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2024年6月 1日公開

突然シンデレラボーイやラッキーボーイが出現し始めた新生ライオンズ

埼玉西武ライオンズ vs 読売ジャイアンツ/2回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Giants 0 0 0 0 0 2 0 1 0 3 6 0
Lions 0 0 0 0 0 0 1 1 4 8 0

継投渡邉勇太朗佐藤隼輔平井克典○田村伊知郎
勝利投手田村伊知郎 1勝0敗0S 2.38
本塁打元山飛優(1)
盗塁滝澤夏央(1)

渡辺久信監督代行は示し、松井稼頭央監督は示せなかった明確なヴィジョン

元山飛優選手

渡辺久信監督代行に代わってから5試合目となるジャイアンツとの2回戦、ライオンズは若獅子たちの躍動により見事なサヨナラ勝ちを収めた。それにしても監督が代わるとチームはこうも変わるものだろうか。交流戦前とはまるで別のチームの試合を観ているようだ。

具体的に何が変わってきたかと言うと、とにかく各打者がしっかりとバットを振り抜くことが多くなってきた。特に蛭間拓哉選手などは最もバットが振れていて、もちろん配球に崩されて中途半端なスウィングをしてしまうこともあるわけだが、しかしほとんどの打席では凡打になっている時でもしっかりとバットを振り抜いている。

これは渡辺監督が前回チームを率いた2008〜2013年によく見られた打線の姿だ。決して100%の力で振っているわけではないのだが、ここ数試合は各打者が80〜90%程度の力でバットを最後まで振り抜けている。そしてバットを振り抜いているからこそ打球がしっかりと外野まで飛ぶことが増えてきた。

松井稼頭央監督が率いていた際のライオンズ打線は、相手バッテリーに上手く内野ゴロを打たされるケースが多かった。有能なバッテリーは打者のスウィングもしっかり観察しながら配球を組んでいくわけだが、少し前までのライオンズ打線はほとんどの打者がバットを振り抜かず、悪く言えば当てに行くようなバッティングをしていたため、バッテリーとしては少し泳がせるだけで簡単に引っ掛けさせることができた。

しかし今日の試合を見ていると、泳がされて引っ掛けたという凡打は非常に少なかった。もちろん打線はまだまだ未完成であるわけだが、ここから少しずつでも外国人選手が機能し始めれば、相手バッテリーからすればかなり怖い打線となるのではないだろうか。

ちなみにバッテリーが最も嫌な打者は、しっかりとバットを振り抜く打者だと言われている。そして安定して勝てるチームというのは、とにかく相手バッテリーが嫌がる野球をする。例えば東尾修元監督は、自身が投手として最も嫌だったことが走者に塁上でちょこちょこ動かれることだった。そのため東尾監督は1997年頃から「松井・大友・高木大成」という俊足トリオをオーダーに並べ、さらに翌年あたりからはここに九番小関竜也選手を加えて俊足カルテットに進化させ、とにかく塁上に出たら投手が集中して投げられないようによく走者を動かした。

そして渡辺久信監督の場合は恐らくは自身が嫌なタイプがしっかりと振り抜いてくる打者だったのだろう。そのため就任一年目の2008年からデーブ大久保コーチ・熊澤とおるコーチのもと、しっかりとバットを振り抜いていく打者を並べたオーダーを作り上げた。その結果2008年のライオンズのチーム打率は.270で、ホームラン数は198本にもなった。

このように勝てるチームの監督は明確なヴィジョンを示すことが多い。そういう意味では松井監督は昨季は走魂をスローガンに掲げたものの、東尾監督や自らが90年代後半に作り上げた走りまくるオーダーを作ることができず、どこに向かっているのかやや不透明な状態が続いていた。

松井監督の弱点は優しすぎたところにもあったわけだが、渡辺監督代行や東尾元監督のように明確なヴィジョンを示せなかったことも大きな敗因の一つとして挙げることができるだろう。

突然シンデレラボーイやラッキーボーイが出現し始めた新生ライオンズ

さて、今日のジャイアンツ戦で先発マウンドに登ったのはジャイアンツの内海哲也投手コーチの愛弟子である渡邉勇太朗投手だった。結果としては7イニングスを投げて被安打6、失点2というようにHQSを達成し、期待以上のピッチングを見せてくれた。これには負けチームの投手コーチながら、内海コーチも内心では非常に嬉しかったのではないだろうか。

今日の渡邉投手はとにかくしっかりと腕を振れていた。渡邉投手は決して針の穴を通すような制球力があるわけではない。そのためボールを置きにいくと痛打されることが多かったわけだが、今日のピッチングでは置きに行くようなボールは一つもなかった。気持ち良いくらいに腕を振り切って投げており、これだけ腕を振られると打者としてはストレートと変化球の見極めが非常に難しくなる。

先制点を相手に与えてしまったことだけは残念だったのだが、しかし最近のライオンズ打線は、渡辺監督代行の「リードされると今のうちの打線では厳しい」という言葉とは裏腹に、何となく追いついてくれるのではないだろうかという雰囲気がある。

松井監督がチームを率いていた時には、いわゆるシンデレラボーイやラッキーボーイ的な存在の選手がまったく出てこなかった。しかし渡辺監督代行がチームを率いるようになった途端、滝澤夏央選手元山飛優選手が驚くような活躍を見せ始め、今日の渡邉投手も前回までの2試合とはまるで違う姿を見せてくれた。

勝てるチームは必ず、時々チームを盛り上げてくれるような勝ち方を見せるし、シンデレラボーイやラッキーボーイが出現してくる。今で言えば育成出身でまだ20歳の滝澤選手は、まさに今後シンデレラボーイと呼ばれる選手になっていくのではないだろうか。そして元山選手も今日のように良い場面で打席が回ってくるラッキーボーイ的な存在になっていくかもしれない。

同時に渡邉投手も今日のように消極的にボールを置きにいくことがなく、しっかりと腕を振ってのピッチングを続けていけば、間違いなく今後もローテーションの一角を担っていくことになり、蛭間選手との共闘によりチームを引っ張っていける主力に成長していくこともできるだろう。

メディアやSNSの論調とは逆に補強は適切に行われたと今なお考えている筆者

そして今日の試合のヒーローはなんと言っても元山飛優選手だ。今日は岸潤一郎選手の代打として登場したわけだが、その打席で今季第1号ホームランをライトスタンドに叩き込んでみせた。

だが活躍はそれだけではなかった。まだ2-3とリードされていた9回裏、まず蛭間選手のタイムリーヒットで同点に追いつくと、二死二塁一塁という場面で元山選手に打席が回ってきた。そして元山選手が引っ張りにいった打球は、やや広く開いていたようにも見えたジャイアンツの一二塁間を抜けていく見事なライト前へのサヨナラヒットとなった。このサヨナラ打で叫びすぎて試合後、元山選手は喉が痛くなったほどだったという。

メディアやSNS上では、松井監督が勝てなかったのは渡辺GMがしっかりとした補強をしなかったからだという論調になっている。確かに両外国人選手は本日現在ではまだ機能しているとは言えないが、しかり渡辺GMが11年かけて集めてきた選手たちが、渡辺監督代行が指揮を取り始めた途端輝き始めたことを冷静に捉えれば、松井監督が選手を生かし切れなかったという評価が正しくなってしまう。

世間では来季以降のライオンズの監督を予想するような記事で溢れているが、しかし渡辺監督代行は野球人生をかけて今のチームを立て直すと話しているのだ。そのためここからよほど負け続けていかない限りは、西武球団としては渡辺監督代行を今季のみで引き下げる理由はまったくない。

勝てば官軍負ければ賊軍という言葉の通り、勝てないチームは様々なことを言われるものだし、そして何を言っても説得力に欠けるものだ。そのため松井監督が勝てるチームを作れなかった際には、渡辺GMも同じようにメディアやSNS上で叩かれていた。しかし筆者は一貫して補強は適切に行われたとこの場で書き続けてきた。

補強というのは大金をかければ良いというものではない。アレックス・カブレラ選手だって初年度の年俸は1億5000万円だったし、エルネスト・メヒア選手も1億円だった。つまり今季のアギラー選手やコルデロ選手も彼らと同水準であり、日本に来る前の判断材料の中では、その年俸に見合うレベルの選手と見込まれていたのだ。

ただ外国人選手の場合は日本人投手の配球にすぐに対応できる選手もいれば、少しずつ対応していくタイプの選手もいる。こればかりは来日して実際にシーズンが開幕してみなければ誰にも予測することはできない。だがここまでまだ上手く順応できていないアギラー選手やコルデロ選手を評価できるのは、彼らが熱心に日本人投手の配球に慣れようと研究を続けているところだ。

その姿は同じ打てていない状態でも、日本の野球を見下している外国人選手たちと違って好感を持てるし、今後に期待していくこともできる。そして何よりもそのような外国人選手に対しては、日本人選手たちも熱心に配球に対するアドバイスをしてきてくれる。

例えば先日の試合でも蛭間選手がアウトになって戻ってくる際、ネクストバッターズサークルに控えていたコルデロ選手に対し何か一言アドバイスを送っていた。これは蛭間選手ら日本人選手たちが、コルデロ選手が日本の野球に順応しようと必死になっているのを知っているからこそ見られた場面だった。

これがもしプライド高く日本の野球を見下している助っ人選手の場合、日本人選手たちがアドバイスを送る姿など見られないだろうし、その助っ人選手にしても戻ってくる日本人選手と目を合わせようともしないだろう。だがアギラー選手とコルデロ選手はそうではない。日本人選手にもしっかりと伝わってくるほど、それどころか我々ファンにも伝わってくるほど熱心に日本人投手の配球を研究し続けているのだ。

そのため筆者は思うのである、アギラー選手が戻ってきて、またコルデロ選手と共に配球に関して意見交換しながら戦える日が来れば、この二人は必ず今まで以上に打つようになるだろう、と。少なくとも筆者はそう確信しているし、この二人の選手が正しい補強だったと今もなお微塵の疑いも持っていない。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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