2024年4月 8日公開
開幕から9試合を戦い、現在ライオンズのチーム防御率は1.27となっており、12球団中ダントツのトップとなっている。ちなみに12球団中2位につけているのは1.97のホークスだ。現在チーム防御率が1点台なのはこの2チームのみで、ホークスの1.97でも十分凄い数字だと言えるのだが、ライオンズはそのさらに遥か上を行っている。
もちろんこの先ずっとこのチーム防御率を維持することはできない。1.27という防御率は、1試合で投手陣が2点取られただけで悪化してしまうほどの数字であるためだ。そのためこのチーム防御率は最終的には2点台となっていくことが予想されるわけだが、しかしチーム防御率が良いのは実は一軍だけではない。
ライオンズはイースタンリーグでもチーム防御率が2.04となっており、これもファームでは14球団中トップの数字となっている。ちなみに14球団中チーム防御率が最も悪いのは新球団のくふうハヤテで、18試合を戦って6.12となっている。つまりくふうハヤテはライオンズの二軍よりも3倍多く失点しているということだ。
ちなみにライオンズ二軍のチーム防御率が良くなっているのにはハッキリとした理由があり、まず今日からようやく一軍に合流した昨季までのエース、髙橋光成投手が4試合で15イニングスを投げて3失点(自責2)に抑えている。そしてもう一人與座海人投手も2試合で13イニングスを投げて1失点に抑え、この一軍レベルの二人の活躍が、チーム防御率を14球団トップに押し上げている。
さらに言えばボー・タカハシ投手、田村伊知郎投手、青山美夏人投手ら、やはり一軍レベルの投手たちが軒並みファームで好投を見せている。ちなみに体調不良により一軍を離脱していたジェフリー・ヤン投手も、イースタンリーグではすでに1試合に登板し1イニングを無失点に抑えている。
一軍レベルの投手たちがファームで投げているというカラクリもあるわけだが、ライオンズは現在親子共にチーム防御率が12球団(二軍は14球団)トップという事実は、これはもう投手王国が再建されたと言って間違いないだろう。特に先発陣に関しては現在二軍ではボー・タカハシ投手、與座投手、青山投手という三人が一軍レベルの先発投手としてファームで待機している。
そして若き次世代の先発投手も育ってきており、羽田慎之介投手はここまで2試合で合計10イニングスを投げて失点2(自責1)の防御率0.90、菅井信也投手は3試合で15イニングスを投げて4失点(自責2)の防御率1.20という素晴らしい成績をマークしており、一日でも早い一軍デビューを虎視眈々と狙っている。
もちろん出て行ってもらっては困るわけだが、仮に髙橋光成投手と平良海馬投手が今すぐメジャー移籍して行ったとしても、ライオンズの一軍投手陣が崩壊する可能性は非常に低いと言えるだろう。
ただし心配なのは、ライオンズはとにかく期待の若手投手がトミー・ジョン手術を受けるケースが多くなっている。野手も含めると12球団の中では目立って多い人数となっているわけだが、しかしこれに関しては球団ごとに方針が異なるため一概に評価することはできない。
例えばライオンズのように「どうせ手術を受けるなら早い方がいい」と考える球団もあれば、「投手にはできるだけ手術はさせたくない」と考えている球団もある。つまりトミー・ジョン手術を受けた投手が少ないからと言って、肘を故障している投手がいないというわけではないのだ。
そして肘を故障するリスクは球速が速い投手ほど高くなる。ライオンズには球速にこだわりを持つ投手が大勢おり、現在ファームで活躍している羽田投手なども、将来的には佐々木朗希投手のような速球派エースという存在になるのではないかと囁かれている。だからこそせっかく育ってきた彼ら若い新芽を潰さぬよう、ライオンズのトレーナー陣には細心の注意を払いながら選手の肩肘をケアしてあげて欲しいと思うし、実際にそうしてくれていると思う。
さて、ファームで気になる存在と言えば他には上述の田村投手に加え、平井克典投手を挙げることができる。田村投手に関してはすでにファームで3試合に登板し、3イニングスを無難に無失点に抑えているため、恐らくはヤン投手と共に近々一軍に上がってくるのではないだろうか。
だが一方の平井投手はオープン戦からなかなか状態が上がらず、ファームではここまで2試合で2イニングスを投げて被安打3、四球2、失点1で防御率は4.50という数字に低迷している。
平井投手は昨年のFA宣言後の交渉で、西武球団から「年齢的に活躍できる年数はもう多くはない」と言われたらしい。報道ではこの言葉が非常にネガティヴなイメージで伝えられていたが、しかし筆者はそうではないと考えていた。例えばかつて球団本部長を務めた前田康介氏や鈴木葉留彦氏が無神経な言葉を使って選手の心を逆撫でしたのとはまったく違う状況だと思う。
西武球団は平井投手に対し、年齢的にはもうかなりベテランの域に入っているため、複数年契約は現状では2年が目一杯だ、という意味で「活躍できる年数はもう多くはない」という趣旨の言葉を使ったのだと思う。だが平井投手がこのまま二軍で燻ってしまう状況が続いてしまうと、西武球団の判断が100%正しかったということになってしまうため、2年どころかこれから3年も4年も活躍し続けることにより、平井投手は西武球団に2年しか契約を結ばなかったことを後悔させなければならない。
ただ平井投手の場合は流石に勤続疲労がかなり溜まっていると思う。実際平井投手は81試合に登板した2019年の疲労が、ようやく去年あたりに抜け切ったと話していた。だがそこに新たに昨季54試合に登板した疲労が来ているため、その勤続疲労というものを考えると、平井投手が現在スロースタート気味になっていることは決して不思議ではないと言える。
だが優勝するためには一軍には平井投手の力が必要だし、平井投手のこれまでの貢献度を考えると、今年は日本シリーズの舞台で活躍し、最後にはビールかけを楽しむ権利が平井投手にはある。そのためにも、もちろん焦りは禁物だが、平井投手には交流戦あたりまでには状態を上げてきて欲しいなというのが、現在ファームで投げている平井投手を見た筆者の正直な思いだ。