2021年2月17日公開
木村文紀選手は辻発彦監督の期待も非常に大きい選手だ。右肘を疲労骨折した後2012年に投手から外野手への転向となったわけだが、今季は早いもので野手転向9年目のシーズンとなる。
だが野手転向後のシーズンで、木村選手自身満足のいく成績を残せたシーズンはまだない。打率も自己最高が2018年の.260で、しかもこのシーズンは75試合の出場で打席数は僅かに120だ。規定打席には程遠く、何かきっかけを掴んだ.260というわけでもなかった。
厳しい言い方をすれば、木村選手もそろそろバッティングで、シーズンを通して実のある数字を残していけなければ、出場機会はどんどん若手選手たちに奪われてしまうだろう。
首脳陣からすれば同じような打率、同じような守備力だったとすれば、当然伸び代のある若手選手を使いたくなる。木村選手は今季33歳となるわけだが、年齢的な体のピークはもうとっくに過ぎてしまっている。
ただし、ライオンズの外野陣の層は非常に薄い。栗山巧選手は今季38歳になり、もう守備に就いてフル出場は難しい年齢だ。金子侑司選手にしても二度盗塁王にはなっているが、バッティングにおいてはまだ良い数字を残せたシーズンはない。
そしてスパンジェンバーグ選手を除くその他の外野手たちの1軍での実績はほぼ皆無だ。ベテランの域に入って来ている熊代聖人選手もバッティングにおいては期待することはできない。
つまり何を言いたいかと言うと、外野陣が手薄なライオンズでなければ、木村選手の出場機会はさらに少なかったということだ。
右肘を疲労骨折し投手生命を絶たれてから野手として奮闘して来た木村選手だけに、やはりファンとしては打者として大輪を咲かせてもらいたいというのが正直なところだ。木村選手には打率.300を打ってもらいたいし、打たせてあげたい。もしくは25本塁打打ってもらいたいし、打たせてあげたい。
だが今までと大差のないことをしているだけでは打率.300を打つことは不可能に近いだろう。今季は今までにない何かを取り入れていかなければ、通算.219という低打率から脱却することはできない。
では木村選手には何が足りないのか?筆者が見る限り、木村選手は時々当てにいくようなバッティングを見せる。調子が良い時は自信を持って打席に立ち、勝利に貢献する価値ある一打を放つこともあるわけだが、しかしその確率が非常に低いのは、時々見せる消極的な雰囲気のせいではないだろうか。
ザックリと言うと、木村選手のバッティングはパ・リーグというよりは、セ・リーグの打者のように見えることがあるのだ。しかし木村選手がライオンズのレギュラーとして数字を残すためにはそれではいけない。もっともっとしっかりとバットを振るべきだろう。
こう言っては何だが、木村選手は年齢的にもう後はない。数字を残せなければ若い選手に取って変わられるだけだ。栗山選手のように代わりのいないレベルの選手ではないし、金子選手のような特筆すべき走力があるわけでもない。
だからこそこの後のない状況を上手く活かし、開き直るくらいの気持ちでもっと思い切りの良いスウィングを見せてもらいたい。ファンが見たいのは中途半端な凡打や中途半端な三振ではなく、どうせアウトになるのならフェンスギリギリまで届く大飛球や、ヘルメットを振り飛ばすような空振り三振だ。
相手投手からしても、それだけバットを振ってくる選手は本当に嫌なもので、ストライクゾーンに投げにくくもなる。すると自ずとボール球が増えるようになり、それに比例して四球が増え、出塁率が上がっていく。また、相手投手のストライクとボールの差が大きくなければ、木村選手自身的を絞ってさらに強振しやすくなる。
そのような状況を自ら作って、木村選手自身のペースで打席に立つためにも、木村選手にはもう開き直って、すべてのスウィングで強振する姿を見せてもらいたい。仮にそこまで振れるバッターが下位打線にいれば、相手投手も気が休まることがない。
木村選手はこのまま低い数字だけを残して終わってはいけない。非常にパンチ力があるバッターなのだから、例えば打率.200でも25本塁打を目指せば良いと思う。すべての数字を伸ばそうとするのではなく、木村選手自身の、バッターとしての最大の魅力を最大限活かす工夫をすれば良いのではないだろうか。
仮に25本塁打するとすれば、それは5〜6試合に1本ホームランを打つ計算になる。仮に打率.200だったとしても、木村選手の守備力と強肩を踏まえてさらに25本塁打マークできれば、辻監督としても迷うことなく木村選手をライトで起用し続けるだろう。
だが打率.200少々で10本塁打程度であれば、木村選手の出番は今後大幅に減っていくはずだ。そうならないためにも、遅咲きのスラッガーとなるためにも、木村選手にはセ・リーグの打者のようなスウィングなど見せず、打席では迷いを振り切るような豪快なスウィングを見せ続けてもらいたい。
そして後々は栗山選手の後継者ともなりうるような、ベテランとしての仕事を見せられる選手になっていってもらいたい。そして大きな夢を見るのであれば、遅咲きのスラッガーとしてタイトル争いに加わるような活躍を魅せてくれたなら、ファンとしてはこれ以上に嬉しいことはない。