平良海馬投手が1億7,000万円の提示を保留したワケ

2022年12月 2日公開

平良海馬投手が1億7,000万円の提示を保留したワケ

平良海馬

平良海馬投手は押しも押されぬ球界を代表するリリーバーへと成長した。クイックモーションで150km/hを超えるボールを投げられるだけでもバッターとしては苦しいわけだが、自らの投球内容を冷静に分析できるクレバーさも兼ね揃えている。

2022年オフ、渡辺久信GMは平良投手に対し7,000万円アップの推定年俸1億7,000万円を提示した。23歳という年齢を考えれば、この金額は十分過ぎる評価だと言えるだろう。しかし平良投手はこの提示に対しサインすることはなかった。とは言え金額に不満だったわけではなく、起用法に対する不満からの保留だった。

ライオンズでは2022年のオフ、同じくスミス投手が金額面では合意しながらも、先発起用を約束してもらえない起用法に対し不満を抱き退団となっている。平良投手の場合はもちろん退団の可能性はないわけだが、しかし金銭面ではなく起用法に対する不満での保留という意味ではスミス投手と状況は同じだ。

実は平良投手は以前より先発転向を希望していた。2020年のオープン戦では先発テストも受けているのだが、しかし残念ながらその試合では3回5失点と結果を出すことはできなかった。それ以来平良投手はひとまずリリーフ投手というポジションに収まり続けている。

渡辺久信GMとしては、2024年からであれば先発転向のチャンスを約束できるという提案をしたようだ。だが平良投手のそれに対するコメントは「(先発転向を直訴して以来)4年も先発をできないのはありえない」という趣旨のものだった。平良投手の気持ちも分かるが、しかしごね方としてはやや幼稚に見えてしまう。

平良投手は2020年に先発テストに失敗した時と今とでは、ピッチングの内容は変わっていると言い、先発投手として成功する自信を口にしている。恐らくこれは、一時期ストレートの被打率が悪かったことで変化球の割合を増やしたことを言っているのだろう。だが事実上先発経験がない状況で、先発に対する自信を口にするのは時期尚早だ。

それに加え平良投手には、先発投手としては是が非でも持っておきたい打者の目線を動かせる緩い変化球がない。そしてツーレーンピッチャーでもない。どちらかと言えばストレートのパワーと速い変化球、チェンジアップのコンビネーションで打ち取るタイプの投手であり、速いストレートがあるからこそスライダーやチェンジアップが生きてくるタイプだと言える。

しかし先発に転向すればリリーフ時のストレートのアヴェレージ(平均球速)を維持することはできない。そして先発として常にクイックモーションで投げ続けることも現実的ではない。そのためあくまでも筆者個人の感想としては、平良投手が何を根拠に先発に対する自信を深めているのかがはっきりと分からないのだ。もし上述した変化球の割合だけの話なのであれば、先発としての自信はすぐに打ち砕かれてしまうだろう。

そもそも、もし西口文也前1軍投手コーチと豊田清投手コーチが、平良投手に先発投手としての適合性を感じていれば、先発のチャンスも2020年オープ戦での1回だけには止まらなかったはずだ。投手コーチたちも、辻監督も松井稼頭央監督も、現時点では平良投手は先発よりもリリーフでいてもらった方が良いと考えていたし、考えている。

松井稼頭央監督元年に動かしたくない平良海馬投手のポジション

渡辺久信GMとしては、松井稼頭央監督の初年度に主力リリーバーを動かしたくないという思いは強いはずだ。そのため次の交渉の席でも、2023年から先発転向を許可する可能性は低いと思われる。そして今回提示された1億7,000万円という年俸は、平良投手のリリーフとしての貢献に対し提示された額であり、未知数の先発転向に対する期待額というわけではない。平良投手はそのあたりも踏まえなければならないだろう。

仮にもし平良投手が、年俸は1億円のままで良いから先発に挑戦させてくださいとでも言えば、これは非常に好感度が上がる。そのような言葉が出てくれば、渡辺久信GMだって平良投手の希望を無下にすることなどできはしないし、「そこまで言うのなら1.7億円に見合う結果を先発として出してみろ」と言いたくもなるだろう。

しかし今回の件での平良投手の態度は、自分の配属先希望が4年間通らなかったことを「ありえない」という言葉で結んでしまうという、非常に幼稚に感じてしまうものだった。もちろん社会経験のない23歳のプロ野球選手であれば、社会人としての上司との接し方を知らなくても当然なのかもしれない。だがメディアを通して上司である渡辺久信GMの提案について「ありえない」という言葉を使うことは、筆者個人としてはそれこそありえないと感じてしまい、平良投手に対する好感度は少なくとも筆者の中では大幅に低下してしまった。

2023年来季、平良投手が先発に挑戦できるのか否かはまだ分からない。だが渡辺久信GMが2024年からならOKと言ってくれているのであれば、あと一年はリリーフとして頑張り、2024年からの先発手形を受け取るのが最善だと思われる。

ちなみに平良投手は日本代表に関してはリリーフとして投げると公言している。来春はWBCが行われるわけだが、平良投手がWBCに選出された場合、果たして先発調整をしながらWBCではリリーフとして投げるつもりなのだろうか。だとすれば平良投手の考え方はプロとしては甘いのではないだろうか。先発調整をしながらリリーフとして本領を発揮できるほど、プロ野球のリリーフマウンドと世界の舞台は甘くはない。

もし平良投手が本気で先発転向を目指すのであれば、リリーバーとしての代表選出は辞退し、先発調整に集中すべきだと思う。ライオンズでは先発として投げたいが、代表ではリリーフとして投げるというのは、ちょっと虫が良すぎるように感じるのは果たして筆者だけだろうか。

だがいずれにせよ、平良投手には来季も変わらず活躍し続けてもらいたい。もちろん現状ではリリーバーとして2023年も投げることが、チームにとってもファンにとってもベストだと思うのだが、もし先発転向を許可されたとしても、先発投手として最低限二桁は勝ってチームに貯金をもたらすような活躍を期待したい!

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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