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2021年4月 5日公開

木村文紀選手が不動の主軸となるためには?そして栗山選手との差とは?

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木村文紀選手の存在感が今季は今まで以上に強いように感じる。バッティングではまだまだムラのある選手ではあるが、しかし守備力の高さは今季もうすでに何度もファンを魅了している。現在の打率は.267に留まっているが、もう1〜2分上げることができれば立派なレギュラーと呼ぶこともできるだろう。

仮に2分上がって.287という打率であれば、ライトの守備力を考えれば本当に大きな戦力として見ることができ、主軸のひとりに数えることができる。開幕直後は1本のヒット、1本の凡打で打率が大きく上下するため、.267という数字もまだ「アヴェレージ」と呼ぶには早いわけだが、しかし.267という数字は相手バッテリーをそれほど警戒させることがない。.287の打者に対しては警戒を強めるはずだが、.267という数字の打者に対しては投手も臆することなく投げてくるはずだ。

今後木村選手が主軸に相応しい打者になっていくためには、ボール先行の打席を増やせるようになるか、ということが一つのポイントになるだろう。つまり相手投手が警戒心を強めることにより、初球ボールから入ってくる確率を高められるかどうか、ということだ。ボール先行のピッチングになると、ファーストストライクが甘めに入ってくる確率が高くなり、ヒットも出やすい。

木村文紀選手になく、栗山巧選手にはあるもの

例えば栗山巧選手は積極的に打ちに行く打者ではあるが、ボール先行の状況を作るのが上手い打者でもあるためファーストストライクが甘く入ってくることも増え、そのボールに対し積極的に打ちに行っているというケースが多い。そしてこれは選球眼の良さが生み出している好結果とも言える。

一方の木村選手はまだまだ厳しいボールに手を出し、甘いボールを見逃してしまうことがよくある。初球から積極的に振っていく、と言うと非常にポジティブだが、しかしいくらストライクと言っても、初球から難しいボールに手を出していく必要はない。ここが栗山選手との大きな差と言えるのではないだろうか。

球審も栗山選手の選球眼が素晴らしいことは知っている。そのため「栗山選手が見逃したのだからボールなのだろう」という考えが無意識に働き、本当に際どいコースをボールと判定することが増える。しかし選球眼が良い選手だとはまだ言えない木村選手の場合、際どいコースをストライクとコールされるケースが増え、損をしやすい。木村選手の場合、バッティング技術以上にこのあたりの状況を今後変えていけるかどうかが一つの鍵となっていくだろう。

「意外性の打者」と呼ばれているうちは、例えば若林楽人選手のように守備力も高く、現在リーグトップの盗塁数をマークしている若手がヒットを打つようになれば、木村選手はあっという間にレギュラーを奪われてしまうだろう。それが.267という数字だと思う。しかし.287という数字であれば、仮に若林選手が打率.300を維持したとしても木村選手がレギュラーを剥奪されることはない。

スタメンとして打率.290弱を打つためには、3連戦でヒットを3〜4本打っていく必要がある。3本では足りない。3試合で3.5本打たなければ.290という打率には近づかない。1日1本ではレギュラークラスの数字には届かないため、木村選手が確固たるレギュラーになるためには3連戦で3〜4本打てるようになる必要がある。その上3連戦で四球を1〜2個選べるようになれば、あっという間に打率は.300を超えていくだろう。

年齢の割にまだまだ伸び代がある木村選手

栗山選手と木村選手を比較し、技術的に違う点を挙げるならばそれは体重移動だ。栗山選手はステイバックという技術を取り入れることにより、頭の位置や軸がほとんどブレることなくスウィングしていくことができる。そのためボールもよく見えて選球眼も良くなり、ミート力も安定するというパフォーマンスを実現させている。

一方木村選手はステイバックで打っているとは言えず、どちらかと言えばウェイトシフトで打っている。そのため頭の位置が移動しやすく、軸も短くなりスウィングが安定しにくい。そのため栗山選手と比べると選球眼とミート力に差がついてしまっている。

木村選手はとにかくたくさんバットを振り込み努力を怠らない選手ではあるが、そこに栗山選手のような理論が入ってくれば、今から全盛期を迎えることも十分に可能だし、年齢の割にはまだまだ伸び代のある選手だとも言える。ちなみに栗山選手にその技術理論を指導したのは熊澤コーチだと思われる。

鉄壁外野陣の一翼を担う木村文紀選手

さて、バッティングではまだまだ発展途上の木村選手ではあるが、守備力は冒頭で書いたように本当に素晴らしい。球際に非常に強く、今季もここまで何度も好守で投手陣を救っている。元々豪速球投手だったこともあり、強肩も健在だ。そして守備範囲も広い。「レフト若林・センター金子・ライト木村」という布陣は、まさに鉄壁と呼ぶに相応しい布陣だ。

この鉄壁の布陣が投手陣の防御率を向上させているという見方もできる。この守備力がなければここまでチーム40得点に対し、20失点では済んでいなかったはずだ。そういう意味では木村選手をはじめ、外野陣の貢献度は打率以上に高いものとなっている。12球団を見渡しても屈指の外野陣と呼べるだろう。その一翼を担っているのがベテランなのに永遠の若手と呼ばれている木村選手だ。

今は故障者が続出したことによって代役のクリーンナップを務めている木村選手だが、しかし故障者たちが帰ってきてもクリーナップの座をそう簡単には返上しないという活躍を、今後木村選手には期待していきたい。守備力だけではなく、バッティングでも木村選手にはリーグ屈指の存在になって欲しいというのが、筆者の一ファンとしての願いだ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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