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2021年3月14日公開

2021年03月14日(日) バファローズvsライオンズのオープン戦ゲームレビュー

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
西武 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0
オリックス 0 0 0 1 1 0 3 0 × 5 4 0

【継投】
平井克典吉川光夫〜田村伊知郎〜伊藤翔

西口コーチのプレッシャーを見事糧にした平井克典投手

約2週間後の開幕戦の予行練習とも呼べた今日のバファローズ戦、先発マウンドに登ったのは平井克典投手だった。結果から言うと3イニングスを41球、被安打0とほぼ完璧な内容で投げ終えた。今日の好投により、平井投手は開幕3戦目のオリックス戦に先発することが内定した。

これだけの好投を見せても3イニングスだけで投げ終えたというのは、やはり開幕カードに向けて相手に手の内を見せないためだったのだろう。これがもしセ・リーグが相手だったら平井投手も5〜6イニングスを投げていたと思う。なおこの登板後、平井投手は完投を想定してブルペンで70球ほどを投げ込んだようだ。

今日の平井投手は本当に失投が少なかった。41球中、甘いと思われたのはジョーンズ選手に対する2球と、佐野選手への1球、真ん中にスーッと入ってしまった甘いボールは合わせて3球のみだった。それ以外のボールはツーレーンピッチャーらしく内外のゾーンを上手く使い、ツーシームとシュート系のボールでバットの芯を上手く外していった。

これだけ安定した制球力を維持できれば、シーズンでも大崩れすることはないだろう。あとは先発し続けて溜まっていく疲労さえコントロールできれば、シーズンを通して活躍し続けることができるはずだ。

二番手としてマウンドに登るのが吉川光夫投手だったことは、平井投手自身登板前から知っていたのではないだろうか。西口文也投手コーチからすると「ちょっとでも変なピッチングをしたらすぐに吉川と入れ替える」という無言のプレッシャーを平井投手に与えたかったのだろう。そして平井投手もそのプレッシャーを糧にし、本当に素晴らしいピッチングを見せてくれた。今日のピッチングは、まさにシーズンにとっておきたいような素晴らしい内容だった。

今年のバファローズは簡単にはBクラスには沈まないだろう

平井投手が素晴らしいピッチングを披露した反面、打撃陣は僅か1安打で零封されてしまった。しかしこの結果はさほど心配すべきものではないだろう。まずバファローズは、中嶋聡監督が9イニングスで10投手を注ぎ込む奇策を見せてきた。このような戦術はシーズンでもまず見られるものではなく、まるで仰木マジックを継承したかのような采配ぶりだった。

野球は、どれだけ相手が嫌がる野球をできるかで勝敗が決まることが多く、少しでも相手の嫌がる戦術を敷くことは監督としてのセオリーだ。そういう意味では中嶋監督は勝利に執着した非常に素晴らしい戦術を見せてきたと思う。辻発彦監督もこの中嶋監督の戦術には明らかに嫌そうな表情を見せていた。

オリックスの名の下で最後に優勝したのは1996年だ。もう四半世紀も前の話だ。オリックスというチームはそれほど優勝から遠ざかっているわけだが、今年のオリックスバファローズは、今までのようにはいかないだろう。簡単にBクラスに沈んでいるようなチームではもうないように見える。中嶋監督がこの短期間でチームの雰囲気をガラリと変え、今までの負け癖もすでに払拭されているように感じられる。

ちなみにバファローズは10人の継投を見せてきたわけだが、試合はなんと2時間27分で終わっている。多すぎるピッチャー交代が試合時間を無益に引き伸ばしているとも言われているわけだが、今日のように1イニング1投手による継投であれば、何人投手を注ぎ込んでも試合時間が伸びるわけではないということが証明された。

逆に継投がなくても、リズムが悪いピッチャーが投げていれば試合時間はどんどん伸びていくし、見ていて疲れるゲームになってしまうケースも多い。そういう意味では中嶋監督は非常に引き締まった戦い方を見せてくれた。だが今日のような継投をレギュラーシーズンで見せることはほぼないだろう。恐らく今日の継投は、開幕カードの対戦相手に手の内は見せないという意味での継投だったはずだ。

監督6人全員が魅力を持つ今季のパ・リーグ

筆者は西武ファンであるわけだが、今年のバファローズの戦い方には実にワクワクさせられている。それはもちろん、かつてライオンズで松坂大輔投手の女房役を務めていた中嶋聡監督が見事な采配を見せてくれているからだ。相手チームの嫌がる野球をやるというのは、まさに故仰木彬監督や、東尾修監督の下で学んだ野球なのではないだろうか。

ちなみに「仰木マジック」という言葉は、「三原魔術」を文字った言葉だ。筆者が最も尊敬している野球人は三原脩監督と渡辺久信GMであるわけだが、その三原監督の采配の妙は「三原魔術」と呼ばれ他球団から恐れられていた。だが当の三原監督自身は「魔術師」と呼ばれることをひどく嫌がっていたらしい。

三原監督の下で野球を学んだ仰木監督(現役時代はライオンズ)の教えを受けた中嶋監督、森・野村・落合という名将の下で帝王学を学んだ辻監督、三原脩監督を師と仰ぐ栗山英樹監督、野村克也監督の教え子である石井一久監督、王監督の下で帝王学を身につけた工藤公康監督と井口資仁監督。今季のパ・リーグの監督たちは本当に魅力溢れる人物ばかりだ。

野球は選手がするものだが、しかし監督によってチームがガラリと変わることも事実だ。今季はバファローズが非常に面白い戦いを見せてくれそうな雰囲気があるだけに、パ・リーグのレギュラーシーズンは非常に中身の濃い143試合となるのではないだろうか。筆者はもちろんライオンズファンであるわけだが、しかし他球団の監督たちがどのような野球を見せてくれるのかも、今季は例年以上に楽しみにしていきたい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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