ブルペンを休ませることもできる。

今日の試合に関しては8回を終えた時点で10点差がついており、8回に1点を失ったことで9回のマウンドは昨オフ現役ドラフトで新加入した中村祐太投手に譲ったが、もし8回の失点がなければ完封を目指して9回のマウンドにも登っていたのではないだろうか。

今日松本投手に勝ちが付いたことで、開幕ローテーションで勝ち星がついていないのはボー・タカハシ投手のみとなった。だがボー・タカハシ投手は前回の登板直後、しばらく登板機会がないため、すでに抹消されている。ただそのボー・タカハシ投手も勝ち星を得るに相応しい素晴らしいピッチングを見せている。

ライオンズは今日までに6勝を挙げてきているわけだが、素晴らしいのはその6勝すべてが先発投手に付いている点だ。先発投手全員がしっかりと先発としての役目を全うし、勝利の方程式に繋ぐことができている。しかもここまでのチーム防御率1.27は12球団ダントツの好成績だ。1.27という数字は一人の投手だけでも非常に難しい数字であるわけだが、それがライオンズの場合、全投手合計の数字が1.27となっている。まだ9試合しか戦っていないとは言え、この数字は素晴らしいと言うより他ない。

そしてその素晴らしい投手陣の好調さにようやく入って来られたのが今日の松本投手だった。ここ数年は三本柱と呼ぶにはかなり物足りないシーズンが続いていたわけだが、今日のように少ない球数でマダックスを目指していく形を新たなスタイルとして確立させていくことができれば、今季はかなり期待を持てるのではないだろうか。

繋ぎの四番の称号が似合い始めたアギラー選手

一方今日の打撃陣に関しては、もうどのあたりに注目すれば良いかが分からないほど打ちまくってくれた。12安打11打点の大爆発で、一・二番以外の先発全員にヒットが記録された。そしてヒットが出なかった一・二番もしっかりと四球を選んで出塁をしている。

そしてこの打線の繋がりの良さを演出しているのは四番ヘスス・アギラー選手ではないだろうか。9試合でまだホームランこそ出てはいないが、今日の試合を終えて打率は.314で、打点4、得点4、得点圏打率.333という数字をマークしている。

四番打者がこうして僅か9試合ですでに延べ8回も得点に絡んでいるというのは、打線の繋がりを良くしている最大の要因と言って過言はないだろう。もちろん大量得点に繋がっている試合そのものはまだ多くはないわけだが、しかし少ないチャンスをしっかりと物にできているというのは、昨季までとはまったく違ったライオンズの姿だと言える。

筆者はこれまで幾度も書いてきたわけだが、1〜2年前までクリーンナップを打っていたライオンズの打者たちの得点圏打率はとにかく低かった。特にホームランを良く打っていた前四番打者の得点圏打率は本当に低く、とてもクリーンナップを打つ打者の数字とは言えず、それがライオンズの得点力不足に繋がっていた。

だが新四番となったアギラー選手は四番打者らしく、通算打率よりも得点圏打率の方が高い。これこそが勝てるチームの四番打者が持つべき特徴だ。チャンスで、ホームランよりもとにかく次の1点が欲しい時は決して無茶振りすることなく、コンパクトでシュアなバッティングを見せて高い確率で打点を挙げてくれる。本来であれば四番打者ならばホームランを打ちたいところだとは思うが、そこでホームランに拘らず次の1点を狙いに来るアギラー選手の姿は、まさにライオンズ黄金時代の清原和博選手と被る。

そしてこれも数日前に書いた通り、前カードあたりまでアギラー選手は甘いファーストストライクを見逃して、厳しめのセカンドストライクを振りにいくことが多かったのだが、ファイターズ戦に入ってからはこれが改善され、ファーストストライクというよりは、最初に甘めに入ってきたストライクを打つことの方が多くなり、その結果ファイターズ戦は3試合連続マルチヒットとなり、打率も.314まで急上昇してきた。

その風貌はホームランを量産しそうな雰囲気があるアギラー選手だが、しかし真の姿は「繋ぎの四番」という言葉にあるのかもしれない。打点は4月3日のオリックス戦が現時点では最後になっているのだが、ここ3試合は3試合連続マルチヒット&得点となっている。

そしてアギラー選手の繋ぎを受けて打席に入っている佐藤龍世選手の打点が、7試合の出場で6となっている。マスコミは未だにライオンズ打線を「山賊打線」と呼びたがるが、しかし数年前から渡辺久信GMが話しているように、すでにチーム自体はとっくに山賊打線を卒業していたし、今季は繋ぎの四番アギラー選手が加入したことにより、近年見られることのなかった繋がりのある新打線が完成しつつある。

投打共に好調のライオンズは現在ホークスと同率の首位に立っている。そして明後日からの火水をマリーンズとホームで戦い、次の金土日はいよいよそのホークスをベルーナドームで迎え撃つことになる。天王山と呼ぶにはまだまだ気が早いわけだが、しかし一週間後に単独首位に立っているためには、次の週末の3連戦を天王山同様の集中力で迎えるべきだと思う。

だがその前に4位マリーンズ相手に取りこぼすことは許されない。水曜日までに連勝を4まで伸ばし、ホークスとの3連戦を2勝1敗以上の成績で終えられるよう、ライオンズナインには来週は本当にチーム一丸となって頑張ってもらいたい。そしてそのためには筆者もリアルタイム観戦で応援を頑張りたい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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