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2022年11月14日公開

所沢とライオンズの再開発を同時に成功させつつある後藤高志オーナー

ライオンズを含めた所沢の再開発に心血を注ぐ西武HD

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埼玉西武ライオンズの親会社は今更言うまでもなく西武HDであるわけだが、この西武HDも近年のコロナ禍には随分と苦しめられている。そのため西武ライオンズに使える資金も枯渇していると思われがちだが、筆者はそこまで酷くはないと考えているし、むしろ西武HDはライオンズをとても大切に考えているとさえ思っている。

まず西武HDはベルーナドーム、当時のメットライフドームを2017年12月から約3年かけて大改修を行なった。これに費やした資金は180億円だと伝えられている。もし西武HD内でライオンズ売却に関する話が1%でも上っていたとしたら、ベルーナドームの改修に180億円をかけることなど絶対にあり得なかったはずだ。

そして注目すべき点は、西武HDの所沢の再開発にかける情熱だ。近年はベルーナドームの改修だけではなく、所沢駅周辺ではグランエミオを開業させたり、西武園ゆうえんちもリニューアルした。そして今西武HDが力を入れているのが所沢駅西口の再開発だ。これはワルツ所沢の裏側にある場所なのだが、今ここを西武HDは住友商事とタッグを組んで再開発しようとしている。この再開発は所沢最後の再開発とも呼ばれ、各方面からも注目を集めている。

この西口の再開発はショッピングモールになるのだが、しかしどこにでもある代わり映えしないショッピングモールになるのではなく、所沢らしさを全面に出した所沢らしいショッピングモールになると言う。具体的にはこの再開発地は公園と隣接していくのだが、その公園の自然を生かした作りになっていくようだ。これはまさに自然一体型のベルーナドームにも共通するところだ。

この再開発に関して後藤高志オーナーの言葉を借りれば、今まではベッドタウンだった所沢を、リビングタウンに作り替えるということらしい。つまり帰って寝るだけの街ではなく、訪れて楽しむこともできる街としての魅力を高めていくということだ。所沢駅周辺の再開発は当然後藤オーナーが中心になって行っているわけだが、その再開発の一環として組み込まれているのが埼玉西武ライオンズなのだ。

森友哉捕手の残留と近藤健介選手獲得の全面バックアップを約束した後藤高志オーナー

後藤オーナーはライオンズというコンテンツを西武HDのドル箱に変えようと尽力してくれている。まずはベルーナドームを改修し、老朽化が著しかった若獅子寮と屋内練習場も立て直したことで、ファンだけではなく、選手にとっても魅力溢れる場へとベルーナドームを生まれ変わらせてくれた。

そして後藤オーナー自身、以前は主力選手たちが次々とFA移籍してしまったことを危惧しており、何とかそれを食い止めようと自らの案で起用したのが渡辺久信GMだった。渡辺久信GMはその期待に応え、次々とFA選手の残留を成功させていく。

今オフに関しては森友哉捕手の行方と、ファイターズの近藤健介選手の動向が注目されているわけだが、これに関しても後藤オーナーは全面的なバックアップを約束してくれているし、渡辺久信GMに対しても何としても森捕手を残留させ、近藤選手を獲得できるようにとすでに指示を出している。

この話は森捕手に対するオリックス球団の動向、近藤選手に対するソフトバンク球団、オリックス球団の動向が見え始めた後のものであるため、後藤オーナーが本気でこのFA戦線を勝ちに行こうとしているのが分かる。FA戦線には滅多に参戦しない西武球団が見せたこの姿勢は、かなり期待していいのではないだろうか。

ソフトバンク球団が近藤選手に対し6年30億(当初は4年30億だった)というかなり大きな金額を提示しているのも、このFA戦線を現時点で西武球団が優位に進めていると感じているからではないだろうか。もちろん近藤健介選手のレベルであれば年俸5億円ベースは常識の範囲内だとは思う。だが4年30億から6年30億と変更したのは、近藤選手側からすればあまり心象は良くないのではないだろうか。

現時点では森捕手に対する提示も、近藤選手に提示するであろう金額も、西武球団はまったく示して来ない。だが当然だが森捕手に対してはすでに条件提示はしており、オリックス球団もそれに対する予測を踏まえて森捕手への提示額を弾き出したのだろう。

森捕手の動向としては、一つの目安になるのが11月23日のTHANKS FESTAになるのだろう。遅くともここまでには何らかの動きは出ていることが予想される。もしもライオンズを去るのならばこの場でファンに別れを告げ、ライオンズに残るのであれば、この場でライオンズファンを感涙させてくれるはずだ。

FA選手の獲得は戦力補強なのか、それとも他球団の力を削ぐためなのか

西武HDはライオンズに対し湯水のように資金を注ぐことはできない。これは巨人やソフトバンクなどの金満球団とは大きな違いとなるわけだが、しかし西武HDは巨人・ソフトバンクと比べると、本当に必要なところにだけ資金を注いでいるように見える。

金満球団のやり方は時に戦力補強というよりは、他球団の力を削ぐためにFA選手を獲得しているようにも見える。ライオンズに関してはホークスには先々代の正捕手であった細川亨捕手を持って行かれ、巨人には先代正捕手である炭谷銀仁朗捕手を持って行かれてしまった。ライオンズの頭脳は過去2代続けて流出しており、ここに森捕手が続いてしまったとしたらこれは痛手どころでは済まなくなる。

そして他球団も見てみると、巨人はDeNAから引き抜いて来たFA選手を簡単に戦力外にしてしまっている。ソフトバンク球団はもちろん巨人ほど酷くはないわけだが、巨人の場合は何のために獲得したFA選手なのかがよく分からないケースが多い。これこそまさに戦力補強ではなく、他球団の戦力を削ぐためのFA戦略なのではないだろうか。

NPBとMLBでは異なるFAシステムの現状

MLBのようにFAやトレードによる選手の往来がそれほど多くはないNPBの場合、主力選手の流出はそのまま大幅な戦力ダウンになってしまう。MLBであれば主力を流出したとしても、他球団からFAとなっている別の主力級選手を獲得すれば簡単に穴埋めをすることができる。

しかしNPBの場合は主力を流出してしまうと、その穴埋めをするための他のFA選手がいないのだ。つまり資金を費やして穴埋めをしたくてもできないのがNPBの現在のFAの仕組みであり、そうなるとFA戦略として他球団の戦力を削ぐために不必要な選手に資金を費やすというやり方も成り立ってしまうのが現状だ。

西武球団の過去のFA流出は、ほとんど西武球団フロントによる自業自得的な面も大きかったわけだが、しかし現在は後藤オーナーと渡辺久信GMのタッグにより、しっかりと他球団とやり合っていくだけの力を取り戻して来ている。

後藤高志オーナーは長期的戦略に長けた人物だとも言われており、一時期西武HDとサーベラスとで揉めた際にも、後藤オーナーはライオンズを守り抜くことを常々口にしてくれていた。そのためファンも安心してライオンズを応援することができたわけだが、後藤オーナーはその時すでに、10年後20年後のライオンズの姿を構想していたのだろう。

西武HDは金満球団のような資金の使い方はできない、と言うよりはしない。しかし使うべきところはしっかりと心得ている球団でありオーナー企業だと言える。つまり今はまさに資金の使い時であり、ホテル資産などから得た多額の売却益などの一部が、今オフのFA選手への投資として活用されるのだろう。

後藤オーナーの目は常に将来を向いている。埼玉県の他地域では、ショッピングモールの成功により、同時に人口を増やすことにも成功している。後藤オーナーもそのような流れを想定して所沢の再開発に力を入れており、もしここで森捕手を失ってしまうと、ライオンズのコンテンツとして魅力が大幅に下がってしまうことも理解している。

だからこそ今、後藤オーナーは渡辺久信GMに対し何としても森捕手を残留させるように指令を出し、同時に近藤選手の獲得に向けても全面的にバックアップしてくれることを明言したのだと思う。

そしてライオンズのコンテンツとしての魅力をさらに高め、所沢周辺の再開発をさらに軌道に乗せる青写真を描いているのだろう。ライオンズが強くなければ西武鉄道を使う人数も増える。そして西武鉄道を使ってくれれば同時に所沢を楽しんでもらうこともできる。

スポーツ、アミューズメント、ショッピングのそれぞれで相乗効果を高めることもできるだろう。例えば西武グループのショッピングモールでLポイントを使えるようになれば、そのポイントをベルーナドームで使ったり、逆にベルーナドームで貯めたポイントをモールで使ってもらえるなどの流れを作ることもできるかもしれない。

いよいよライオンズを強化するための下準備を整え終えた後藤高志オーナー

後藤オーナーは、どちらかと言えば思いつきの発想でライオンズに手入れすることが多かった堤義明オーナーとはまったく違い、ライオンズを中長期的に見て強化していこうとしている姿が見て取れる。

孫正義オーナー、三木谷浩史オーナーのように派手さはないが、みずほ銀行出身の後藤オーナーは丁寧に段階を踏み、ラインズを西武グループの1つのシンボルとして育ててくれている。これはまさにライオンズの再開発だったと言える。

堤義明前オーナーによる粉飾決済事件からまもなく18年が経とうとしている。堤オーナーからライオンズを引き継いだ後藤オーナーは、最初の10年前後はライオンズを守ることに尽力してくれた。続く10年前後は西武球団の構造改革を行った。そしてここから続くさらなる10年は、常勝時代の再現を目指しているように筆者の目には写っている。

粉飾決済以来西武球団は揺れに揺れたわけだが、後藤オーナーは時間をかけて丁寧にライオンズを新たな球団に生まれ変わらせてくれた。西武球団の構造改革も随分と進んだ今、後藤オーナーが次に目指すのはライオンズの強化と強さの安定化だ。

もしそれに間違いがないのであれば、他球団のオーナーたちも「今オフの後藤オーナーは本気だ」と考えており、それによりソフトバンク球団にしても、オリックス球団にしても、イマイチ盛り上がりに欠けるFA戦線を敷かされている状況なのではないだろうか。

松井稼頭央監督は、自ら役職を与えた渡辺久信GMが初めて育て上げた監督となる。その松井監督を全面サポートするためにも、今オフはこれから、後藤オーナーはいよいよ本気になった姿をライオンズファンに見せてくれるのではないだろうか。2023年からのライオンズは、粉飾決済事件後のこれまでの17年とは確実に違うものになりそうな匂いを筆者は今強く嗅ぎ取っているのだが、果たして他のライオンズファンはどのようにお考えなのだろうか。ぜひTwitterから皆さんのご意見をお聞かせください。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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